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三倍数と三のつくシーンでなろうになり、それ以外のシーンで原作に忠実な桃太郎

作者: 騎士ランチ

オモロー!

【1】

昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは毎日山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行っていました。


【2】

ある日おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がドンブラドンブラドンブラザーズと流れてきました。


【さーん】

「スキル【鑑定眼】発動」

山の賢者ローバが鑑定眼で桃を確認すると、桃の耐久力がバハムート並な事と、中に赤子が入れられている事に気づく。

「おやおや、こりゃアタシ一人には荷が重いわねぇ。坊や、待ってなさい。この桃を割る事の出来る人の所に連れて行ってやるわよ」


【4】

おばあさんが持ち帰った桃をおじいさんが包丁で割ると中から元気な赤子が飛び出して来ました。二人は、この子に桃太郎と名付け育てる事にしました。


【5】

桃太郎はスクスクと育ち、十二歳になる頃には強さと優しさを備えた立派な男子になりました。


【ろーく】

しかし、神様から与えられた職業は戦闘向きでは無いとされるテイマーだった。

「「モモタロウ、ハズレ職業だったしお前追放な!」」

今まで優しかった義理の両親に突然捨てられたモモタロウは、街に向かい冒険者になる事にした。


【7】

桃太郎が道を歩いていると、お腹を空かせた犬に出会いました。

「桃太郎さん、桃太郎さん、おこしにつけたキビダンゴ」

「ごめん、無いんだ」

「えっ」

「テイムならできるけど」

「じゃあそれでいいです」

こうして犬がお供になりました。


【8】

次に桃太郎はキジに会いました。

「桃太郎さん、桃太郎さん」

「キビダンゴないンゴ。テイムで」

「しょうがにゃいにゃあ」

こうしてキジがお供になりました。


【きゅー】

その時、遠くから絹を割くような女性の悲鳴が聞こえた。モモタロウ達が駆けつけると、馬車が鬼に襲われていた。

「やれやれ、面倒だな」

モモタロウは無詠唱で鬼を瞬殺すると、馬車の中を確認した。すると、そこには奴隷の首輪をつけた少女がいた。無論巨乳で、衣服としての機能が疑わしいヒラヒラの布を身に着けていた。


【10】

「桃太郎さん、桃太郎さん、おこしにつけたキビダンゴ」

「テイム払いで。あ、今のでお供揃ったから猿加入イベント消えたわ」

こうして猿は仲間になる前にリストラされ、奴隷少女がお供になりました。そして、最近鬼が人々を襲っていると奴隷少女から聞いた桃太郎は鬼退治を目標としました。よっしゃあ!軌道修正成功!


【11】

桃太郎達は海に出て、猿の漕ぐ船で鬼ヶ島に向かいまし…猿?

