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第七話 入隊試験

 トリス村を発ってから王都に着くまでの三日間、あたしたちは何事もなく無事『王都クラレンツ』に到着した。

 盗賊に襲われなかったのは幸運だったけど、あたしもクアン、クランの双子もトーマスさんに王都まで送ってもらっただけという、護衛の意味とはという感じになっていた。


 その上、トーマスさんは護衛してくれた謝礼として別れる時に金貨を二枚渡してくれた。

 これだけあれば晩御飯付きの宿屋に二十日は泊ることができる。

 ライ麦パンで換算するなら、その量は二百個にもなる。


 最初はそんな大金受け取れないと断っていたけど、クランから受け取らないとトーマスさんの商人として信頼を落とすことになると、言われ受け取ることにした。

 依頼主のトーマスさんを王都まで送り届けた以上、その報酬を受け取るのが礼儀であり作法らしい。


 みんなと別れたあたしはひとまず宿屋を探すことにした。

 トーマスさんにお勧めの宿屋の一つでも聞いておけば良かったと後々になって後悔した。

 何とか宿屋を見つけた後は試験会場となる場所を下見しに行ったり、故郷では味わえない料理を食べたりして、二日後の試験日までのんびりと過ごした。


 そして試験日当日――。


 あたしは試験会場となる訓練場に向かいながら、王都に来た時のことを思い出していた。


 過去に両親に連れられて何度か一緒に来たことはあったけど、やっぱり王都はすごかった。

 まず目に入るのは村では見たことがないほど巨大な防壁。

 王都に来るたびについ見上げてしまい、毎回首を軽く痛めていた気がする。


 その次は門番をしている王国騎士の人たちだ。

 昔はただカッコいいなと思って見ていたけど、いまこの人たちを見て思うのはそれよりも、動作一つ一つから感じ取れる卓越した技術の数々。 


 そして最後は王城もすごかったけど、それよりも王国騎士団の拠点となる兵舎。

 兵舎は簡単に言えば王国騎士になった人が住む家。

 ただ王都に家がある人はそこから通って来ることも許可されているらしく、兵舎に住んでいる人のほとんどは地方出身者らしい。


「それにしても兵舎大きかったなぁ。あたしも合格できたら、あそこに住むことになるのか~」

「お前……また『あたし』って言ってるぞ!」


 声が聞こえた方に視線を向けると、呆れた顔でクアンがこっちを見ていた。


「おっはよう~、クアン」

「おっはよう、じゃねぇよ」

「なに朝っぱらからカリカリしてるの?」

「お前はあれか……指摘するやつがいないと二日も持たないのか?」

「……あっ!」

「あっ、じゃねぇよ」


 この二日間まったりとしていたことで、話し方が元に戻ってしまっていたようだ。

 クアンから指摘されるまでそのことをすっかり忘れていた。


「ごめんごめん、完全に忘れてた。これから気を付けるよ」

「お前が言い出したことなんだからな……」

「本当にごめんなさい、クアン。それはそうと、クランの姿が見えないけど?」

「クランなら先に訓練場に行ってる。あと十分ほどで試験が始まるし、俺たちも急いで向かうぞ」


 クアンはそう言うとあたしの腕をぶっきらぼうに掴み、クランが待つ訓練場に向かうのだった。

 訓練場の入口付近ではクランが両手を組んで待っていた。


「おはよう~、クラン」

「おはよう。それでリーティアは何で兄さんに腕を掴まれてるの?」

「さぁ?」

「お前がだらだら歩いていたからだろうが、そこの時計を見てみろよ!」


 クアンは兵舎の方を指差し、あたしに現時刻を確認するように促す。

 兵舎にある時計を見ると、試験開始時刻まであと二分まで迫っていた。

 朝八時から始まる試験に遅れないため一時間早く起きたはずなのに、自分が思っていた以上に時間ギリギリだったようだ。

 ちょっと朝ご飯に時間をかけ過ぎたか。でも、美味しかったから仕方ないわよね。


 王都はどこにいても時間が分かるように時計があちこち備え付けられている。

 さすがに民家などには設置されていないけど、宿屋や公共の場など人が集まる場所には必ずある。

 時計を見れるタイミングはいくらでもあったはず――だけど、あたしはその全てをスルーしていた。


 クランは焦るあたしとクアンをよそに淡々と話を続けた。


「とりあえず訓練場に行こうよ。このままだと試験を受けずに帰ることになるよ」

「そ、そうだった。行こう。クアン、クラン!」

「お前が指示してんじゃねぇよ……ったく」


 訓練場と兵舎は隣り合わせに建てられていることもあって、たくさんの王国騎士が試験の様子を見に来ていた。


 入口前にいる試験官に故郷と名前を告げて中に入ると、試験を受けに来た人たちが列を作っていた。

 訓練場内では数名の試験官が順番に受験者を左右のルートに振り分けていた。

 振り分けられた受験者は縄や木の板で作られたルートに沿って、それぞれ別れて進んで行く。

 

 あたしはその光景を見ながら一番後ろに並んだ。

 六、七十番目ぐらいだったのに、すぐあたしの番がまわってきた。


「クリフォルン村のリーティア。君のギフトは近距離、遠距離どちらだ?」

「あた……ぼくのギフトは遠距離です」

「ならば、君は左だ。次!」


 あたしは試験官の指示に従い左のルートを進む。

 後ろに並んでいた二人は試験官に近距離と答え、右のルートを進んで行った。


 二人に会えるのはこの試験が終わったあとになるだろう。

 その時にあたしだけ不合格だったとか笑い話にもならないし、あたしの背中を押してくれた父さん、母さんにも顔向けできない。

 そしてこれはあたしの夢実現への第一歩。こんなところでつまづくわけにはいかない、絶対に合格をもぎ取ってやる。


 ただ二人と離れてしまったことで、指摘してくれる人がいなくなってしまった。

 女性だとバレないように言葉遣いとか気を付けないと……。

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