イミテイト
「朝だ起きてくれ。族長からの呼び出しがあった」
俺がぐっすりと眠っているとエフィガルドが起こして来た。眠たい目を擦りながらエフィガルドに着いていく。早朝の雪山だからかかなり冷え込んでいる。
俺はエフィガルドに連れられて村の中に入ることになった。早朝だからか村には誰も居なかった。コォォと風が吹き抜ける音だけが聞こえる。村は木造のいかにも雪国の家と言う感じだった。俺は物音をできるだけ立てない様に着いて行く。
エフィガルドに着いて行く大きな屋敷に着いた。いや屋敷と言うより小さな城と言っても良いだろう。来る者を威圧する様な石造りの壁で囲まれている。
「着いたぞ。おい門を開けろ!」
ギギギと重厚感のある音と共に扉が開かれる。エフィガルドに連れられて中に入る。かなり広い広場があり俺はそこで待機する様に言われエフィガルドは小城の中に向かって行った。
しばらくしてエフィガルドと老人、そして何人かの護衛が出てきた。堅牢そうな鎧を着ている護衛の方はかなりの実力者の様で強者の気配がする。殺気を放ってるし襲ってくるか?ギューリーを連れて来なかったのは失敗だったかもしれない。
「殺気を抑えろ馬鹿者共」
エフィガルドがギロリと護衛達を睨む。あの気さくな兄ちゃんみたいなエフィガルドから放たれたと思えない程の殺気と圧が護衛達に放たれる。ビクンと護衛達の肩が跳ね完全に怯えている。
「も、申し訳ございません」
「分かれば良いんだよ。すまんな恩人さん」
エフィガルドが気さくに笑いかけてくる。さっきまでの殺気と圧が嘘の様だ。
「ご足労感謝する黒竜殿」
前見た時は遠くからだったからか分からなかったが、老人と言っても見たら分かるほど体が鍛えられている。服の隙間からチラリと古傷が見える。その傷から歴戦の戦士だったことが分かる。
「やはり竜種の姿は圧巻ですな!ワシが若ければ一戦交えてみたかったですな。さあどうぞ中へ」
俺は村長に着いて行く。だがここで一つ問題が出来た。扉のサイズが人間用、つまり俺には小さすぎるのだ。
「どうしたのですか?」
いや、俺竜種だから入ろうとしたら扉壊れると思うんだけど・・・
「なっ!?」
そんな驚いた顔されても・・・人間になれる訳じゃないですし。
「いやはやてっきり人化できるかと思っておりました。なにせ高位の魔物は人化できる種族が多いので」
ちょいちょいちょい待て。え?人化ってできるのか?
『できるぞ。まあスキルは入手しないといけないがな』
人化のスキルなんてあるのか。人に化けることができれば俺が入れないような狭い所とかにも入れるようになるだろう。
「外で申し訳ないが広場で話しましょうか」
族長と俺は石畳の上に座る。族長を囲むように護衛達がいつでも動けるように中腰で座る。
「今回黒竜殿を呼ばせていただいたのには理由がありましてな。頼みたいことがあるのです」
頼みたいことですか?宿と食事のお礼もしたいですし俺にできることなら何でもしますよ。
「実はですなエフィモアから聞いてると思うのですが、村を滅ぼした魔物が迫って来ているのです。お恥ずかしいことに今の戦力では太刀打ちできないのです」
エフィガルドと護衛を見ただけだが、結構強そうだったのにそれでも太刀打ちできないのか。そんなにやばい相手なのか?勝てるかな?
「生き残った兵の情報によると竜の姿や狼の姿など姿を変えながら襲ってきたそうです」
決まった姿を持たないのか。不定系の魔物・・・パッと思いつく限りスライムとかか?
『確かにあり得そうだな。上位種のスライムなら他の魔物に化けることも可能だ』
スライムって言ったら物理無効のイメージが強い。戦うとしたら魔法やブレスを主体として戦うことになりそうだ。
「魔法なら村の者も何人か使えます。加勢させましょう」
もしヤバそうだったら隠れるか逃げてくれ。今のうちに避難ルートとか決めとこう。地図はあるか?
