教皇と勇者
「勇者様が目覚めたぞ!」
「神官様を呼べ!急げ!」
意識がゆっくりと覚醒していく。棺の中で眠っていたようだ。いつもの白い無機質な部屋で目覚めた。
「あーそんな叫ばんくて良いから・・・あー頭痛え」
俺はゆっくりと棺桶から出る。
「ゆ、勇者様!まだ安静にしていてください!動いてはダメです!」
「うるさいなぁ。もう大丈夫や。それより服持ってきてくれや。全裸やと流石にな?」
「わ、分かりました。ですが安静にしといてください」
「しゃーないな。なるはやで頼むで」
「は、はい!」
従者が走って部屋から出ていく。俺はそこら辺にあるソファーに腰掛ける。
毛皮って全裸だとゴワゴワするな。今度布のソファーに変更させるとしよう。
俺はソファーの近くの机に置いてあるワインを飲む。この世界だと俺は成人しているし大丈夫だ。
「勇者様!お召し物を持ってきました」
「おお、ありがとうな。毛皮かぁ布の方が肌触り良くて良いんだけどな」
「も、申し訳ございません!直ぐに別のを持ってきます!」
「別にええで。どうせこの後直ぐに教皇様との面会やろ?」
「はい!その予定になっております!」
俺は用意された服に着替える。一応お偉いさんと会うから正装だ。
「教皇様がお待ちです。どうぞこちらへ」
「うい」
俺は神官の後ろを歩いて部屋から出る。部屋から出ると長い一本道の廊下に出た。豪華な装飾に一級の画家が書いた神の絵、そして柱のように教皇の間までを守護する聖王騎士達が居る。いつ見ても金掛けてるなとは思う。
「お疲れさんやで。教皇様はもう中に居るんか?」
「はっ!教皇様はお待ちです!」
聖騎士の1人が答える。俺は1人で教皇の間へ入る。教皇の間には何人かの近衛聖騎士、そして厳かな雰囲気の部屋の真ん中で王座に座っているのが教皇だ。
「よくぞ帰ってきたな勇者よ。我が呼んだ理由は分かるな?」
「あー分かってるがな。黒竜討伐に失敗したことやろ?」
「勇者様!いくら勇者様と言っても教皇様にそのような言い方は!」
「構わぬ。控えよ」
「・・・はっ」
「すまぬな勇者よ」
「構わへん構わへん」
「感謝する。それでは勇者よ今回の成果を聞かせてくれたまえ」
「今回のはヤバかったわ。正直この前のアルバで戦ったウロボロスと同等、いや下手したらウロボロス以上の怪物やったわ。ステータスはBランク上位やったけど力は最低でもAランク、Sランクに片足突っ込んでるで」
俺はポケットから出した葉巻を吸いながら語る。いつもなら煩い聖騎士共に注意されるがそれどころじゃないようだ。
「ウ、ウロボロス以上だと!?」
「ウロボロスと言ったらAランクでも上位に入る程の竜じゃないですか!それ以上とは・・・」
聖騎士達がざわめく。そりゃ無理もない。ウロボロスって言ったらワイでも勝てるかどうか怪しい相手だ。それ以上って言ったらそりゃざわめくだろう。
「静まれ!教皇様の御前であるぞ!」
近衛聖騎士長が床に剣を叩きつけ聖騎士達を黙らした。
「皆が焦るのは分かる。だがまだあるのだろう?」
「あるで。仲間のドラゴンニュートも同じくらい強かったわ。それにレジェンド級の剣を持っていたわ。あれには驚いたわ!切れへんもんなんて久しぶりやったわ!」
「勇者殿の力でも・・・か?」
近衛聖騎士長が俺の言葉を疑うかのように言う。
「そうや。皆さんご存知やと思うけどワイの力、絶剣は凄まじい量の魔力を使用するが万物を斬り裂く力や。それでも斬れへんかってんよ。ヤバない?」
「ふむ・・・もしかしたら伝説級の魔剣かもしれぬな」
「勇者殿の龍王牙刀に並ぶほどですか」
「せやなーワイの刀と同じくらいやな。それにドラゴンニュートはよう分からへん属性の剣を生成してたな。まあそっちは切れたけど」
「なるほどのぉ。勇者殿が負けるほどの魔物共・・・眠っていた怪物達が動き出したか」
教皇が渋い顔で言う。
「それにドラゴンニュートの方にはルーン文字が刻まれていたで。もしかしたら古都キリヌスを奪還できるかもしれへんで」
「なっ!?それは本当か!?」
「もしかしたらドラゴンニュートは新たな鎖の王になれる逸材や。神喰みの龍ルーディルがこの国に守護龍として戻ってくるかもしれへんで」
「だ、だが奴は邪神オーデイルを喰らったのだぞ!そんな邪悪な者を守護者として戻すのは!」
「かもしれへんってだけや。そもそもあのドラゴンニュートが鎖の王になってルーディルがこっちに戻るとは分からへんで。最悪の場合は他の鎖の王が解放されるかもってことや。まあ3分の1の確率やな」
「ふむそうか。頭の片隅に入れておくとしよう」
「教皇様今後の方針はどうなさるのでしょうか」
「ドラゴンニュートを鎖の王として確保する。そして勇者の強化計画を実施する。そして伝説級の魔物の捜索をして確保または討伐せよ!異論は認めん」
「げぇ!マジかいな!ワイの強化計画はまだええわ!でも伝説級の魔物なんて簡単に見つけれるかいな?」
「無理だろうな。ので聖女リエーリアを捜索隊として遣わす」
「承知しました。それではリエーリア様に連絡しておきます」
「あの性悪女なら行けるなぁ」
「勇者様ぁ!」
聖騎士の1人が声を荒らげて剣を抜こうとする。まあ自分達が崇拝している存在を馬鹿にされたらそりゃ怒るよな。
「すまんすまん悪かった」
「これにより謁見は終了する。勇者よ下がって良いぞ」
「ほな失礼させていただくわ」
ワイは教皇の間から出る。それにしてもあの堅苦しい雰囲気は嫌いやわ。聖騎士共もゴチャゴチャうざったいしな。まあ捜索隊とか面倒くさいのに組み込まれへんくて良かったわ。面倒くさいのはあの性悪女にぶん投げよそうしよ。強化計画って何するんやろか。死ぬのは嫌やな。まあボチボチ頑張るとしよか。




