第5話 明るい物語
新たにやって来た編集者ペルピーズに双眸の涙を明るい物語にいろと言われたり、勉強と称して趣味に合わないアニメを沢山観せられたボーン。更にペルピーズが自身の家に居座っているため家に心が安らぐ場所がなく公園で途方にくれていた。
俺はD地区をさまよい歩いていた。明るいアニメに漫画を見せられて俺はすっかり心が荒んでしまい、D地区に癒しを求めていた。どうしてここに住んでいるのだろう。案外簡単な答えかもしれない。ここが自分に合っているからなのではないか。
ペルピーズはまだまだ俺に見せたい作品が大量にあると言っていた。幸いにも執筆すると言えばある程度は聞いてくれる様になったが。作風さえ変えて明るい話を書けとか言うのだから小説の世界さえ逃げ場がない。
俺は大量のトイレットペーパーの芯を引きずって歩くおじさんのナンパを適当にあしらって公園に腰を下ろした。
「明るい作品ってなんだよ…」
ぼんやりしていると歌声が聞こえて来た。それも数十人、あるいは百人近くいるかもしれない。声のする方向に目を向けると長い髪の毛を腰に巻いて引きずって歩く人や、叫び声を上げながら絵の具のついた筆を全身に身体に塗りながら歩く人や、キスをしたままカニ歩きで歩く人や、時事ニュースを読み上げながらうさぎ跳びをする人など沢山いた。行進だ。D地区ではたまに見る光景だ。
行進の中にいるパッと見まともな青年がこちらに気付くと走ってやって来た。
「ボーンじゃないか!おいおい、どうしたよ。不景気そうな面は前からだったが今は死人みてえだな!」
こいつはペイン。D地区とD地区民の全てをおかしくした諸悪の根源だ。
「そうだろうな。現に生きてるんだか死んでるんだか分からん」
「そいつは良くねえ。まあこれでも飲んで元気出せよ」
そう言って栄養ドリンクの様な小瓶を取り出した。見た事がないラベルだ。俺はそれ受け取ると後で飲むと言ってポケットにしまった。
「そう言えば連載始まったな、双眸の涙。ネットじゃ賛否両論だが俺はいいと思うぜ」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
「聞くに元々はネットで公表されてて、随分と設定変更があってるんだってな?」
「会社の意向とあっちゃ逆らえない。今はとにかく読者に喜んでもらえる話を書く事で精一杯だよ」
俺はついつい口が滑って余計な事を話してしまった。ペルピーズは家にやって来てからというものの、他にやる事がないのか何なのかずっと俺の家に居座っている。おかげでラグドールにもクレイにも気軽に愚痴が言えない。時々キールケが気を遣って電話をよこしてくれるがペルピーズが家にいては余計な事も言えない。
ペインはうんうんと真剣な表情で聞いていた。
「今は世界も色々と表現に厳しい時代になってるからな。外圧もあるのかもしれん。よし、ボーン俺に任せてくれ。会社が余計な口出しをできない様にしてやろう」
「ありがたいが気持ちだけで結構だ」
ペインは優しい笑顔で俺の肩に手を置いた。
「俺達は友達じゃないか。困ってたら見過ごせないだろう?心配すんな、大事にはしない。それじゃ」
「あっ、おい!いいって!」
呼び止めようとしたがペインは行進の中に紛れていなくなった。心配してくれる気持ちはありがたいが相手は何と言ってもD地区をこんな風にした相手だ。何をしでかすか分からない。しかし会社に「ペインに気を付けろ」なんて言っても俺がおかしくなったんじゃないかと疑われるだけだろうし…。
余計に頭痛の種が増えただけな気がする。気分転換にはならなかった。俺はとぼとぼと来た道を帰る。
…ドンっ。行進を避け適当に道を歩いていると誰かにぶつかった。顔をあげるとそこには頭に角を生やした男がいた。まるでゆっくり走行している自動車にでもぶつかった様でぶつかった相手はビクともしない。ぼーっとしてた俺はバランスを崩してその場に尻餅を搗いてしまった。相手は驚いて膝をついて俺を心配する。
