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9 派閥

 派閥は大きく分けて三つ。

 聡明な第一王子エリエスを次代の王にとする新興貴族派。王族の中でより武に秀でた者が王になるという伝統に(なら)い、後に『軍神』と称される並外れた剣の才能を持つ第二王子ウリエクを次代王にとする古格王族派。側妃が上級貴族ではなく、正妃が他国ではあるが王族であったことから、血統確かな第三王子アトラエルを次代王にとする純血派。


 僕を暗殺する意思があるのは、単純に考えれば新興貴族派と古格王族派。

 しかし新興貴族派はその名の通り歴史の浅い家が多い。人脈がさほど広くない彼らのとれる手段は単純になりがちで露見しやすくなる。裏社会に通じるにはそれなりの時間と金と権力が必要だ。今回僕を襲った刺客はそれなりの腕だった。新興貴族派であのレベルの人材を雇えるのは、絶対にないとは言わないが難しいと思われる。その点で言えば、古格王族派に属する貴族は歴史ある名門ばかり。しかも財と権力を持つ上級貴族が多いのだ。最も可能性が高いのは古格王族派だが、純血派もないとは言えない。

 理由の一つが僕の替え玉だ。


 あの日母上にアトラエルと呼ばれ、周りの護衛に殿下と呼ばれていた『彼』は、僕にとてもよく似ていたと思う。瓜二つと言っても良い。特にこの金色の瞳は他に見たことがない。

 仮に血のつながった兄弟だった場合、何故一緒に育てなかったのかという疑問が出てくる。双子を離して育てるなんて風習はこの国にはない。実際にエリエス兄上とウリエク兄上は双子だったはずだ。ならば生まれてすぐに攫われた可能性はあるか。ないわけではないが、そんなことをして利益があるとは思えないし失敗すれば死罪だ。


「兄弟の可能性は低い……か」


 では、血のつながりはないが瓜二つの人間だった場合。僕が攫われた後、必要に迫られ替え玉となる人間をさがし運よく『彼』を見つけ出す。

 まあ、あり得ない話ではない。その場合は大々的に探すわけにはいかないだろうから秘密裏に、しかも『彼』は数年以内という短期間で見つけ出せているから比較的近場、王都内にでもいたのかもしれない。だが、そんな近場で王族と瓜二つの人間がいれば目立つだろう。民の間で噂となっていてもおかしくない。僕の顔は少なくとも王都民なら、建国祭などで目にした者も多くいるはずなのだから。第三王子と瓜二つの人間として市井で目立ってしまってから替え玉に使うのは、あまり得策ではない。ならば最も可能性が高いのは、


「僕が攫われるよりも前の段階ですでに誰かに保護されていた」


 保護というか状況によっては誘拐かもしれないが。僕と瓜二つの『彼』を、何かに使えるかもしれないからと手元に置いておく。そして僕が攫われたあと、やろうと思えば本人だと偽ることもできるかもしれないし、替え玉が必要だという要請があったならそれに応えられる。攫われなかったとしても、僕を暗殺して挿げ替えることだって不可能ではない。最悪の場合、僕が王の子ではないという不義の証明として使うという可能性だってあるのだ。

 なんにしても、使える駒としてすでに保護されていたならそれをしたのは貴族階級の人間だ。『彼』が第三王子と瓜二つだと市井で目立ってしまう前に保護されたのなら、その時期は民が第三王子の顔を知る前となる。だがそうなると、その時点で僕と『彼』が瓜二つだなどと気づけるのは当然第三王子の顔を知っている者。公式行事でもなく王子に会えるのは貴族しかいない。


 では純血派が僕を暗殺する可能性があることと『彼』に何の関係があるかといえば、つまりこういうことだ。

『彼』を保護する貴族というのが純血派の貴族だった場合。僕を傀儡としてよからぬことを考えていた彼等が、僕と瓜二つの『彼』を手元に置き自由に教育できたら。この国を思いのままとするのも、より容易になるとは思わないか、と。

 そもそも、兄上二人と七つも年の離れた幼い第三王子を王に推挙するなど、第三王子を傀儡としてこの国を好き勝手にしたいという思惑のある者しかいない。当然そんな者らの言う血統云々というのは口先だけにすぎないので、僕より御し易い駒が手に入ったなら僕を殺すことにためらいは無いだろう。

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