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 乱立すること雨後の筍の如く。


 個性無きこと路傍の石の如く。


 辟易さるること蛇蝎の如く。


 ありふれることビニール傘忘れの如し。


 広告やら動画やらで嫌と言う程に相まみえ、時々暇潰しに有名作品流し読み、動画サイトでまとめ動画眺めたり、その程度でしか触れ合わず

好きな異世界転生作品のタイトル挙げろと言われてもうろ覚え程度の異世界転生物語。


 チープな世界観にどっかで聞いた事ある見た事有るのオンパレードなご都合展開とか設定とか、無限に湧き出る最強設定とか

冴えない主人公が生まれ変わってなんやかんやで無双する展開、自分もそうなりたいな


……なんてのは、誰しも一度は想像するんだろう。


 俗に言うオタク属性の人間でなくとも、輪廻転生とかタイムリープとか、想像するのだと思う。


山無く谷無く、陰キャでも陽キャでもなく

徹底的に堕落する事も出来ず納税と国民の義務を黙々と果たすだけの

虚無極まる人生を41年過ごした自分、そう……一応は名乗っておこう


この『たいら 一郎いちろう』でも、想像した事は有る。


 願わくば、高校生辺りから地味に人生やり直したいなと常々思ってたり。


 それこそ俺最強!な異世界にポロっと転生出来たりしたらとか、有り得ない妄想だけを糧に、黙々と……ほんと黙々と、契約社員としてビルメンテナンス業務をこなす日々。

家無し、嫁無し、学も無し、資格もついでに一切無し

子供部屋おじさんとして還暦迎えた父ちゃん母ちゃんに溜息吐かれつつ

少ない手取りから国民の義務を果たすだけの人生だった……けど……も。


決して世を儚んで……とか、凶悪事件に巻き込まれたとか、理不尽な交通事故に遭遇……トラックのやつな!

とかではなく、夜勤明けの定番行事なんだけれども、発泡酒しこたま流し込み、ネオンがド派手な激安スーパー総菜コーナーの大好物揚げ物セットかっこんで

盛大にゲップかまして動画垂れ流しながら42℃の熱々風呂で、だらーーーっと1時間たっぷり寛ぐ


……そんな日常の最中、普通に死んだ。



らしい。


気付けば、真っ黒い、一面真っ黒な景色が漠然と広がる空間に放り出されてた。


意識は普通に有るし声も普通に出る……けど、浮遊感?しかなくて触覚だけが消飛んだ感じ?てのかな、そんな状態。


それもその筈……今の身体は、発光体って言うか光るタンポポの綿毛みたいな

……ケサランパサラン的な?形態になってるみたいで。


その上で何となくだけど、これは夢とかじゃなくて普通に死んだんだなと、漠然過ぎる認識ではあるものの、得心出来てしまった。


今迄の人生に未練が有ったか無かったかで言えば、そりゃ有り寄りの有りだったし親兄弟、数少な過ぎて指2本で数えられそうな友達連中に別れの言葉位は言いたかったし

まだ美味しいもんも食いたかったし、貯金ばっかしないで行った事無い沖縄旅行も行けばよかったとか、未練たらったらだ。

ここでなにくそ絶対生き返ってやるとか感情豊かに喚き散らしたりするのが普通なんだろうけども

今迄の人生がこう……無味無臭と言うか虚無過ぎて、足掻くのも面倒だなとか思い至っちゃったので笑ってしまう。


いや笑いごとじゃないけども。


何はともあれ、状況はさて置き意識だけは有る状態なのは確かで、かと言って何も出来ない状態。

八方ふさがり。

どうすんの?てかどうなんの??と疑問符ばっか頭に浮かんでぐるぐるして、段々眠くなって来て……


ふ、と一瞬、意識が飛んで……


聞こえて来る声……


優しい……温かい……わけじゃないな


無駄に爽やかな声……



何ていうか……普通に声掛けられてる?








「…… さん  ………… 新規さん?はーい、まず3番の窓口前でお待ち下さいねー」


「は?」


視界に飛び込んで来たのは、天使、女神様……老人然とした神様…………


ではなく…なんか休日のお父さんが着てるっぽいポロシャツにスラックス姿で

ふっとい首からIDカードぶら下げて、なんか分厚そうな眼鏡かけたスポーツ刈りで

無駄にガタイの良いクソ真面目そうな若い兄ちゃんと無駄に背が高い役所のカウンターぽい物。


「あ、まずここが何処か……から説明しなきゃです?」


「……お願いします?」


「あなた達、地球人が住む世界から異世界への転生を紹介斡旋、職業訓練からアフターフォロー迄を承る、幽世立公(かくりよりつこう)共職業(きょうしょくぎょう)安定所(あんていしょ)、通称『ハロー異世界ワーク』略して『ハロワ』です」


「なんて?」



目が覚めたら、公共職業安定所でした。


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