「お供の中に船を漕げる方はいませんかぁ!?」

シーン

「猿!カムバーック!」


【じゅうに】

「まあ、自業自得だな」

自分を追放したモモタロウパーティが海で遭難したと聞いたサルマンは、興味なさげにそう呟いた。

「しかし、鬼と人の争いで罪の無い奴らが苦しむのは見ていられない」

サルマンの鬼退治はこうして幕を開けたのだった。


【じゅうさーん】

サルマンはアイテムボックスから出した船に乗り込み海を渡って鬼ヶ島に向かった。

「サルマン様、船の操作と見張りは我らにお任せ下さい」

「ああ」

サルマンの船にはモモタロウの十倍ぐらい強いホムンクルスが多数乗り込んでいた。実はサルマンは転生者で、この船やホムンクルスは前世の彼が作ったものだった。


【14】

鬼ヶ島に着いた猿は、仲間達を船番として待機させ一人で鬼の本拠地で暴れました。猿がひっかき、猿がひっかき、そして猿がひっかき、鬼は降伏し宝を差し出しました。


【じゅうご】

だが、鬼の口から意外な事実が語られる。

「我々は人間を襲ったりはしてないのじゃ。人里で暴れててるのは、強化薬で変身した人間なのじゃ」

なんと、一連の鬼騒動は人間の国が鬼の宝と領地を奪うために企てた自作自演だったのだ。

「許せねえ!王国なんて滅ぼしてやる!」

「わらわもサルマン様についていくのじゃ!わらわは鬼の姫カーリーなのじゃ」

こうしてカーリーが仲間に加わった。


【16】

一方その頃、命からがら陸に戻ってきた桃太郎一行は、この先の展開について話しあいました。

「えっと、次はどうすればいいんだ?」

「ワンワン、この作品の基本ルールでは、なろう化していない時は可能な限り原作通りに動けとありますね」

「キジキジ、一応鬼ヶ島には向かったのだし、おじいさん達の所に帰りましょう」

という訳で、何の成果も得られなかった桃太郎は手ブラで実家に帰りました。


【17】

「ただいまー、ごめん二人共、お宝は…」

「ええんよ、犬鍋とキジ鍋でお祝いしましょうね」

「ギャー」「ギャー」

犬とキシは鍋にされてしまいました。この後彼らは出番が無いから、お宝として判定されたみたいです。その後、桃太郎は奴隷少女と結婚し、おじいさん達と仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし。


【じゅうはーち】

「とでも言うと思ったかあ?」

「ヒャッハー!お前らに食わす飯はねえ!追放された身で帰ってこれると思うなぁ!」

なろう化によりジジババ豹変!モモタロウは再度追放される事になった。

「待ってよ!もう原作のストックが無いよ!」

「そうですよ!絵本の話はここがゴールですよ!」

モモタロウと奴隷少女は必死で話をたたもうとするが、ジジババは聞く耳を持たない。

「じゃかましい!最近、王都にまで鬼が攻め込んで来て王様が困っとるから助けに行ってこい!」

どうやら話はまだまだ続くようだった。


【19】

決戦の地が鬼ヶ島から本土に変わっただけ。必死で自分に言い聞かせ桃太郎と奴隷少女は王都に向かい、兵士に志願しました。二人は兵士長の前で自己紹介します。

「日本一の桃太郎です、特技は剣術とテイム。なろう的なノリの時は無詠唱魔法もできます」

「私は奴隷です」

二人は無事採用され、王都防衛の兵士となりました。


【20】

桃太郎や他の兵士は頑張りましたが、今や主役は猿と鬼の連合軍側です。例え物語がなろう化してなかろうが、悪役側の定めによりじわじわと追い詰められていきました。そして、王城に立てこもる所まで追い詰められた桃太郎は、奴隷少女に告白しました。

「この戦争を生き残れたら、今度こそ結婚しよう」


【にじゅいーち】

しかし、奴隷少女は首を横に振った。

「ごめん。私男だから無理です」

「なにっ」

巨乳美少女はざまぁされないの法則により、奴隷少女は男だった事になった。ショックで呆然とするモモタロウに鬼の金棒が迫る。しかし、その金棒がモモタロウの頭をかち割る事は無かった。

「どすこい!」

奴隷少女の張り手が鬼を空の彼方へぶっ飛ぼした。

「奴隷少女強っ!そう言えば聞いた事がある。女性の様な髪型とモチ肌をした最強の鬼キラーが居ると」

「はい、私の名前はキンタロウです」

奴隷少女の正体は、モモタロウと並ぶ鬼キラーのキンタロウだった。読者の皆さんは何でキンタロウが奴隷やってたんだとツッコミたいだろうが、あの頃は設定が固まってなかったから本当に奴隷少女だったのだ。


【22】

王国に金太郎が加わった事で戦況は一変し、鬼達は王城を落としきれません。

「猿様、どうするのじゃ?」

「どうやら俺の知らない敵がいるようだ。半端な戦力は通用しないか」

猿と鬼の姫は部下を撤退させ、自分達だけで王城に突入しました。猿が引っかき、鬼の姫が薙ぎ払い兵士を押しのけると桃太郎と金太郎がやってきました。

「猿、久しぶりだね」

「俺達初対面ですよ」

「僕達はどうしてこうなったんだろう。僕達はこれからどうなるんだろう」

「もはや原作は影も形もないですから。まあ、この後の流れはなろうテンプレがなんとかしてくれると思います」

そんな訳でバトルです。


【にじゅーさん】

「サルマン!貴様のせいで僕は全てを失った!」

「全部お前の責任だろうがい!」

「「無詠唱魔法・衝撃!!」」

キィィィン!