「オオオ、申し訳ねえ。体に怪我はないか?慣れない道を歩いてるもんでよそ見してたらすっかり前方への注意が散漫になっちまった」
「鬼…?」
「ははは、この辺じゃ珍しいかな。鬼だよ。お兄さん、怪我はなあい?」
「大丈夫だ」
鬼の手を借りて立ち上がった。温かみはあるもののその手はタイヤのゴムの様に固い。本物の鬼を見るのは初めてだ。もっと大柄で筋骨隆々強いイメージがあったが彼は些か目つきが悪いだけで風貌は一般的な好青年に見える。
「大事なくて良かった。ところで兄さん、申し訳ねえんだけど尋ねてえ事があるんだ。この男を見た事ない?」
そう言うと鬼は写真を撮り出した。その写真の人物には見覚えがある。ヒカルだ。
「知ってるよ。そいつがどうしたんだ?」
それを聞くと鬼はパァッと明るい顔をして後ろに下がりその場に平伏して頭を打ち付けた。頭を叩きつけられた所が陥没する。何事かと思って驚く。
「頼む!そいつの居場所を教えてくれ!どうしても会いてえんだ!」
「八つ裂きにするつもりならやめておいた方がいいぞ」
「へはははは!とんでもねえ!俺はその男、ヒカル先生の大ファンなんでさあ。いつまで経ってもオリジナルの新作出してくんねえんで催促しに来たんだあ」
驚いた…。まさかあのヒカルにファンがいるとは。世の中広いもんだ。
鬼の名前は八つ種紫煙と言うらしい。彼はヒカルに集落の同族を皆殺しにされ、仇討のために旅に出た。外の世界は彼が想像するよりずっと過酷で何度も何度も心が折れそうになった。腕っぷしだけで生きて行けるほど世界が甘くない事を嫌という程思い知らされたそうだ。
無計画な旅で痩せ細り、ついに病に倒れた紫煙を救ったのは食べ物でも雨風をしのぐ建物でもなく1冊の本だった。食べ物がないかとゴミを漁っている所に雑に捨てられたヒカルの書いた本を見つけたらしい。人間をカモにして生きていくには人間を知らなくてはならないと言う親の教育方針で人間の事を学んでいた彼は文字の読み書きができた。
彼は空腹も喉の渇きも病の苦しみも全て忘れるほど読書に熱中した。その本は彼が今まで読んで来た物よりも面白く、筋運びがややチープながら希望に満ちていた。誰かを欺き、嗤い、怒り、憎しむと言った悪意の渦の中で育った彼の常識が覆った。彼は生まれて初めて誰かを尊敬する事を覚えた。「死んでいる場合じゃねえ。生きてえ、生きてこの人に会いてえ」復讐の他に生きる目的ができた瞬間だった。
泥水をすすり草を食み、時に自ら角を折って人間を装って生きて、そうしてここまでやって来た。人間により詳しくなった頃、尊敬する作家の正体が自身がかつて探していた復讐相手である事を知った。そして彼自身も生まれた家柄そうせざるを得ず彼の故郷を襲った事が分かった。紫煙が子供だったから敢えて見て見ぬふりした事も気付いた。
やがて家を破門され遠くに引っ越した事を知り永い永い道のりを経て三郎ランドのD地区までやって来た。出身地を聞くに情報をかき集めながらここまで千数百キロメートルを徒歩で歩いてきたようだ。大した根性である。
「まだヒカルが純粋に作りたい物を作ってた時代の本を読んだんだな。分かるよ。あの頃のあいつの作品は良かった。画力も手法も何もかも未熟だったがとにかく熱意だけはあった。粗削りだったけど面白かったんだ」
「俺も近年の作品を見たけんどあれは先生らしい作風じゃねえなあ。先生は自分に嘘をついてる」
「お前もそう思うか。何とか言ってやってくれよ」
「へはははは!俺が来たからにはもう安心だ!」
ヒカルは家を破門されて生きていくためにどんな事でもやった。いろんな仕事をしながら創作を続けた。今は誰も見向きもしないがいつかはきっと自身の作品の良さを理解してくれる人が現れるんだと、まだ友達だった頃の俺達は慰め合った。俺は書いた小説の感想をあいつに聞いて参考にしてたし、あいつは自身の書いた漫画を俺に見せて感想や意見を求めた。
