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終焉の龍の卵  作者: レッドヴォルト
黒竜編
58/101

最後は父らしく

「おや?彼の者の資格を持ってる者が居ますね・・・これは主への良い手土産になりますね」


「・・・ここから先は通さない」


「生きて帰れると思うなぁよ?」


「此処がお前の墓場だ」


俺達3人は武器を構える。だが全員足が震えている。全員内心分かっているのだ。この化け物、悪魔には絶対に勝てないと。だが戦うしかない。


「・・・お前の目的は何だ」


「私の目的ですか・・・ふむそうですねぇ。此処に来たのは材料集めとそこのリザードマンの回収ですかね」


山羊頭の悪魔は細い指で俺を指差した。指を差された瞬間、背筋が凍る様な感覚に俺は支配された。殺意を向けられていないのに奥歯がガチガチと震えている。


「・・・材料集め?ギューリーの回収?」


「アンデットの材料集めですね。まあ貴方達には死んで貰わないといけないので抵抗せずに死んでくださいね?傷がつくと質が下がるので」


奴の背後から魔物が迫って来ている。スケルトンソルジャーが俺達に攻撃しようとするが後方からの弓隊の援護によりバッタバッタと倒れていく。


「ふむ・・・まだこんなに居るのですね。おお!上位種まで居るじゃないですか!」


俺達の後ろには近衛警備隊に幹部、そして俺の父親である族長が立っていた。


「すまぬ魔物の量が多くてな・・・貴様誰の命令でここに来た?差し詰めヘルグレト・リッツの差し金か?」


「ほう主と面識があるのですね。まあ材料となり死ぬ貴方達には関係ない話です」


「奴め動きよったか・・・まあ貴様は奴と関係なく殺す覚悟しろ」


幹部と近衛警備隊が槍を構える。全員1人でギガントファング等と殺りあえる強者だ。幹部に至ってはスモールヒュドラとも戦える怪物。そして族長はその上を行く。1人でリッチと戦い勝った正真正銘の化け物だ。


「行くぞ!」


「うぉぉぉ!」


「うぉぁぁぁ!」


「ギャァァ!」


「ウグァァ!」


奴の後ろから魔物が続々と雪崩てくる。

まるで魔物の波のようだ。だが流石上位種だ。魔物に一切怯まず魔物の血の雨を降らしている。バッタバッタと魔物は倒れるが、こちらは誰も怪我もせず仕留めている。


「ふむ流石上位種ですね・・・まあ在庫処分ですよ行きなさい」


奴の背後に2つの魔法陣が浮かびそこから禍々しい何かが出てくる。現れたのは巨大な獅子だ。

だが獅子の頭の隣から山羊の頭と肩から翼が生えており尻尾は蛇だ。

過去にあの魔物は一度だけ見たことある。俺が小さい頃に隣の村を、壊滅まで追い込んだキマイラと言う魔物だ。この村に来たキマイラを親父が、討伐したのを見たきりだ。


もう一体はムキムキのデカい猿だ。それしか分からんが凄まじい筋肉だ。腕の筋肉は丸太ほどあるんじゃないかと言うほど太い。あの腕で殴られたら即死するだろう。


「ウグァァ!」


「ウホ?ホァォ!」


2匹の魔物は雑魚と共にこっちに向かって来た。だが進行上に居る他の魔物を噛み千切りながら粉々に粉砕しながら向かって来る。


「ぐわぁぁ!」


「うぎゃぁぁ!」


2人の近衛警備隊が跳ね飛ばされた。跳ね飛ばされた2人に魔物が群がる。奴らは真っ直ぐ俺達の方に向かって来る。


「アクアブレイク!」


水の衝撃波が直撃するがビクともしない。キマイラの牙がロンの首を貫こうとしたが、サルボの槍が牙を防ぐ。


「バルニカ流、牙割り!」


「ウグォ!?」


キマイラの牙がサルボの槍の柄から繰り出された一撃により砕けた。


「メェェ!」


「うぐっ!?」


だがキマイラの頭は3つある。山羊の頭が頭突きして尻尾の蛇が噛みついた。俺は即座にカバーしに走ろうとするが、目の前に猿野郎が立ち塞がる。親父達ははあの化け物と交戦しているから援護は望めない。この猿野郎は俺だけで片付けるしかない。


「ギューリー!こっちは大丈夫!そっちを頼んだ!」


「おうよ!任せろ!」


「ウホホ!」


まるで猿野郎は新しい玩具を、見つけたかのようにニヤケている。


「水平斬!」


俺の剣が奴の皮膚を切り裂くが全く効いていない。それどころか筋肉のせいで刃こぼれしかけている。まるで鋼のような筋肉だなこの猿野郎!


