1話 なんてことない日常の朝
今日は夜が遅いので初投稿です。
東から覗いてくる8時の太陽は、ベッドからたたき遅そうとするお母さんそっくりだ。
春の大型連休明けで、今日の登校は憂鬱だった。
肩肘をついて窓の外を眺める俺は、眠気を噛み殺しながらぼんやりとそんなことを考えていた。
瞼がだんだん重くなってきて閉じようとしたとき、ふいに肩をたたかれる衝撃を食らった。
「ゆうくん、なにつまんなさそうな顔してんのー」
結構強い力で叩かれたので体勢を崩してしまう。
肩肘で頭を支えていたので、そのまま顔面を机にぶつけて、結構いたい。
「あのなぁ、びっくりするからやめてくれ」
「だっさぁ。それよか今日の宿題やってきた? ちょっと忘れちゃってさーーーー」
なんてことない軽口から、宿題の話題に移り、それからたわいもない雑談が始まる。
いつも通りの日常だ。
目の前で楽しそうに話している女は日溌あかり。
肩口でそろえたオレンジ色のショートボブの髪を揺らし、満面の笑みで話しかけてくる。
こいつとは1年のころに同じクラスになってから2年に至るまで仲良くしている。
一度しゃべり始めたら止まらない性格で、無理やり切り上げるまで話し続ける。
まあ、話し上手ではない俺にとっては逆にかかわりやすい人種の人間なのかもしれない。
そんなこいつだが、クラスではなかなかの人気者だ。
距離が近くてかかわりやすいというのもあるだろうがーー1番の理由はやっぱり見た目だろう。
顔は、鼻筋がしっかり通っており猫のような感じだ。
そして、体はしっかり運動しているアスリートのように引き締まっており、曲線美といってもよい。
何より距離感が近いので、パーソナルスペースの内側にずいずい入ってくる。
「話聞いてるのゆうくん?」
今もすごく距離が近い。
座っている俺の横で動き回る彼女のおなかに、俺の肩が当たっている。
そういった点から、彼女は主に男からの人気が高い。
「そろそろ授業始まるから、席に着きなさーい!」
予鈴がなり、1限目の先生が入ってきて、クラスメイトに声をかけた。
にわかに生徒たちが席に着くために動き出し、教室が騒がしくなった。
「あ、やべ。行かなきゃ。それじゃあまたね!」
「おう、後で今週末のデートのプランを立てようぜ」
「うん、放課後にね!」
そして、あかりと俺は密かに付き合っている。