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終焉の龍の卵  作者: レッドヴォルト
黒竜編
57/101

ギューリーの夢の中


「あーよく寝たな」


長い夢を見ていたような気がする。とても濃くて大変な夢だったが思い出せない。


俺は家の中から水が流れる音と共に起きた。湿地の泥臭い臭いが、俺の意識を覚醒させる。俺は壁に立て掛けていた剣を取り外に出る。まだ太陽が昇り始めた時間帯だ。


俺は日課の素振りを行う。毎日100回はしている。素振りの基礎練習を終えたら剣技術の型の確認だ。俺は一番オーソドックスと言わている剣神ヴェルナカ流の型を練習している。攻防バランスが良く汎用の効く型だ。


型の練習を終えた頃には日が昇り始めていた。俺は家に戻り干していた魚を食べる。


朝食を終えると今度は盾と剣を持って外に出る。しばらく歩くと村の若い男3人が、いつもの場所に集まっていた。


「時間ぴったりに来たなギューリー」


「おうみんな揃ってたか」


「最近魔物も多いしあまり戦いたくないねぇ」


そう最近魔物の出現が増えていて俺達討伐隊は大忙しなのだ。魔物スタンピードの前兆なのかと村の大人達は話している。


「まあ少しくらい強い魔物が出ても良いと思うがな」


「・・・無駄口叩かないで早く行く」


俺達4人組は、討伐隊だ。村に寄ってくる魔物を討伐をするのが仕事だ。他にも片手間に食料を集めたりする。


「それにしてもお前だけ剣なのってやっぱおかしいよな」


「そうか?」


「ガールドの言う通りだねぇ」


「槍なら剣よりも長いリーチで戦えるぞ」


「・・・魚も取れるし木の実も取れる・・・何故ギューリーは剣で戦うの?」


全員が俺が剣で戦うことに疑問を抱いているようだ。良い機会だ教えやろう。


「ガールドもロンもサルボも知らないようだな!俺が槍で戦わない理由をよ!」


「・・・勘違い?」


「何か理由があんのか?」


「それはズバリ!」


一同がギューリーをじっと見つめる。だがギューリーが放った一言に全員違った反応を示した。


「俺に槍で戦う才能が全く無いからだ!」


「・・・」


「ガハハ!あー!腹痛てぇ!」


「なーんだもっと特別な理由があると思った」


ある者は呆れた顔をある者は大笑いしある者は興味を失った。


「う、うるせぇ!槍は苦手なんだよ!それに剣の方が懐に潜り込んだ時に動きやすいだろう!」


「バーカ!ここら辺にそんなデカい魔物なんて現れねぇよ!」


「・・・今まで相手した中で1番大きいのでレッサーワイバーン・・・そんな大きな魔物はここら辺には居ない」


「まあまあギューリーの言うことも分かるよぉーさぁそろそろお喋り止めて行かないと族長に怒られるよ」


「今に見てろよ!絶対ヤバい魔物が現れるからな!」


俺達は軽口を叩き合いながら湿地へ向かった。


湿地は今日も変わらず鬱蒼と植物が生い茂り霧が立ち上っている。村の周りを4人で徘徊しながら異常がないか確認する。


「動くな・・・居るぞ」


リーダー格のガールドが声を掛ける。俺達は散開して息を潜める。


「フグォォ」


「ホグロトドスだねぇ」


ホグロトドスは中型の草食竜だ。大人しく湿地の水の中の藻を食べて生きている。尻尾はハンマーの様になっていてその尻尾で外敵を追い払うのだ。まあ無闇に攻撃しない限り敵対はしないだろう。


「フグォ、フグォォォ」


「のわー!?」


ドシンと水の中から上がってきたホグロトドスが倒れた。よく見ると全身に噛まれた傷、剣で斬られた傷等の様々な傷がある。


「フグォォ」


ホグロトドスは口から血を吐くとその場で息絶えた。ホグロトドスを、この湿地で襲う魔物は少ない。大抵の魔物はあの尻尾で即死させられるからだ。


「・・・ギガントファングが現れた?」


「いやそんな筈はない。どう見てもギガントファングが噛んだ跡ではないしな・・・それならこの斬られた傷はなんだ?」


各々がホグロトドスの死体を観察する。自分も確認するが不可解な部分が多い。


「・・・まさか知能の低い魔物同士が協力して狩った?」


「おいおい・・・これワーム系の噛み跡じゃねぇか」


ワーム系の魔物は目に映るもの全て食らおうとする獰猛性を持つ。他の魔物と連携して獲物を狩るのは不可能だ。


「嫌な予感がするねぇ」


「一応警戒しとけ」


「・・・!?ヤバい!」


サルボの一声と同時に俺達は気づいた。辺り一面を魔物に囲まれていることを。ワームにゴブリン、スケルトンソルジャー、スワンプドラゴン、レッサーワイバーンの多くの魔物が俺達を囲っていた。どいつも獰猛で他種族を餌としてしか見てない魔物だ。鉢合わせただけで、お互い争い始める筈だ。それなのにこいつらは連携して俺達を逃さない様に行く手を阻んでいやがる。


