乱入と逃走
この魔法はゾンビやスケルトン等のアンデットを作る魔法だ。死霊魔法の基礎中の基礎だ。死体に魔力を流し込み擬似的な魂を作り死体を操る神への冒涜的な魔法。ここで重要なのは死体に魔力を流し込むことだ。俺は近くにあったワイバーンの死体5つにアンデットメイキングを掛ける。ドロドロと皮が溶けて肉が見え遂に骨まで見えた。骨は真っ黒に変色さらワイバーン達の目に青白い炎が眼球の代わりに嵌め込まれる。
「ギャラァァァ!」
「ギャギャギャ!」
(スケルトン・ワイバーンフィーニス B−)
邪炎の血族の『終焉』を冠する者によって生み出されたワイバーンのアンデット。その異質な魔力により大幅に強化されている。通常のワイバーンを上回る飛行能力とその体の強靭さを活かして突進して敵を粉砕する。
俺が死霊魔法を使ったお陰で強化されて復活した。復活してアンデットと化したワイバーン達がドラゴン・テロマホハエに突っ込んで行く。
「キシャァ!?」
そりゃ仕留めたワイバーンがアンデット化して襲って来たら驚くだろう。俺も驚く。
奴の尻から糸が放たれて4匹捕まってしまった。地面にドスンと落とされて自分達の重みによってバラバラに砕け散ってしまった。だが4体が身を呈して隙を作ってくれた。糸を回避した個体がドラゴン・テロマホハエに体当たりした。
「キシャァ!?」
奴の胴体が凹んで怯んだ隙に俺とギューリーは急接近して一撃入れる。鋭い爪が身体に食い込んだ。俺は大口を開けて食らいつこうとしたが即座に口を糸で塞がれてしまった。
「ウゴォ!?」
やっべこれめちゃくちゃ硬い!自分じゃ解けねぇ!ギューリー頼む!
『ほらよ!糸に注意しないと動きを封じられるぞ!』
「キシャァァ!キシャァ!」
周りの木々に蜘蛛の巣が張り巡らされる。そこをシャカシャカと歩く奴に向かって魔法を放つが全て避けられてしまう。だが糸は可燃性だ火魔法を放てば一瞬で燃えるだろう。そう思い火魔法を放ったその時だった。奴の口から火花が散り業火のブレスが放たれた。俺のちんけな火魔法は業火に飲み込まれた。だが奴にはブレスのスキルがあったし不思議ではない。予想はしてたがまさかこのタイミングだとはな。
俺は翼を前に羽ばたかせる。前方に強風が吹き荒れて奴のブレスが押し返される。押し返されたブレスによって糸に引火すると奴は慌てて地面に着地した。
「グォォ!」
奴が着地した瞬間、俺は着地した場所に泥沼を放つ。
「ギィァァァァ⁉︎」
泥沼に足を取られて動きが鈍くなった隙にギューリーが背後から剣を突き刺した。だが奴は直ぐ様糸を放ち泥沼から離脱した。流石の判断力だが奴は手負いだ。押したら勝てそうだな。
俺は飛んで奴に急接近する。爪を奴の頭目掛けて振り下ろそうしたが前脚を前に出されて防がれた。だが前脚はスッパリと切り落とされて地面に落ちた。
「キシャァァァ!」
だが切り落とされてない方の前脚で反撃して来たが攻撃は空を切った。俺はブレスを放ちカウンターを狙う。ブレスは奴の甲殻を焼き嫌な臭いが辺りに広がった。だがダメージはあまりないようだ。
『アクアブレイク!』
「ガァァァ!」
ギューリーがアクアブレイクを放ち俺が電撃ブレスを放つ。だが奴は俺とギューリーの合体技を食らったってのに怯んだだけだった。電撃はそこまで効かないか。
「キシィィ!」
奴がまた距離を取った。俺とギューリーは奴に向かって突進したその時だった。少し遠くから凄まじい気配が近づいてくるのを感じた。俺とギューリーは全力で退避する。退避するついでに切り落とした脚を拾っていく。凄まじい速度で巨大な何かが向かってくる。
『オメガ!絶対ダメだ!逃げるぞ!戦おうと考えるな!』
『やべぇぞ!逃げろ!逃げろ!絶対戦うなよ!』
アルファとギューリーの言う通り向かって来る奴は本気でヤバい。俺達の近くに気配を消して近づいて来た。幸い蜘蛛野郎は一切気づいていない。俺達が逃げたと思って嬉々としてこっちに向かって来ている。
奴が自慢のスピードを活かして俺達の背後まで迫って来たその時だった。鉄同士がぶつかり合った音と共に奴の体の半分が消滅した。
(経験値1000入手しました)
止めを刺した訳ではないから経験値はあまり貰えなかった。
大地が揺れて木々が倒れる。地面と木を割ってそいつは現れた。
「グオアァァァァ!」
真っ赤な返り血の様な鱗、ギラギラと真っ赤に染まった牙、そして他者を寄せ付けない巨体、圧倒的な威圧感を纏ってそいつは現れた。
『で、でけぇ!?こんなデカい奴は初めて見たぞ!?』
『おいおい!まさか此奴が居たから魔物1匹も居なかったのか?』
おい!此奴の情報をくれ!倒せないけど情報が欲しい!
(ギガノト・ドラゴンレックス S)
生きた化石であるドラゴンレックス属の始祖種に最も近い種族。個体数が非常に少なく数百年生きる。別名陸の悪魔と言われておりその巨体とエネルギーを維持する為に現れた地域の獲物を全て捕食するまで止まらない。生態系に大打撃を与えるため超危険魔物に指定されている。時には龍やヘカトンケイルをも捕食する程の化け物である。
え?Sランク?SランクってAランクの上だよね?まさかここの主のワイバーン・キング食われてないよな?食われてたら今までの努力が水の泡だぞ!?
「グオアァ」
奴はもう半分のドラゴン・テロマホハエの死体を貪り始めた。次にああなるのは俺達かもしれない。取り敢えずここは全速力で逃げさせてもらおう。
「グオアァァァァ!」
あああ!こっち来た!やべぇ逃げろ逃げろ!絶対死ぬ!あの牙に噛みつかれたら即死する!俺の何倍の大きさなんだよあのデカブツ!
ドシドシと木々を薙ぎ倒して追って来る奴に俺達は逃げることしか出来なかった。
https://twitter.com/redvolt651/status/1492078447300018176?s=21 Twitter始めました!誤字、脱字があればご報告お願いいたします。感想も頂けると嬉しいです!