「はい。地図ならここに」
族長が床に地図を広げる。大雑把な地図だが仕方ない。幸い近くには何個か村が残っているようで最悪の場合そこに避難してもらうことになった。
「族長!緊急事態です!」
俺が族長と作戦や利用できそうな地形の相談をしていると1人の兵が息を切らしながら走ってきた。
「奴が現れたか!?」
「はい!急に渓谷に出現しました!犠牲者は幸い0人です!現在、正体不明の魔物と交戦中!直ちに迎撃を!」
「分かった!直ぐ向かおう!黒竜殿行けるか!」
行けるぞ。直ぐに向かおう。族長、俺の背中に掴まれ。飛ぶぞ!
「感謝する!」
族長が俺の背中に掴まる。俺は四対の翼を力一杯羽ばたかせて空へ駆け出した。
『おい!?急にどうした!?あとそのおっさん誰だ!?』
時間がねぇ!簡単に言えばぶっ倒すやつが現れた!あとこの人は族長だ!
『分かった把握した!』
分かるの!?助かるけど!?
渓谷に向かう途中、起きて素振りをしていたギューリーを掴んで攫ってきた。渓谷が見えてきた。俺は渓谷の入口に着陸する。
「族長!現在、魔法部隊が交戦中!しかし火力が足りません!」
「安心しろ!黒竜殿が来てくれた!今日こそ奴を滅するぞ!」
だいたい30メートルくらいの距離だろうか。何人かの戦士と魔法使いに囲まれている黒い粘液のような物が見える。そして俺は目を疑った。フィーニスが戦士達に混じって攻撃していたのだ。遠目からでも分かる程骨がボロボロになっている。
「グルァァァァ!」
「ウラァァァ!」
俺とギューリーは咆哮して突っ込む。戦士達は俺達と入れ替わる形で後方に退避した。前衛は俺達2人に任せて休んでてくれ。
「キシャァァ!」
よく耐えたなフィーニス!ありがとうな。お前も休んでろ。
「クルシャァ・・・」
フィーニスは翼を広げて崖の上に飛んで行った。後で労わってやらないとな。
俺は目の前の敵へと目を向ける。ドロっとした墨汁の様な姿だ。それにだいぶ前に戦った最古の死者の眷属と同じ気配がする。
種族 スライム・イミテイト (深種)
名前 無し
level40/80
HP1540
MP1750
攻撃力680
防御力820
魔攻450
魔防560
素早さ100
ランクB+
スキル
酸弾level5 酸生成level5 部位硬化level5 噛みつくlevel5 ブレスlevel5 竜の爪level5 剣術level3 戦斧術level3 剣技術level3 戦斧技術level3 水魔法level5 火魔法level5 深淵干渉level5 深淵感知level5 魔力感知level5 魔力操作level5 熱感知level5 HP自動回復level5 MP自動回復level5 自己再生level5 再生level9 毒牙level3 麻痺牙level3
固有スキル
異能喰らいlevel5 粘液level5 超擬態level5 分裂level1
耐性
深淵耐性level3 -聖属性耐性level5 闇耐性level6 物理耐性level6
称号
悪魔殺し竜殺し 深種 魔物の殺戮者 蝕む者
やっぱり深淵関係のやつか。それにしてもスキルがバラバラだな。てか待てよ・・・こいつ異能喰らい持ってやがる!俺以外で持ってるやつ初めて見たぞ!しかも俺のよりレベルが高い。
俺がどうやって倒そうか悩んでいるとメキメキと目の前のスライムの体が変形していく。ドロドロと溶けて形を作っていく。
「ブラガラァァ!」
俺は目を疑った。さっきまで目の前に居たスライムが洞穴にやって来た白黒の虎に姿を変えていたのだ。
『こいつは厄介な相手になりそうだ』
ああ、お前の言う通りだ。接近させるなよ。何に変化するか分からねぇからな。接近戦はできるだけ俺が担当する。
「ブラガラァ!」
「グラァァ!」
スライムと竜の咆哮が渓谷に木霊する。ビリビリと大気を揺るがす程の咆哮と同時にお互いの攻撃が始まった。
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