「この数の魔物が村に雪崩れ込んだら・・・」


「確実に滅ぶ!」


「此処で全部倒すしかないねぇ」


「闇雲に戦っても壊滅する!各個撃破していくぞ!」


「待てギューリー!」


走り出した俺を、ガールドが静止した。


「お前達3人で村に戻れ」


「ガールド!?何言ってんだ!4人でなら切り抜けれる!一緒に戦うぞ!」


「・・・1人で戦っても勝てない」


「そうだよぉ!みんなで戦おう!」


この量の魔物を1人で倒すなんて無茶だと各々が彼に言う。しかし彼は震えながら俺達に言った。


「・・・馬鹿野郎!この量じゃどっちにしろ全滅する!お前らは村に魔物が迫っていることを知らせに行け!今なら間に合う!もし戦ってたとしてもお前達が居るか居ないかだと居た方が良い!早く行けぇ!」


いつもの威勢の良い彼の声は震えていた。


俺達の返事を待たずガールドは、魔物の群れに突っ込んで行った。魔物達がガールドの方に向かって行く。


俺達もこれくらい分かる。ここで戦っても仲良く全滅だろう。今の俺達に出来ることは村に戻って非戦闘員を避難させることだ。


「ガールド死んじゃうよ」


「・・・ガールドを信じるしかない」


「ああ、ガールドならきっと生きて帰って来れる!行くぞ!」


足場が悪い湿地の泥沼を俺達は走る。一刻でも村に魔物が迫っていることを知らせないといけない。ガールドが稼いでくれた時間を無駄にしてはいけない。


村に近づいて行くと村に黒い煙が立ち上っていた。嫌な予感がする。


村に急いで入ると倉庫や家が燃えていた。そして村に居た警備隊が戦闘している。幸いまだ死人は出ていない。


「加勢するぞ!」


ワームが警備隊の1人に齧りつこうと無謀な大口にサルボが槍を突き刺す。汚い断末魔と共にワームは弾け飛んだ。


「ウォーターソード!」


水の剣がゴブリン達を紙切れの様に切り裂いて行く。


「盾穿ち!」


俺の剣がスケルトンソルジャーを盾ごとかち割った。背後からゴブリンが切り掛かってくるが、俺は円斬を放ち後ろのゴブリンを切り裂いた。


「助かった!君達のお陰でまだ死者は出ていない助かったよ。それで・・・ガールドは何処に?」


警備隊の隊長はガールドの父親だ。やはり彼のことは言うべきだろう。


「彼は・・・ガールドは俺達を逃すために・・・魔物の群れと勇敢に戦いました」


俺は目をぎゅっと閉じる。何故一緒に戦わなかった、見捨てたんだろうと糾弾される覚悟は出来ている。そう言われても仕方のないことだと思っている。だが彼は怒るのでもなく悲しむのではなく穏やかな顔で聞いてきた。


「ガールドは・・・息子は勇敢に散ったのか?」


「はい・・・彼は勇敢に・・・戦いました」


「そうか・・・戦士として散れたなら息子も本望だろう。貴方達が居なかったら息子の最期を、知ることが出来なかった。伝えてくれてありがとう」


彼は優しくでも力強く握手した。だがその時キンキンと鐘が鳴る音が村中に響いた。


「新手だ!休んでる暇はないぞ!」


俺達は門まで速やかに戻った。村の外にはスワンプドラゴンやレッサーワイバーン等の魔物が迫っていた。


「おや?こんな所に居ましたか」


「嘘だろ・・・」


「え・・・なんで」


「・・・化け物め」


穏やかな声と共に俺達の前に化け物が現れた。山羊頭の男で右手には血塗られた短剣を握っている。そしてもう片方の手には()()()()()()が握られていた。


「あ、このゴミお返しします」


化け物はそう言うとガールドの頭を地面にゴミを投げるかの様に放り投げた。


「貴様・・・貴様ァァァ!」


ガールドの父親が激昂して槍を持って走り出した。凄まじい勢いで化け物に槍が突きつけられる。何度も何度も化け物の体に槍が、突き刺さる。だが奴は微動だにせずにそれを受け止めていた。他の警備隊も魔法や槍を放ち攻撃していその時だった。


「ゼリオロス流、浮月」


何が起きたか分からなかった。警備隊とガールドの父親が浮いたと思うと真っ二つとなり血の雨が降った。


「さて次は貴方達の番ですよ?我が主の生贄となりなさい」


化け物、悪魔がこっちを見て舌舐めずりをした。


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