俺の代表作、龍星記がヒットしてから俺達の友情にヒビが入った。あいつは俺の作品が世に認められた事を最初は喜んでくれた。あいつの作品を多くの人に知って欲しいと思ってSNSでシェアしたりして宣伝したりした。
あの頃の俺は分かってなかったんだ。皆作者の俺に興味があるんじゃない。俺の作った作品にだけ興味があったんだ。俺が好きな物とか、皆に知って欲しい物とかそんなのには興味なかった。宣伝効果はなかった。彼には俺が宣伝したと言うより晒し上げた様に見えたんだろう。そんなつもりはなかったが彼のプライドを傷つけた。
そのうちヒカルは売れてる作品や作者を全て妬む様になった。SNSでの彼の発言から心の荒み様が見て取れた。流行りの作品は全て馬鹿向けのエンターテイメントで、それを観て楽しむ者も全て馬鹿だと信じ込む事で誰にも認められない悲しみを和らげようとした。俺は何とかやり直そうとしたが完全に心を閉ざしていた彼には何を言っても逆効果でむしろ友情の破滅をより決定的な物のした。
生活がますますままならなくなったヒカルは心底見下して蔑んでる人々が好みそうな作品を描いた。自分が見下してる人間は愚かで軽薄な人間なんだと証明するために愛も熱意も何もない上辺だけを掬った駄作を敢えて作った。彼にとって人生最大の悲劇はそうした経緯でできた作品が売れなかった事ではない。きっとその方が良かった。売れてしまった。あらゆる賞賛の言葉が送られた。
長い間友達をやっていた俺なら分かる。彼はあらゆる醜い感情を煮詰めた悪意だけでできた作品を駄作と人々に罵って欲しかった。全否定して欲しかった。しかし売れてしまった。彼が僅かに見た一縷の希望と剥きだしのプライドは割れんばかりの拍手と賞賛で滅多刺しにされた。
紫煙には現在のヒカルについてそうした経緯を説明しておいた。
「ボーン、先生の心は死んでませんよ。先生は作品を通して助けを訴えているんです。俺はそう受け取りました。今度は俺が助けないと」
「そうしてやってくれ」
やがてヒカルの家に着いた。間が悪く買い物から帰って来た所を出くわしてしまった。何というか、あれ以降の生活の荒れようが見て取れた。
「ボーン…!何だ、僕を笑いに来たのか!?」
「いや、お前に会いたがってる鬼がいたから連れて来たんだよ」
ヒカルは紫煙の方を向いた。
「先生ェ!会いたかったですよ!」
そう言って紫煙はヒカルの元へ駆け寄り膝をつく。ヒカルは光魔法を使おうとするが紫煙が闇魔法を唱えて相殺し、手首を握って術を封じる。それでもなお手から煙がでて焼けている。紫煙は気にする風でもなくヒカルの顔を見上げてニターッと笑う。ヒカルも青ざめて俺の方を向いた。
「おい、何なんだよこいつ!」
「先生…。先生の手は温かいですね。体臭がきつい。髪の毛も少し伸びすぎです。ああ、肌の状態も良くない。へはは、今日から付きっ切りでお世話してあげますね。創作のお手伝いです。先生が創作に専念できる様にお世話します。はぁ…先生ェ…」
「だそうだ。良かったなヒカル」
「いや良くねえよ!色々と説明する事があるだろ!」
「安心してください先生。俺は先生の一番のファンですから。ボーン、ありがとう。お礼は後日するよ。先生、ほら家に入りましょう。やる事が山積みです」
紫煙に引きずられていくヒカル。まあ…悪い様にはしないだろう。多分。
「ボーン!怖いよ!助けて!ヤダーッ!」
俺はヒカルの家を後にして自宅に帰った。
家に帰るとペルピーズが玄関で迎え入れてくれた。クレイもそうだが家に帰らないんだろうか。まだまだお勧めの作品があると言う誘いを断って小説執筆のために2階にあがる。ペルピーズは頬を膨らませながら不満げについて来る。俺は早速とパソコンのスリープモードを解除して執筆を再開した。
