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終焉の龍の卵  作者: レッドヴォルト
テロニ族編
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エフィモアからのプレゼント

しばらくしてエフィガルドが大量の食べ物を持って来た。食べ物は主に肉だった。まあこの環境だ。農業をするにはやはり不向きなのだろう。


「待たせてすまなかった。食事の用意が出来たぞ。まあ遅れた理由はこいつらなんだがな」


「来ちゃった!」


「ドラゴンさん・・・ごめんなさい」


そこには尻尾をブンブンと振って目を輝かせているアルセンとションボリとしているエフィモアが居た。


「村のみんな説得できなかった・・・」


エフィモアは今にも泣き出しそうだ。責任感の強い子だ。俺はゆっくりと怖がらせないように頭を撫でる。


「ドラゴンさん・・・」


エフィモアはよくやったよ。気に病むことはない。ありがとうね。


さっきまで泣きそうだった顔が笑顔に変わる。


せっかく食事も持って来て貰ったしみんなで食べるか。良かったら皆さんも食べませんか?みんなで食べた方が美味しいですし。


「ご一緒させていただこう。おいお前達もどうだ?」


「わ、我々は見張りの任がありますので」


1人が強張った顔で言う。


「見張りなら一緒に食いながらの方が良いだろ?な?」


「ここはエフィガルドさんに従うしかねぇな・・・」


恐らく扉の前に居たあの2人組だろう。エフィガルドに言い包められて渋々と床に座る。まあドンマイ。


俺達は7人で目の前の食事を囲む。串焼きに魚の開き等の香ばしい匂いが俺の食欲を刺激する。そして俺の食欲を一番刺激しているのは目の前にある巨大なイノシシの丸焼きだ。香辛料が塗されており美味そうだ。


俺は目の前の丸焼きに齧りつく。肉汁がドバドバと口の中に流れ込み香辛料の匂いが俺の鼻孔を突き抜ける。ここに来てやっとまともな食事にありつけた。止めることができず俺はガツガツと丸焼きを貪り食べる。


『これ美味えな!』


ギューリーも隣で串焼きと魚の開きをガツガツと貪り食っている。この世界に生まれて初めてのまともな食事に俺達は舌鼓を打った。




食事を終える頃にはだいぶ警戒心は解けていた。みんなでガヤガヤと話しながら食事をするのは本当に久しぶりで楽しかった。


「そんで恩人さん達は何故この雪山に来たんだ?」


俺達はまあ理由があって死界へ向かってるんだ。


「死界にか!?そりゃ大変そうだ。何度か俺達も足を運んだが、あそこは正に魔境だ」


彼等は死界に何回か行ったそうだ。有力な情報を持っているかもしれない。出来れば死界に行った時の話を聞かせてくれないか?


俺が頼むと彼等は清く了承してくれた。


「ああ、良いだろう。まずはどんな場所かについてだ」


「死界は知っての通り十王達が支配している場所だ。太古から負け知らずの彼等の力は人智を超えている。住んでいる魔物も始祖種や古代種の原始に生きていた怪物揃いだ。だが魔物よりも恐ろしいのが環境だ」


魔物より環境の方がヤバいのか?


「ああ、魔物相手なら逃げたらどうにかなるが、環境からは逃げきれない。そのせいで多くの仲間が死んで行った」


「あそこはもう行きたくねぇ・・・」


「嗚呼・・・俺もだ」


見張りの2人がガクガクと震え出す。そんなにヤバい場所なのか。今から行くのが怖くなって来た。


「俺達が行けたのは蟲蔓延る病の谷、天穿つ霊峰と永遠の苦痛の沼沢までだ」


「蟲蔓延る病の谷は大量の蟲が蔓延っている。そして名前の通り道中で様々な感染症や病に罹る恐ろしい谷だ。病に罹った奴は殆ど助からなかった。治療法も確立されてない未知の病だ」


未知の病か。罹患したら助からなさそうだ。蟲も気をつけないといけないが、体調にはもっと気をつけないといけなさそうだ。


「そして天穿つ霊峰と永遠の苦痛の沼沢は谷よりも危険だ。霊峰は暴風が吹き荒れて空から()()()()()()()


山が降ってくる?何かの比喩表現か?


「いやそのままの意味だ。霊峰の頂上で吹き荒れている暴風が山を削って落ちてくるんだ。まあそこまでポンポンと降ってくる訳ではないがな」


それでも山が降ってくる環境ってどんな環境なんだよ。


「霊峰を超えた先にある永遠の苦痛の沼沢ここは触れるだけで激痛が走る沼沢が広がっている。毒沼に触れると激痛が走る。長い間触れていたらその痛みは永遠に治らないと言われている」


永遠に治らない痛みを与える毒沼か。恐ろしい場所だな。


エフィガルド達が知っているのはそこまでだそうだ。なんでも実力のある奴でも行けて毒沼までらしい。それ以上先となるとAランク冒険者以上の実力が必要らしい。確かイヴァナ山脈で戦ったガイル・ブラウンがBランク冒険者だったよな。Bランクであの実力ならAランク冒険者はかなりの実力を持ち合わせてるだろう。でも実力があると言っても人間だ。竜の俺が行けないなんてことはないだろう。




何度か話した後、2人組は誰かに呼ばれたので帰ることになった。かなり警戒心を緩和することが出来た・・・と思う。ギューリーとアルセンは満腹になったからか俺に凭れ掛かり眠っている。


「あの・・・ドラゴンさん」


どうした?眠たいなら寝て良いぞ?


「眠たいけどそうじゃないの。渡したい物があるの」


エフィモアがポケットから何かを取り出した。拳程の大きさの青色の石を取り出した。石からは微かに魔力が流れているのを感じる。何故だろうか。石なのに俺の食欲を刺激してくる。いや食欲ではないな。力への渇望を刺激してくる。まるで石が、渇いた喉を潤すための水の様に見えた。


「これ私とアルセンが集めた魔石。集めた中でも一番強力なやつ。魔物って魔石を食べて力を取り込むんでしょ?」


え?そうなの?てか魔石なんて初めて見たぞ。


『今さら知ったのかよ。バリボリ魔石ずっと食ってたじゃねぇか』


何か偶に食ってる時に硬い物あるなって思ってたけどあれ魔石だったのかよ。


『魔石を食っても普通は少ししか力を得れないんだよ。まあお前は異能喰らいがあるからな体の一部食っただけで力を得れるんだよ。まあ魔石の方が効率は良いがな』


異能喰らいって本当に便利なスキルなんだなと改めて実感した。


俺はエフィモアから魔石を受け取り口の中に放り込む。ボリボリと味わいながら食べる。かなり味を薄くした飴のようだった。


(スキル、斬撃波level1を入手しました)


新たなスキル、斬撃波を入手することができた。名前の通り斬撃を飛ばして攻撃できるらしい。


「どう?美味しかった?」


ああ、美味しかったよ。ありがとうね。


俺が頭を撫でると頬を赤らめてニカっと子供らしく笑った。


エフィモアはその後直ぐに目を擦り俺に凭れ掛かって寝息を上げ始めた。俺も腹いっぱいになって眠くなって来た。幸いここは安全だ。久しぶりに朝までぐっすりと眠るとしよう。

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