ブォン!と風を切る音と共に剛腕が振るわれる。速すぎて目で追えないが俺も野生で生きている。気合いで何とか避け続ける。大振りなお陰で反撃する余裕はある。だが奴の剛腕を盾で防いだ瞬間だった。盾が凹んで俺は数メートル吹き飛んだ。ジーンとした深い痛みが盾越しに来る。直撃していたら腕を持っていかれてただろう。


「ウホホォォ!」


ブンブンと剛腕が振るわれる。さっきよりスピードが速い。さっきまではお遊びだったてことか!舐めやがってこの野郎!最初から全力で来なかったことを後悔させてやるよ!


「貰ったぁぁ!」


「ウホァ!?」


速さが仇となったな馬鹿め!これで片手は使えねぇなぁ!


俺は奴の凄まじい速度で迫ってくる剛腕を縦に切り裂いた。奴のスピードを利用してやった。拳が割れて血が吹き出た。そして追い打ちで奴の腹に水平斬を何回も放つ。


「ホワァァ!?」


俺は奴の腹に潜り込み喉に剣を突きさしてそのまま押し倒した。真っ赤な血が俺の視界を覆い尽くす。


「俺の勝ちだ・・・ハァハァ猿野郎」


「こっちも勝ったよぉ!」


サルボ達の方を見ると山羊と獅子の頭に槍が突き刺さっていた。俺達3人で格上に勝てたのだ。早く親父達に合流しなければ。


だがその時だった。世界が一瞬暗くなった。そして次の瞬間、地面が割れて家が倒壊して魔物と他のリザードマン達が浮いていた。俺達も浮いており何が起きたのか分からなかった。痛みなどもない。体に異常もない。


「うげぇ!?」


何が起きたのかさっぱり分からない。俺は立ち上がり親父達の方を、向いた。そこには膝を突いた親父しか居なかった。辺りが血の海になっている。魔物も他の警備隊も見えない。だが周りが血の海になってることよりも辛い事実が俺を襲った。


「お、おい・・・嘘だろ?なぁ嘘だと言えよ!おい!」


サルボとロンが隣でぐしゃぐしゃに潰れていた。臓物が、破裂して激臭が辺りに広がっている。俺の喉の奥から友を失った悲しみと死臭のせいで吐き気が込み上げてくる。


「う、うげぇぇぇ」


吐いてしまった。吐いて分かった。何度も嗅いだ死臭のせいではない。友を失った悲しみのせいで吐いてしまった。無力に生き残った自分への怒りだけが俺の中に残った。


「深淵魔法、深淵王の瞳ですよ。まさかここまでの威力とは・・・おっと危ない」


槍が音を置き去りにする程の速さで振るわれる。


「貴様如きに我が息子はやらん!この腐れ外道がぁぁ!」


「死に損ないが!潰してあげますよぉ!」


悪魔と親父が打ち合う。ボロボロな筈なのに衰えることなく斬りあっている。


「ギューリー!逃げろ!逃げてくれ!」


「嫌だ!俺は戦う!逃げるくらいならここで死んだ方がマシだ!」


「どうしても逃げぬのかぁ!チッ!」


「余所見はダメですよぉぉ!」


悪魔の短剣が親父の頬を掠る。


「うらぁぁ!」


「アハハ!」


「うぉぉぉ!」


俺は悪魔の横腹に剣を突き刺そうとした。


「小賢しい!」


「うがぁ!」


悪魔は虫を払うように腕を振るった。


俺は一瞬で数メートル吹き飛ばされた。軽く小突かれただけだ。それなのに数メートルも吹き飛ばされてしまったのだ。


「転移魔法!ヘルゲルグ!」


「まさか!貴様ァァァ!」


悪魔の怒号が耳を劈く。俺の足元に魔法陣が浮かぶ。そして転移魔法と言う言葉。嫌な予感がする。止めてくれ。俺はまだ戦える。


「おい!親父!止めてくれ!頼む!おい!」


「ギューリー!達者でな!」


「嫌だよ!親父!こんな・・・こんな別れなんか!」



「じゃあなギューリー元気でな。今まで済まなかったな最後くらい父親らしくさせてくれ」


「親父!止めてくれ!親父ぃぃぃ!」


「殺してやるぅぅ!貴様ァァァ!」


激昂した悪魔が親父の首に短剣を突き刺した瞬間、視界が真っ白になり意識を失ってしまった。


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