23 証言
「あ、あのお菓子!外国のお菓子に毒が入っていたのだわ!」
泣き崩れた侍女がそう言い出した。突然のことに、その場にいたもう一人の若い侍女や兵士もぎょっとしていた。
「エ、エマ、そんなこと言ってはだめよ」
「だってそうとしか考えられないでしょう?!あんな外国のお菓子だなんて、側妃様は普段お食べにならないものだもの。毒が入っていても、わからずに食べてしまったのよ!」
「で、でも侍女長が毒見なさったのよ。お菓子に毒は入っていなかったのよ」
「でも、き、きっと正妃様が……!」
「二人とも静かになさい」
エマと呼ばれた侍女の言葉を遮るようにして、侍女長が落ち着きのある声で言った。確かに遮って正解だった。とんでもないことを口走りそうになっていたからな。僕が正妃の子である王子だと、気づいていないのだろうか。
比較的離れていた位置にいた兵士二人は、顔色を無くしていた。
僕は何も聞かなかった事にした。まだ三歳児だから。
「それで、リリエラーデ様のこだわりってどんなものか、侍女長は知っていますか?」
「それをお聞きになって、どうなさるのです」
「気になっただけです。侍女長は何でも知っていそうだったから」
「……側妃様は少々好き嫌いが多いのです」
「好き嫌い?」
「パンひとつとっても普通のものはお召し上がりになりません。ご自身の生まれであられる、アルミ領で採れた穀物で作ったものでなければ……あの方はアルミ領に、並々ならぬ自信と誇りをお持ちなのです」
「側妃様にこだわりがあるのは知っていましたが、そういう理由だったのですか?」
若い侍女はその事を今初めて聞いたようだった。
これで知りたかったことのひとつは、彼女たちとの会話でわかった。
リリエラーデ様に関する噂は、毒殺事件のあと流れたものだということだ。
噂でのリリエラーデ様は、神経質でわがままな側妃であるかのような女性として囁かれていた。だがそれは、噂を流した者の印象操作によるものだ。
なぜ、そんなことをしたのか。噂を流した本人にしかわからないだろう。
真意は気になるが、どちらにせよリリエラーデ様が生きていてこそだ。今は彼女の回復を祈るしか無い。
そして回復した暁にはーー
事態が動いたのは、リリエラーデ様が倒れてから二日目の夜のことだった。




