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終焉の龍の卵  作者: レッドヴォルト
死界 蟲蔓延る病の谷編
94/101

陸の悪魔

前と変わっているところと言えば体に蟲に噛まれた痕や無数の生傷があったり矢や槍などが突き刺さっている。奴もこの死界に来て数多の獲物を食らったのだろう。


Gを食べていた奴が、ゆっくりとこっちを見る。涎がダラダラと溶けて地面を溶かしている。


「グオアァァァァ!」


陸の悪魔の咆哮が轟く。前までは逃げることしか出来なかったが、俺達も強くなった。新たな仲間も増えたし勝てるはずだ。


「グルラァァァ!」


奴が大口を開いて噛みついて来る。速い。だがそれだけだ。


「ガァァァ!」


俺はガラ空きの横顔を全力で殴りつける。だが。


「グルラァァァ!」


「グォ!?」


奴は怯む様子もなく馬鹿力で俺を押し飛ばした。


「ウラァァァ!」


「ガァァ!」


「ギャァァァア!」


ギューリーが奴の背中に乗り剣を突き刺しアルファが、尻尾の根元に食らいつく。だが2人の猛攻も馬鹿力で弾き飛ばしやがった。奴が暴れるたびに地面が割れて地形が変わるほどだ。


「ガラガァァァ!」


極太のブレスが飛んでくる。俺達は空に飛んで逃げる。だが奴は直ぐにブレス攻撃を中断して岩を引き抜き投げてきた。


「ギャ!?」


アルファ!?


アルファに岩が直撃する。墜落することは防げたようだ。だがそれだけでは終わらなかった。幾つかの魔法が俺達向けて飛んでくる。このまま飛んでいるだげじゃこっちの方が不利だ。やはりある程度近づかないとダメか。


俺達は大地に降りる。すると奴は待っていましたと言わんばかりに近づいてきた。


『ペネトレイトホーリートライデント!』


「ギィ!?ガァァ!」


三又の光の槍が奴を貫いた。だがそれでも止まることなく向かって来る。


『来るぞ!』


ガギィィィ!


ギューリーの剣とギガノト・ドラゴンレックスの牙がぶつかり合う。


「ウラァァァ!」


なんとギューリーが押し返したのだ。仰け反った隙に俺とアルファが攻撃を叩き込んだ。


「ガァァ!」


「ギィラァァァ!」


ギガノト・ドラゴンレックスの鱗が砕けて血が流れる。だが即座に再生してしまう。凄まじい再生力だ。


『ミディアムアンデットクリエイト!百骨百足!』


「ギチャギチャァァ!」


地面から20メートルはある巨大な百足が這い出してきた。ただ大きいだけではない。まるで骨を繋ぎ合したかのような外見をしている。


「ギチャ!」


「グルガァ!」


百骨百足がギガノト・ドラゴンレックスに絡みつく。そして鋭い牙で奴の背中に噛みついた。


「グルガァァァァ!」


「ギィ!?」


『時間稼ぎにもならねぇのかよ!一応Bランク上位の魔物だぞ!』


ギガノト・ドラゴンレックスは絡みついていた百骨百足を無理矢理引き離して粉砕した。凄まじい筋肉量だ。圧倒的な力の前じゃ小細工など通用しないのだ。


『ハートクラッシュ!』


「ガァァァ!」


『レジストされただと!?』


どうやら即死魔法も効かないようだ。


『始祖の者の力を使う!気をつけろよ!始祖の常闇!』


「グルギャァァ!」


ギガノト・ドラゴンレックスの影から黒い手が伸び絡みつく。小山ほどある巨体が、地面に押し付けられる。


『滅光』


影が光り奴の巨体が地面に押し潰される。大地が割れるほどの重力が襲い掛かる。


「ギャァァァラァアァア!」


『なっ!?』


『うお!?マジかよ!』


奴は力づく影から伸びる手を引き千切って脱出したのだ。その勢いでこっちに向かって来る。だが俺も何もしてなかった訳ではない。拳に暗い閃光を纏わせて奴の顔目がけてぶん殴る。


「ガァ!」


「ギャァ!?」


ガキィ!


