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終焉の龍の卵  作者: レッドヴォルト
テロニ族編
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雪山の民

村はお通夜ムードだった。門の外でも分かるほどどんよりとした空気が漂ってきている。


そりゃそうだ。魔物に村を襲われて逃げて来たら近くで爆音がして強大な力を持つ者が現れたんだから。それに竜とドラゴンニュートが村の外に居るとなったらそりゃ不安になるよな。


俺とギューリーは今村の外に居る。村の門前でエフィモアとアルセンが、1人の老人と口論している。


「だから!私達を助けてくれたのはこのドラゴンさん達だって!」


「ドラゴンさん達は無害なんです!」


「むぅ・・・にわかには信られんな。人助けをする黒竜なんて聞いたことも見たことも無い。それに幾ら理性があるとしても竜を村に入れるなど・・・」


老人がエフィモア達を訝しむように言った。


俺もそんなこと言われたら信じられん。村は今不安定な時期だ。族長としてはこれ以上村人を不安にさせることはしたくないのだろう。こりゃ村には入れそうにないな。


「待てよ族長。流石に娘と娘の友達の命の恩人にその仕打ちはないんじゃねぇか?」


村の方から1人の男が歩いて来た。軽装の鎧と体に見合わない巨大なハルバードを握っている。エフィモア達同様に尻尾と獣の耳が生えている。


「しかし・・・幾ら恩人と言っても村に入れることは」


「あー!分かったよ!なら外にある祠なら良いか?俺も行くからよ。それなら問題ないだろ」


「しかしあの祠は・・・うむ背に腹は代えられん。お前が見張っとくのだぞ」


「戦神ゲイルーグの名に誓ってこのエフィガルド役目を果たそう。恩人さん村の外ですまないが、休める場所は確保出来たぜ。まあ監視付きだが我慢してくれ」


監視付きでもありがたい。使わせていただくよ。


『感謝する』


「エフィモアから聞いていたが本当に2人とも喋れるんだな」


そんなに喋れる魔物って珍しいのか?


「人型以外の魔物で言葉を喋れるのはほんのごく一部だ。珍しいどころじゃないぞ」


確かに言われてみれば今まで会った魔物で喋ってた奴はごく一部だった。俺は特異で珍しい存在と言うことだ。


村の外の雪道を歩いて数分。俺達は倉庫みたいな場所に案内された。扉の前に武装した獣人が2人居た。2人とも俺を見てかなり動揺している。


「族長から許可は出ている。恩人達はここで休むことになった」


「わ、分かりました」


倉庫みたいと言っても俺が入ってもかなり余裕があるほどだ。中は石床と石壁の無骨なデザインだ。だが無骨なデザインの部屋の奥に一際目立つ像がある。


「恩人さん達あの像には触れないでくれよ?それ以外なら何しても良いからよ」


分かった。気になるんだがあの像は何なんだ?


「あれは俺達テロニ族が信仰している戦神ゲイルーグ様の像だ。かつて我々を救ってくださった偉大なる神だ」


神の像か。うん?てか待てよテロニ族?今テロニ族って言ったか?


「ああ、俺達は雪山の民テロニ族だが・・・」


レアランが言っていた危険な部族じゃないのか。


俺とギューリーは身構える。だが目の前の獣人の男、エフィガルドは全く動揺せずにこっちを見つめてくる。


「恩人さん達安心してくれ俺達は危険じゃない。それは誤解だ」


エフィガルドはため息を吐いて語り出した。


「俺達テロニ族は友好的な部族だ。この雪山で動けなくなった者は助け村で看病するし近くの人里に交易もしに行く。多分だが恩人さんが聞いたのは数十年前の前族長の頃の情報だろうな」


『うーむまあ敵意はないしな・・・オメガここは彼等を信じるしかなさそうだ』


レアランは大精霊だ。あそこから何百年も動いてなくても不思議ではない。恐らくだがレアランの情報はかなり古い情報なんだろう。


「分かってくれたか。誤解も解けたそうだし改めて礼を言わせて貰おう。俺の娘、エフィモアと娘の友達のアルセンを助けてくれて感謝する。俺に出来ることなら何でも協力しよう」


エフィガルドが胡座の姿勢で深く頭を下げ礼を言う。


まあ当たり前のことをしただけだ。気にしないでくれ。


「本当に感謝する。ところで腹は減ってないか?」


『腹減った!』


ギューリーが食いつく様に答える。まあアイスイールを食ってかなり時間も経ってるし仕方ないな。


「簡単な食事で良ければ用意しよう」


それじゃお願いしようかな。俺も腹減ったし。


「分かった。少し待っといてくれ」


エフィガルドが祠の外へ早足で出て行く。まあ俺の巨体だ。満腹にするならかなりの量が必要になりそうだが、大丈夫かな?


エフィガルドが去り部屋の中に静寂だけが残る。だがその静寂は直ぐに破られた。


『なあオメガ気になるんだが、お前何と戦っていたんだ』


ギューリーが真剣な顔をして聞いて来た。さっきまでの食欲に支配されていたかの様な顔が嘘の様だ。


少し強い程度の魔物だよ。心配することない。大丈夫だ。お前が気にすることない。


『嘘をつかないでくれよ。あの気配は少し強い程度じゃないだろ。圧倒的格上の気配だった。なあ隠さずに教えてくれ。俺はそんなに頼りないか?』


あんまり不安にさせたくなかったから隠しておこうと考えていたが、やはり言っておくべきだろうか。


分かった。教えるよ。臆したから迷宮に戻るとかなしだぞ。


『地獄まで付き添ってやるよ相棒。覚悟は出来ている』


ギューリーの覚悟は十分なようだ。


俺が戦ったのは最古の龍狩りだ。お前も砂漠の遺跡で名前だけは見ただろう。


『ハハハ・・・マジかよ。伝説と戦ってよく生きて帰ってこれたな』


向こうの目的が殺すことではなく小手調だったらしいからな。運が良かっただけだ。それにあれは戦いなんてものじゃない。お遊びにもなってなかっただろうな。


『・・・強くならないとな』


・・・だな。お前の言う通りもっと強くならないとな。あの龍狩りに一泡吹かせるレベルまで上り詰めるぞ。

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