俺がキーボードを叩いてる間、ペルピーズは後ろで俺のベッドに座って足をぶらぶらさせたり後ろで文章ファイルに文字が打ち込まれていく様を見に来たりしていた。落ち着きがない行動でイライラしたが我慢だ。
「ファビスターは死ぬの?」
「ああ。落涙で斬り殺される」
「でも暴れてるのって彼の本性なんだよね?何と言うか…可哀そう」
「『ごめんね』『反省してるなら許します』みたいなやり取りでも書いて無理矢理大団円にでもすればいいのか?」
「さすがにそんなに極端な事は言わないけど…」
それからはしばらくは言葉を挟まずに黙っていた。クレイが俺の家にずっといるのはまだ分かるのだが、ペルピーズがずっと俺の家にいるのが気になる。会社に戻ってやる仕事ぐらいあるだろうに。俺を見張る様に言われたんだろうか。見張らなくても逃げる場所もないしキールケの事もあって筆を折る事もできない。
…そう言えばペルピーズは社長の息子なんだったか。俺は彼の方を振り向いた。
「ペルピーズ、ずっと俺の家にいたら仕事が山積みになるんじゃないか?」
「吾輩の仕事はボーンが仕事してるか見張りをする事だぞ」
「他に仕事ぐらいあるだろ」
「吾輩、何も任せてもらえないんだ…」
「そっか…」
どうやら体のいい厄介払い先として選ばれたのが俺らしい。キールケがいては会社の意向が上手く通らないからペルピーズに変えられ、仕事はできないがやる気だけは充分にあるペルピーズにヒット作を書いてる俺の小説の編集者をやらせる事で手っ取り早く実績を作らせてやろうとか…まあそんな感じかもしれない。
俺はSNSを開いて双眸の涙で調べる。ファイマーが原作と違い生存していて仲間入りする事についてもそこそこ賛否が分かれているが、その後の仲間内での扱いでそこそこ荒れていた。自然に仲間に溶け込める様にブレイン役にさせたがそのせいでミヘラやディギンスが頭悪くなってる様に見えると原作ファンは不満があるようだ。実際にファイマーがいなかった原作ではミヘラやディギンスは自身の知識と知恵で多くの困難を切り抜ける。原作を知っていればそう見えるのは仕方がなかった。
会社の意向に振り回されながらも頑張っている甲斐はそれなりにあって、どうやら新たな双眸の涙を受け入れてくれているファンもそれなりに出てきたようだ。これは純粋に嬉しかった。
「もう少し頑張ろう」
やる気を補充してまた小説執筆を再開する。
「ねぇねぇ、ボーン。今いいかな」
ペルピーズがベッドでスマホを弄りながら話しかけた。
「何だ」
「吾輩思うんだけどファイマーっている??」
「ああ。一秋ならまだしもトモツキ社からの要望だ。お前トモツキ社の社長の息子だろ。どうして知らない」
「聞かされてない…」
初めは嫌な奴としか思ってなかったが案外可哀そうな奴なのかもしれない。ペルピーズは気を取り直してスマホを閉じると不満げに腕を組んだ。
「共有フォルダから執筆中の小説読んでたけどやっぱりファイマーは便利キャラ過ぎるよ。せっかくキャラが活躍を見せるってチャンスな時に大体こいつがしゃしゃり出て何でも解決法を出しちゃうんじゃ物語映えしないじゃないか」
「俺もこれ以上ファイマーをどう扱っていいか分からないんだ。完全新作作るんだったら好き放題できるが飽くまで物語が原作に沿う範囲で活躍させなきゃいけない。原作ではママインで死んでるし…」
「殺せばいいんだよ」
俺は耳を疑った。今殺せばいいって言ったのか。
「明るい物語にしたいんだろ?だから極力殺さない様にしてるんじゃないか」
「違う違う。明るい物語って言うのは物語上の意味もなくとにかく鬱展開や過剰なバイオレンス表現を入れないのが重要なんであって、緩急をつけるためには多少はそうした要素を入れたりする事もあるの。例えばファイマーがドラゴス教団に殺される。そしたらミヘラ達は仲間を失った事でドラゴンの他にドラゴス教団と因縁ができる。その後もしあれこれあってドラゴンと戦うのに改心したドラゴス教団が協力してくれる展開になったりしら熱い展開だったり明るい物語になったりしない?」