確かに俺の拳は奴に当たった。頬肉が裂けて血が噴き出た。だが奴は怯みもせずに俺の腕に食らいついてきた。ナイフのような牙が俺の鱗を容易く貫き酸性の涎が、俺の骨を溶かす。俺も魔法を放って抵抗するが全く効果がない。


『オメガを離せぇぇ!』


「キシャァァ!」


『プロミネンスショット!』


アルファ達が、全力で攻撃するが奴は見向きもしない。メキメキと俺の腕が軋む。そして想定しうる最悪な結末が訪れた。


グシャリ


「ギャァァァアアアア!」


肉が断ち切れる音と共に激痛がやって来た。腕が千切れて拘束から逃れることが、できたのは不幸中の幸いだろう。


俺は奥歯を噛み締め激痛を耐えて距離を取る。意識が朦朧とするが、なんとか耐える。どうやら奴は噛み千切った腕にしか興味が、ないらしく俺の腕に齧りついていた。


『回復させる!ホーリーヒール!』


アルファが回復してくれたお陰で血は止まった。だが腕は生えてこない。俺は再生を使い無理矢理生やす。顔を顰めるような激痛が腕に走るが、噛み千切られた痛みと比べると大分マシだ。


『今ギューリーが引きつけてくれてる!少し休んどけ!』


視界が霞む。どうやら血を大量に流し過ぎたようだ。アルファの言う通り少し休んだ方が良いかもしれない。


『血操術!暴血縄!』


『ソニック!ウィンドシュート!』


血縄と風の刃が、奴に降り注ぐ。傷つけることはできるが、奴を倒すには決定打に欠ける。このまま持久戦に持ち込まれたらこっちが不利になるだろう。


『封剣解放!』


ギューリーの封剣により再生が止まる。だが倒れる素振りはない。それどころかより攻撃に苛烈さが増している。やはり俺の暗い閃光が一番火力が出そうだ。


俺は立ち上がり指先に魔力を纏わす。そして奴の首元目掛けて黒い凶弾を放つ。凶弾は首の皮を貫き血を吹き出させた。


「ギュルァァァァ!・・・ギャァァァ!」


『良くやった!』


『動きが鈍ったぞ!畳み掛けろ!』


首を貫かれても死なない生命力は大したものだ。だが動きはかなり鈍っている。


「ギュルァァァ!」


『フローズングラウンド!』


『血鎖!』


奴の足元が凍りつき血の鎖により動きを封じられる。この拘束も直ぐに解かれるだろう。だがその一瞬の隙が欲しかった。


「ガァァァァ!」


俺は牙に暗い閃光を纏わす。牙が折れるかと思うほどの魔力が流れているのが、分かる。そんなヤバい代物を俺は奴の首に突き刺した。


「ギィァァァ!」


バチバチと電流が走った音と共に奴の首が爆ぜる。首には牙で齧り取られたような痕がくっきりとある。ヨロヨロと奴の巨体が地面に倒れる。辛うじてまだ息があるようだ。初めて会った時は逃げることしか出来なかったが、今となっては勝てるようになった。俺も強くなったもんだ。勝負は決した。楽にしてやろう。


俺がトドメを刺そうとギガノト・ドラゴンレックスに爪を、振り下ろそうとしたその時だった。どこからか糸が飛んできてギガノト・ドラゴンレックスの首を貫いた。鮮血が俺の顔にかかる。


(経験値300000入手しました。levelが20に上がりました)


『何者だ!』


「キシャァァ!」



「勇者を殺すだけでは、飽き足らず陸の悪魔まで倒すとは驚いたぞ」


気配察知がガンガンに反応する。嫌な汗が俺の額を伝う。


『へへ・・・やっべぇ奴が来やがった』


アルファの顔が引き攣る。


雪のような白い肌に肩まで伸ばした美しい金髪。そして凛とした威厳を感じさせる赤色の瞳。そして人形かと思うほど整った顔立ち。ここだけ見れば絶世の美女だが、問題はその下半身であった。下半身は人の身ではなく蜘蛛であった。アラクネと言ったらその姿は分かりやすいと思う。


『なんだこの化け物・・・底が見えねぇ』


ギューリーの言う通り力の底が見えない。


「何を怯えてるのだ?妾に会いたかったのではなかったのではないか?」


アラクネが優しく微笑む。だがその笑顔とは裏腹に圧が漏れ出ている。


『お前は何者だ!答えろ!』


「ああ、そうだったな。自己紹介がまだだったな」


ギューリーが吠えるように言う。目の前のアラクネは、穏やかにギューリーの質問に答えた。


「妾はこの谷の支配者であり十王の一体、蟲女王バグイーンである」


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