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王国騎士に憧れる村娘は最強装備で成り上がる~あたしの武器だけ毎回違うのが出てくるけど、どれも強いので問題ないです~  作者: 虎柄トラ


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第十一話 男装の従騎士

 ――あれから一か月が経ったある日。


 あたしは朝っぱらからベッドにうつ伏せで寝っ転がり、両足をバタバタと動かしは同室者に暇だとアピールしていた。


「ねぇロウ。遊び場に行かない?」

「昨日も相手してやっただろうが、それに俺はこのあと用事があるしな」

「何か言ったロウ?」

「……同期の双子でも誘って行って来いって言ったんだ」

「それがね……最近、クアンもクランも付き合い悪いのよね」

「そりゃ毎回、朝から晩までお前の訓練に付き合わされたらそうなるよな。あいつらの気持ち分かるわ」


 このなぜか頭を抱え込んでいる人物は三つ年上のロウファス。オレンジ色の髪に緑色の瞳を持った彼は、同室者であると同時にあたしの世話係でもある。

 名前が微妙に長くて呼びにくかったので、あたしはロウと呼んでいる。

 始めは嫌そうな顔をしていたけど、諦めず呼び続けたことでいまは普通に返事をしてくれるようになった。


 あたしが男性に寄せず彼と会話しているのにはわけがある。

 ざっくりと説明すると、入隊したその日にあたしが女性だと一発でバレてしまったから。

 リーティアという女性よりの名前だったからなのか、服の着こなしで気づかれたのか、あれこれ原因を考えたが、ロウから指摘されたのは声と仕草だった。


 どれだけ男性に声を似せようとしても抑揚が女性だったこと、次に指摘されたのが髪をかき上げる仕草をしていたこと。

 抑揚については団員の話し方を参考にして、少しずつだけどマシになってきている。時たま、副団長の話し方に引っ張られて、元に戻りそうになることはあるけど。

 あたしの髪は元々肩まであった。それを父さんとの訓練で邪魔だったのでバッサリと切った。それでも、十五年のくせは早々なくなることはないようで、無意識に無いはずの髪をかき上げていたらしい。


 ただロウファスはあたしが女性だと分かっても、それを秘密にして匿ってくれている。

 そのことを彼に尋ねてみたことがある。その時の返答が『それが俺の任務だから』だった。


 ロウファスに命令できる人物は限られている。この独立遊撃部隊は王国騎士団に所属はしているが、その名のとおり自由に行動できる権限を持っている。なぜなら、この部隊はうちの団長アレン・クラレンツが私財を投じて立ち上げた部隊だからだ。


 この兵舎もあの蜜蝋燭やこの制服なども全部、団長のお金だと思うと頭が上がらない。制服も一着どころか十着ほど用意されていたし……本当に団長って一体何者なの。


 つまりロウファスに命令できるのはうちの団長か副団長しかいない。ということは必然的に団長、副団長にもあたしが女性だとバレてしまっている。でも、そのことで咎められたことも、除隊しろと言われたことは一度もない。


 いまに思えば、思い当たるふしは多々あった。お風呂に入る時も、着替える時もみんなは一緒に入ったり、着替えたりするのに、あたしだけ毎回一人ぼっちだった。


 まぁいまのところこの三人にしかバレていないようだし、この調子で頑張ってバレないように励むとしよう。とは言ってもそれでも息抜きは必要なので、ロウと二人っきりの時だけは村娘のリーティアとして過ごしている。


「なんか事件とか起こらないかな。平和なのもいいけど、これだといつになっても功績を上げられない。従騎士から早く王国騎士になりたいのになぁ~」

「お前より三年先輩の俺でさえまだ従騎士だってのに、入って一か月程度の新人が我がまま言ってんじゃない」

「だって~」

「だって~じゃない。つうか、今日の飯当番は俺だからお前に構っている余裕はない」

「今日はロウなの。カレン姉じゃないのね?」

「カレンさんは今日一日、イーシェンと買い物だとさ」

「へぇ~、買い物。買い物に行くのもいいわね。あたしもついて行こうかな」

「好きにすればいいんじゃないか。じゃ、俺は晩飯の下ごしらえをしに行ってくるからよ」

「は~い、いってらっしゃい」


 あたしは部屋を出て行くロウファスに向けて、寝転がったまま手を振り見送った。


 王国騎士団の一員になった瞬間、王国騎士だと胸を張っていえるのだと思っていたけど、実際はそうじゃなかった。まず入隊すると、従騎士という王国騎士見習いとしてはじまる。そこから功績を上げ、主君から一人前と認められることで、やっと王国騎士と名乗れるようになる。

 あたしの場合、その主君は国王陛下ではなく団長ということになる。


「あの団長から認められるほどの功績。国一つ潰すぐらいしないとくれなさそう……」


 あたしがひとりボソっと呟いていると、ドンドンと激しくドアをノックしてきた。

 もしかして団長の悪口を言っていたのが、聞こえたのかと思いドキドキしながら、ベッドから起き上がりドアを開けた。


 廊下に立っていたのは何かとあたしに突っかかってくる団員のリーガルだった。

 緑髪に黄色い瞳の彼は王国騎士団の中でも上位に位置する狙撃手。昨年、あの的当て試験を唯一合格した人物だったりする。


「リーティア、今日暇っすよね。自分と訓練しないっすか?」

「今日はクアンと訓練する予定だから……」

「クアンならガテンルーザさんと朝一から訓練場に行ってるっすよ?」

「あぁ、そうだった。えっと~、あれだあれ。カレン姉とイーシェンと買い物に行くことになってるから……」

「二人ならもう兵舎を出て行ったっすよ?」

「……や、やろうか。リーガル」

「うっす、んじゃ自分、先に遊び場に行ってるっす!」


 またリーガルの誘いを断ることができなかった。彼は団員の行動を全て把握している。リーガルは弓の名手でもあると同時に優秀な斥候でもある。


 そんなリーガルが誘いに来る日は必ず、あたしのギフトが弓、銃といった遠距離用神具の時なのだ。


「さすがは従順なる狼、随一の情報通」


 今日の神具は竪琴と弓が一体化している変わった弓、フェイルノート。

 この神具を見るたびに、あの懐かしい記憶がよみがえってくる。きっとこの竪琴のせいだろう。


 またあの優しい音色を聴きたいな――。

 

「……しんみりしてる場合じゃないな。さ~て、行くとしますか。今日も勝って、連勝記録を更新してやるぞ~!」


 あたしは拳を突き上げて気合を入れると、リーガルが待つ遊び場に向かうのだった。

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