サルマンとモモタロウが同時に放った衝撃魔法は激しい音と共にかき消えた。

「くっ、魔法では互角か!ならば剣で決着をつけよう!」

「望む所さんだぜ!」

モモタロウはサルマンの部下の十分の一の強さしか無いという設定は、えーと、今は忘れろ!とにかく二人は互角の勝負を演じていた。


【にじゅーよーん】

そして、カーリーとキンタロウも互角の勝負をしていた。

「ぬううう、貴様人間の癖にやるのう!」

「貴女も鬼の癖になかなかやりますね!」

サルマンとモモタロウが互角なら、モモタロウに近い実力を持つキンタロウとサルマンに秒殺されているカーリーが互角なのはおかしい?確かにそうかもしれない。だが、さっきモモタロウの強さを上方修正したばかりだからトータルではこれでトントン。何の問題も無い、いいね?


【25】

何度も切りあった後に猿が言いました。

「桃太郎さん、桃太郎さん、本当に悪いのは一部の人間なんです。もう、こんな無駄な争いはやめましょう」

「証拠はあるのかい?」

「桃太郎さんが倒した馬車を襲っていた鬼っぽい奴のDNAと鬼ヶ島の鬼のDNAは一致しませんでした。別の生き物です」

「わかった。それなら皆で国王に問いに行こう」

なろうなら絶対ありえないタイミングで和解が成立しました。読者からのブーイングは怖いですが、絵本ならここで和解するやろなあという思いには作者は逆らえません。


【26】

「桃太郎と金太郎が裏切ったぞー!」

ようやく逆転の目が見えてきた所さんに最大戦力が裏切ったから兵士達はたまったもんじゃありません。兵士のほとんどは戦意を失い逃げ出しました。

しかし、まだ立ち向かう者もいます。

王の間へ向かう一行の前に兵士長が立ちはだかりました。


【にじゅななー】

「我が名はイッスン!この国の最大戦力、鬼キラーの一人なり!」

「鬼キラーのイッスンだと?」

サルマンは攻略本を取り出し、イッスンの項目を確認した。

「なるほど、確かにあいつは鬼キラーだ。しかも剣術はモモタロウ以上で大物食いのスキルまで持っている」

「それじゃあ僕もキンタロウもカーリーもあいつには勝てないじゃないか!」

しかも、イッスンは城門からバフを受けて毎ターン体力が三割回復していた。サルマンなら勝てなくも無いが、この後に国王との戦闘が間違い無くある。


【28】

桃太郎達がどうしたものかと考えていると、二人前の鍋を持ったおじいさんとおばあさんが到着しました。

「ゲエーっ、前には兵士長!後ろにはジジババ!囲まれてしまった!」

「安心せえ桃太郎。なろう化してない時のワシとばあさんは味方じゃ」

ダブスタクソ親父なおじいさんはそう言うと、兵士長に犬鍋とキジ鍋を投げつけました。

「うわっ!私は剣技なら切り払えるし魔法は城門の守護で無力化できるが、煮汁は防げない!」

兵士長は煮汁を熱がり城門から逃げて行きました。


【29】

「急げ桃太郎!次のシーンからはワシとばあさんはお主の敵じゃ!」

そう、このシーンが終わると30から39までずっとなろう展開です。桃太郎は仕方なく、おじいさんとおばあさんを城の外に残し、城門を内側から閉めました。

「桃太郎さん、おじいさん達や外の兵士が入って来ないように、この門は私と鬼の姫さんで抑えておきます」

「のじゃ」

金太郎と鬼の姫に後を任せ、桃太郎と猿は国王のいるであろう玉座の間へと駆けていきました。


【さんじゅー、さんじゅいーち、さんじゅにー、さんじゅさーん】

「遂に玉座の間か…長かったな」

改造鬼軍団四天王、シュテン・イバラギ・ムサシ・王太子を撃破し、遂にサルマンは目的の場所へと辿り着いた。

その途中、シュテンがカーリーの父親のクローンだったり、この国の女王がモモタロウの本当のお母さんと判明したり、モモタロウが王太子の自爆からサルマンをかばって死んだり、ダブスタ糞老夫婦に苦戦するキンタロウ達にサルマンの部下が船で救援に駆けつけたり、色々あったが本当にこれがラストバトルだ。

「よくぞ来たな転生者サルマン。私がこの国の女王ピンクだ( `・∀・´)ノヨロシク」

ラスボスの降臨だ。彼女こそが男爵令嬢の身分から成り上がり、邪魔なライバルを冤罪で潰し、そのついてに王家まで乗っ取り邪魔な人間や鬼を改造し国を拡張し続ける女王ピンク。一言で言えば、成功し続けたピンクである。


【さんじゅよーん】

「女王ピンク!貴様、俺が転生者だという、読者の大半が忘れてた死に設定をなぜ今更持ち出す!?」

「それは私も転生者だからだ!この世界を支配するには私以外の転生者は邪魔だ!ここで死んでもらう!くらえ、ピンクボール!(^o^)オエーッ」

ピンクの口が大きく開き、バハムート並の硬さをもつボールが発射された。

「モンキークロウ!」

ガキィィィン!!

