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王国騎士に憧れる村娘は最強装備で成り上がる~あたしの武器だけ毎回違うのが出てくるけど、どれも強いので問題ないです~  作者: 虎柄トラ


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第十二話 射手との訓練

 リーガルとの訓練は剣や槍を使った模擬戦ではなくて、どっちが先に的を全部撃ち抜けるかタイムを競ったり、的に当てるたびに少しずつ小さくしていき先に外した方が負けなど、本当に遊んでいる感じがして結構楽しかったりする。


 遊び感覚でやっているとはいえ、それでも負けると悔しいので、あたしは毎回全力でリーガルの相手をしている。というか全力で相手しないと負ける。


 その結果、一度も彼に負けることなく勝ち続け気づけば四十連勝。

 あっ、また勝っちゃったのでこれで四十一連勝になりました。


「よっしゃぁ~、あった……ぼくのか~ちぃ!」

「くっそ~、また負けたっす。その矢が無限に出てくるのずるくないっすか?」

「ずるくないよ。そっちだってギフト使ってるんだから、一緒よ一緒」

「全然、一緒じゃないっす。自分のロングボウにはそんな能力ないっすもん」


 あたしの遠距離用神具はアクケルテ、フェイルノート、ミストルティン、雷上動の四つ。多少の性能差はあるけど、その全てに必中と弾、矢が無限に生成される能力が付与されている。

 正直なところ、あたしの技量だけではリーガルに勝つことは難しい。もし、運よく勝てたとしても連勝は無理だろう。あたしが無敗で連勝できているのはこの神具たちのおかげといっても過言ではない。


「でも、勝負は勝負……だよね。リーガル?」

「ぐぐぐ……もう一回もう一回勝負っす。次こそは自分が勝っす!」


 リーガルはそう言うとあたしが返答するよりも早く、遊び場の端に置いてある用具箱から新しい的を取り出すと、壁にかけていた穴の開いた的と取り替え始めた。

 訓練で使用した的はこのあと薪としてご飯やお風呂を沸かすのに活用される。


 あたしは的の取り換えが終わるまでの間、リーガルとしてきた訓練の日々を思い出していた。

 彼と訓練した日数はほんの三日ほどで、そのうち一日は入隊した当日。たったそれだけしか訓練していないのに、もう四十二戦目に突入しようとしている。

 

「……リーガルって、ぼく以上に訓練が好きなのかも」


 ポツリと呟いていると、的を取り替え終えたリーガルは反転し、すぐさまこっちに向かって駆け寄ってくる。

 そして玩具を買ってもらった子供のような満面の笑みで、あたしに話しかけてきた。


「できたっす。さっきはリーティアが先行だったんで、次は自分が先行でいいっすか?」


 あたしが「いいよ」って答えると同時に、背後から「今日はこれでおしまい」という声が聞こえた。

 振り返ると、表情が曇り疲れた様子の副団長が立っていた。


「せっかく的を設置したのにここでおしまいにしてごめんなさいね、リーガルちゃん」

「あ~、いや大丈夫っす……」


 副団長の言葉によって、さっきまでとは打って変わってシュンとなるリーガル。

 あたしはそんなリーガルを放置して、副団長にここに来た理由について聞いた。


「それで副団長……ぼくたちに何か?」

「ちょ~っと、あなたたちにお願いがあるんだけど、詳しくは団長から話を聞いてね。ということで、早速団長のとこに行くわよ」

「分かりました。あっ、その前にここの片付けだけしといてもいいですか?」

「それはわたしがあとでやっておくから、このままにしといていいわよ。それよりも団長を待たせる方が危険だと思うけど?」

「そう……ですね」


 団長ことアレン・クラレンツはロウファスと同じ十八歳で、傍から見れば笑顔が似合う好青年。この大陸ではめずらしい黒髪と人当たりの良さで、平民からは絶大な人気を誇っている。ただ貴族などの権力者からは煙たがられている。

 その理由は団長の髪色、あたしたち平民からしてみれば、艶やかな綺麗な黒髪。だけど、権力者からしてみればその黒髪は不吉の象徴らしい。

 平民から向けられる正の感情、貴族から向けられる負の感情、そのどちらも団長は受け入れ続けている。表情を崩さず、ずっとニコニコと笑顔のままで――。

 そういうストレスに対して団長はそこら辺の人よりも耐性があるが、それでも定期的に放出しなければいずれ許容量を超える。

 その放出先というか憂さ晴らしは団員に向けられることになる。外では聖人君子、内では暴君、それがあたしたちの団長アレン・クラレンツ。


 そんな団長から呼び出されたということは……つまりそういうことだ。


 団長の部屋に近づくにつれて副団長の表情はさらに曇っていく、あんなに不安そうな顔は一度も見たことが無い。


「あの……副団長。そ、そんなに今回はヤバいやつなんですか?」

「わたしも詳しくは知らないのよ。ただ団長からリーティアちゃんとリーガルちゃんを呼んでくるように言われただけだから」

「そういうのが一番こわいんですけど……」

「ふふふ、そうよね。大丈夫よ、わたしがついているから安心しなさい」

「その割には副団長も不安そうですよ?」

「あらあらあらあら、リーティアちゃんも言うようになったわね。さ~て、おしゃべりはここまでね。団長の部屋に到着よ」


 副団長は後ろにいるあたしとリーガルを顔をチラッと見ては、すぐに正面を向いて三回ドアのノックした。


「団長、リーティアちゃんとリーガルちゃんを連れて来たわ」


 部屋の中から「……入れ」と一言だけ返ってきた。

 団長から入室許可を得た副団長はゆっくりドアを開けると、あたしとリーガルを先に入る様に促す。


 団長の部屋は入隊した日に一度だけ入っただけで、この場所に足を踏み入れるのは一か月ぶり。

 前回来た時と家具の配置は一か月前と変化なし。ドアの正面奥には立派な机とイスがあり、団長はそのイスに深々と座っていた。

 団長から見て右には数百冊という本が収容された本棚が壁に沿って配置されていて、左の壁にはワインやコーヒー、タバコといった嗜好品が入った棚が置かれている。

 部屋のど真ん中には大きなテーブルがあり、そのテーブルを挟むようにソファーが置かれていた。


「あれ……クアン、クラン?」


 どうやら団長に呼ばれたのはあたしたちだけじゃなかったようで、ソファーにはもうすでに先客が座っていた。

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