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王国騎士に憧れる村娘は最強装備で成り上がる~あたしの武器だけ毎回違うのが出てくるけど、どれも強いので問題ないです~  作者: 虎柄トラ


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第二十二話 初任務完了

 その後、着替えを済ませたあたしはロウにあとを追い団長の部屋に向かった。

 部屋をノックしドアを開けると、団長に一礼し部屋を出ようとしているロウの姿が見えた。


「――了解した。ご苦労だった、もう下がって良いぞロウファス」

「はい、それでは失礼します」


 ロウはあたしの顔を見るなり怪訝な表情で「はぁ……お前その顔」とポツリ呟くと、そのまま部屋を出て行った。彼と入れ替わるように部屋に入ると、ピシッと背筋を伸ばし団長に報告する。


「リーティア、ただいま戻りました」

「……ふむ。余程、風呂が恋しかったとみえる」

「えっ?」

「気にするな、まぁまずはそこに座れ。話はそれからだ」

「はい、失礼します」


 あたしはさっき見たロウと同じ表情をしている団長を不思議に思いつつも、彼に促されるままソファーに腰を下ろす。いつもなら定位置である部屋奥の机から移動せずに、そのまま話を聞くことが多い団長だけど、今回だけはなぜかソファーに座っている。

 それからすぐに団長から話が切りだされるかと思い、ただジッと静かに待っているのだが、一向にその瞬間が訪れる気配が無い。

 だからといって、こっちから話を振ろうにも困ったことに何一つ覚えていない。というか、団長とこう対面で話す状況になるまで、そのことすら完全に忘れていた。

 それほどまでに久々のお風呂というか、そこで起きた出来事が衝撃的だったのかもしれない。


 あたしはソファーに体重を預けながらそんなことを考えていた。そのせいもあり団長の質問に対して反応が遅れてしまった。いつもの団長だったらこのタイミングで手厳しい言葉の一つや二つ追加されるのだが、今回はなぜかそれが一切なかった。


「それでリーティア。ロウファスから聞いてはいるが、本当に何も覚えていないのだな?」

「…………あっ、はい。何にも覚えてません。それに思い出そうとすると頭が痛くなるんです」

「そうか。で、その頭痛が起こるかもしれないのを分かった上で、お前は知る覚悟はあるか?」

「はい、もちろんです。さすがに自分の初任務を覚えてないのはどうかと思いますし、それに知っておかないといけない気がするんです」

「分かった。では、話すとしよう――」


 それから団長は今回の任務について淡々と話していった。クランたちと盗賊団を壊滅させるためトリス村に訪れたこと。アジトで捕まっていたトーマス親子を救出したこと。そしてあたしが見張りの盗賊をフラガラックで殺めたこと。


 不思議なことに話を聞いても最後まで頭が痛くなることはなかった。自分で思い出そうとすると頭が割れるほど痛くなっていたのがウソのようだ。ただ思い出せたかというと、それはまた別の話になる。というのも団長が話してくれた内容を思い浮かべることはできる。だけど、当事者というよりも部外者、その場面を遠目から眺めているような感じ。


 団長はひと通り話し終えると、今まで一度も聞いたことが無いほどの優しい声色で問いかける。


「で、自分の初任務について思い出せたか?」


 いつもの傍若無人な振る舞いをする団長とは思えない、その優しい言葉に目をぱちくりして戸惑うあたし。団長にそんな行動をさせてしまうほど、今のあたしは弱々しく見えてしまっているのだろうか。


「おい、リーティア。どうなんだ?」

「……はい、まだハッキリとは思い出せてはいないですが、そこにあたしがいたんだなってのはなぜかすんなりと理解することができました」

「そうか。ゆっくりと時間をかけて思い出すといい。そういった経験が時には必要なこともある」

「団長にもそういった経験が?」

「残念ながら私は一度も経験したことはないが、お前の父ノーザンも過去に同じ経験をしていたそうだ」

「父さんが? というか団長は父さんを知っているのですか?」

「もちろんよく知っている。だが、私よりもガテンルーザの方が彼について詳しい。気になるのであれば、あとで尋ねてみれば良い。さて、話はこれで終わりだ。もう下がって良いぞ」


 団長はそう最後に告げると、ソファーから腰を上げ定位置の机に戻っていった。

 急に会話が終わったことに一瞬思考が止まる。あたしは団長を目で追いかけつつも、ソファーから立ち上がり「失礼します」と声をかけ部屋を後にした。

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