サルマンは強化した爪でピンクボールを引き裂く。だが、ピンクボールはただの質量攻撃では無かった。

「オギャアオギャア」

割れたピンクボールから赤子が現れる。それはサルマンがよく知る男と非常に似ていた。

「こ、これはモモタロウ!?」

「否!お前らがモモタロウと呼ぶ存在は、廃棄した失敗作に過ぎん!そして、王太子も不完全な存在だった!この子が、いや、この子達こそが私が産み出した最強のピンクジュニア!(≧▽≦)ガンバッ」

サルマンは吐き出されたピンクボールが複数ある事に気づく。そして、全てのボールからピンクジュニアが誕生していた。


【さんじゅごー】

「無詠唱魔法・獄炎!」

「ホギアァァァ!!」

「無詠唱魔法・衝撃!」

「ママァァァー!!」

「無詠唱魔法・凍土!」

「バブウゥゥ!!」

「クソっ、きりがねえ!」

ピンクジュニアは生まれたてなので、個体の力はサルマンの足元にも及ばないが、いくら倒しても湧いてくる。

「このままじゃあジリ貧で負ける!せめて仲間がいれば!」

サルマンは今まで友や配下は作っても、真の意味で信頼のおける仲間は居なかった。結局は圧倒的な自分がいればそれで何とかなったからだ。だが、今ここにサルマンと同等以上の存在が現れ、彼は初めて対等な仲間が欲しいと心から思った。

「今更虫のいい話だが…、俺に仲間がいれば」

「クククッ、それは叶わぬ願いよ。私達転生者の戦闘は文字通り次元が違う。さあ、そろそろ決着を…( ゜∀゜)・∵. グハッ!!」

追加のピンクボールを吐き出そうとしていたピンクの喉に小刀が突き刺さっていた。


【さんじゅろーく】

「おのれ!何奴!(´;ω;`)」

「我が名はイッスン!この王国を守るために兵士長の任務に就いていたか、それもここまで!貴様の行いにはもう我慢ならん!」

そういや居た。転生者達と同じぐらい強い、最強の現地人イッスンが居た。

「お前は、たしか煮汁を熱がり逃げた兵士長!何故今になって俺の味方をしてくれるんだ?」

「私もお前と同じく、肩を並べられる味方が欲しかったのだ。女王ピンクを討ち、王家を復興させる為には私だけでは戦力が足りなかった」

「そういう事なら手を貸してくれ!あの赤子はお前に任せる!」

「承知した!」

イッスンがピンクジュニアの排除に専念してくれるおかげで、サルマンは遂に女王ピンクを追い詰める。

「ま、まて!私達は転生者同士仲良くしよう!m(__)mペコリ」

「もう遅いー!」

「ギャァアアアアア(^q^)チーン」


【さんじゅーなな】

人々を苦しめてきた女王ピンクは倒され、王国と鬼ヶ島の争いは終結した。ピンクの死によってジジババや他の狂人は正気を取り戻し、鬼の悪行は改造された人間の仕業と発表された。王族の生き残りも見つかり、その人物が王国を立て直す事となった。

「無理ー!私に政治とかできませんよー!」

ピンクに殺された公爵令嬢の息子と判明したキンタロウを無理やり玉座に座らせ、イッスンとカーリーの助けを受けながら王国は再建されていく事となった。


【さんじゅーはーち】

「さて、そろそろ俺も行くか」

戦後処理が終わった数日後、サルマンは部下と共に大陸を出た。今回の件で、まだまだ自分は未熟でこの時代について無知だったと知ったサルマンは世界を見て回る事にしたのだ。

「サルマン様、出港準備完了してます」

「よーし、それじゃあ行くかあ!」


【さんじゅーきゅー】

これで転生者サルマンのチート世直し伝説は一旦終了とさせていただきます。ご愛読ありがとうございました!この話を気に入っていただいたなら、高評価・ブクマよろしくお願いさそます!それではまた次回作でお会いしましょう。


【40】

めでたしめでたし。


これの百倍ぐらいの分離を上手くまとめている長編作者様達はやっぱ凄いんだなあ。

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