そう言えばつい最近ペルピーズが見せてくれたアニメのヒロインも途中で死んでギャグ控えめのシリアス多めになってた。主人公が病んだりもしてた。その展開があってこそ終盤は復活して熱い展開になったりより明るさの際立つ作品になったりしていた。大事なのは緩急ねぇ…。
「いや、でもいいのか?ファイマーを生かして活躍させる様にと言う要望を出したのはトモツキ社なんだぞ」
「吾輩、社長の息子で君の編集者。吾輩の意向は会社の意向」
「ならしょうがないな!」
俺はパソコン画面に向き合うとキーボードに手を添えて小説の続きを打ち込み出した。凄い…明るい展開とか考えずにいつもの俺の作風をフルに出したままかけるからキーを叩く指がとても軽い。絶え間なく叩かれるキーの音が家に響く。そんな様子の俺を隣で見ていたペルピーズが若干引いていた。
そうだ、この方が良かったんだ。ファイマーは確かに便利キャラ過ぎた。ミヘラやディギンスを差し置いてしゃしゃりで続ければ必ずヘイトを一身に受ける事になる。物語は時期に重要な場面に入る。この辺りで退場させる事でギリギリ読者に死んで欲しくなかったキャラにできるのではないかと考える。
作中で多く活躍してミヘラやディギンスといい関係を築こうとしている最中での不幸だった。彼は死に間際まで何とかミヘラ達の役に立とうとする。うん、これでいい。これで死ぬのにファイマーの株が上がる。ただ生きてご都合キャラとしてヘイトを稼ぐよりもずっとずっといいに違いない。
文章を最後まで書ききって決定キーを叩き、上書き保存すると何とも言えない至上の幸福感に身が包まれた。
「ず、随分楽しそうに小説を書くんだね」
「ペルピーズ、俺は根暗なんだ。誰も傷つかない優しい世界を描いていると自分に合わない靴を履かされて歩かされている様な苦痛を感じるんだ。久しぶりに裸足で歩けた気がするよ」
「なんかごめん」
「いいんだ。これも仕事だと割り切ってるよ。校正が終わったらまた読んでくれ」
「わかった」
俺は文章の推敲、校正に入る。ファイマーが死んだので次からはミヘラやディギンスの活躍が描けそうだ。それに彼の言う緩急に則ってシリアスに入れるからしばらくは彼の言う明るい世界みたいなのを忘れて自分の思うように続きが書ける。
やがて作業が半分ぐらい終わった所でラグドールがコーヒーを持って来てくれた。
「筆の乗りがいいみたいだね、ボーン」
「ああ。久しぶりに自由に書けたからな。勢い余って登場人物を皆殺しにしてしまうかと思った」
「殺せたのが勢いの方で良かったよ」
そう言ってラグドールは自分のデスクに戻って行った。俺は有難くコーヒーをいただく。美味しい。思い切り背伸びをすると残りの文章も全て片付けた。後はペルピーズに任せて俺は一階に降りてリビングルームのソファに座って寛いだ。リビングルームではクレイがダンスゲームで遊んでいる。お世辞にもキレがあるとは言えないが思ったより動ける様で驚いた。
じっと見られている事に気が付くとクレイは少し気まずそうにする。
「あまりマジマジと見るないでくれよ」
「いや、スポーツゲームと言いやけに身体を動かすゲームが好きなんだなって」
「小説もそうだと思うけど絵を描くのも体力がいるんだ。あまり運動しないと創作に支障を来たしてね。D地区じゃ安心して外にも出られないじゃないか。ボーンは運動不足に困らないの?」
そんな会話をしていると2階の窓から手りゅう弾が放り投げられた。俺は手りゅう弾を掴むと2階の窓に向かって投げ返した。外で爆発する音が聞こえる。
「幸いD地区は身体を動かすのに最適な地域でな。運動不足で困る事はないぞ」
「そりゃいいな…」
俺は2階に上がると窓を閉めた。そろそろ換気は充分だろう。
最近XのTLが犬だらけになってきた。ワンダフル!なんつって