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7 ランスは優秀な執事だ

 持てる武器は一つでも多い方がいい。情報もその一つと言える。

 何故医者が刺客だと気づけたのか、そんなのは簡単だ。ランスと一緒に駆け込んできた医者の表情にわずかに敵意を滲ませていたからだ。前世で培われたのだろうか、敵意には敏感になった。

 

兄上たちが去ったあと、ランスに医者についてわかる事をしゃべらせた。それによればその医者は王宮の専属医ではなく、原因不明の高熱に倒れた僕のために急遽外から招いたのだという。普段は貴族を主に診る訪問医をしていたそうだが、その患者の貴族の中に暗殺を依頼した黒幕がいるのだろうか。刺客二人の会話の内容も合わせれば、医者が近づく前に僕は一度毒を盛られている。そしてそれを実行したのは僕の容姿を知らなかったフードの男ではない。実行犯はまた別にいるはずだ。そして一度目で死に至らなかったから、とどめとして医者に再度毒を盛らせた。そこまでして第三王子の排除を望む者、その辺から黒幕を割り出すことができるかもしれない。すぐに思いつくのは兄上二人をそれぞれ次代王にと望む派閥の貴族だが。


「散歩、でございますか?」


 刺客二人の死体を林に放置してから三日が経ち、捜索に出た城の衛兵がそれを発見した。外は衛兵たちで未だ慌ただしいが、そんなことは構っていられない。

 ランスから外出の許可をもらわなければいけないのだ。


「はい。もう元気になったので、からだを動かしたいです」

「しかし外はまだ…」


 こんな調子で朝からずっと外出を渋られている。ちなみに体調は回復している。刺客二人は僕が毒を勝手に中和させたかのような口ぶりだったが、これも僕の持つ力の一つなのだろうか。

 自身のことも気になるが何よりもまずは、この国の貴族の勢力図を把握しておきたい。そのためには、何としてでも王城に行かなければならない。刺客を始末した時のようにランスの目を盗んで行くことも考えたが、離宮から王城まで距離があるし、調べ物にある程度時間を要すると見込んで断念した。流石に長時間僕の姿が見えないとなれば大騒ぎになる。離宮の近くで死体が出ているので尚更だ。


「外にこわい顔の人がたくさんいてこわいので遠くにさんぽです。ダメですか?」

「せめてあと二、三日ほど様子を見てはいかがですか?」

「ここは、やです」


 ランスにはすでに散々ボロを出したあとなので今更な感じもするが、一応子どもらしい言動は継続中である。急に喋り方どうした、などとわざわざ聞いてきたりはしない。ランスは優秀な執事だ。


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