石像の飛竜とギューリーの進化
体力を回復して休息して俺とギューリーはまた歩き始めた。ギューリーも気づいているはずだ。この先に凄まじい力の持ち主が居ることに。
俺達は広い部屋に出たが、今までとは違い大理石の柱や像で装飾されていた。そして部屋の真ん中に凄まじい威圧感を放っている石像があった。鎧を纏ったワイバーンに見える。
『オメガ・・・ヤバいぞこれ』
退路はいつの間にか断たれていた。俺達が通った道には壁が出来ていた。そして石像が1人でにゆっくりと動き出しこっちへ向かって来た。
「ギュラァァァ!」
『こいつは驚いた!まさかゴーレムが相手とはな!』
ギューリー曰くこいつはゴーレムらしい。動きは石像だからかかなり遅い。だがギューリーの剣や俺の爪じゃ真面なダメージを与えるのは厳しいだろう。だが俺はこんなこともあるかと思い大剣騎士の大剣を持ってきた。これなら削ったりヒビを入れることが出来るだろう。俺は大剣を構えてみるがかなり重たい。あの騎士凄かったな。よくこんな重たい物を振り回せたな。
「ガァァ!」
大剣を振りかざしたが、奴はそれを翼で防御した。ガキンと音と共に腕にジーンとした痛みが走る。その隙にギューリーも切り込んだが、奴の体を少し削っただけだった。やはり見た目通り防御力が高い。これは苦戦しそうだ。
奴が翼を振り上げて叩きつけてきた。俺はそれを大剣で防いだが、重い。やはり石でできているから攻撃がかなり重い。
「グルォォ!」
俺は何とか大剣で押しのけたが、効果がある攻撃が思いつかない。このままじゃ持久戦になって負けてしまう。
俺はダークスフィアや黒槍を放つが全然効果がない。こんな硬い奴には打撃武器が有効なのだが、生憎そんな物は持っていない。
「ギュラァァ!」
奴の足元から石の塊が飛んできた。俺はそれを大剣で斬り伏せる度に手がジーンと痺れる。俺もギューリーみたいに身軽なら躱せるんだがな。
石の塊を弾いていると奴が突進してきた。避けるには石の塊を受けないといけない。俺は避ける為にわざと石の塊を受けた。鱗が割れて血が舞う。鈍い痛みが俺の肩を走る。だがそれでもスピードを緩めず俺は走った。奴は俺が居た場所に大顎を、開けて食らいついた。だがそこには俺は居らずギューリーが、ガラ空きの奴の顎を盾でぶん殴った。普通の魔物なら脳震盪を起こして動きが鈍るだろうが、相手はゴーレムだ。生命体ではない。
「ギュァ!」
『危ねぇ!』
即座に反撃されたがそれも盾で防いだ。俺はそのまま奴の脚狙って全力で大剣を振るった。ガリガリガリと耳障りな音と共に奴の左脚に亀裂が入った。
「ギュラァ!」
奴の体勢が崩れた。俺とギューリーはその隙に何回も殴った。奴の体が割れてヒビが入る。だが数秒後、俺とギューリーは奴の体から飛び出してきた石槍によって距離を取らないといけなかった。その隙にミルミルと脚のヒビが直っていっている。だがダメージはある筈だ。
「グルォォ!」
「ギィラァァァ!」
「ウルァァァァ!」
3体の咆哮が木霊する。牙と爪と剣の乱舞を受けても欠けるだけだ。今のままじゃ勝てない。
『オメガ!下がれ!』
突如、ギューリーが飛び出して奴の口に盾を突っ込んだ。
『ゴーレムは核さえ壊せば倒れる!核は口の中だ!ぶっ放せ!』
そんな事したらお前も死ぬぞ!
『俺を信じろ!お前は・・・俺を信じろ!』
分かった!俺はお前を信じる!だから死ぬなよ!
俺は大剣を構えて突っ込む。ギューリーごと貫く勢いで奴の口目掛けて突き刺した。ギューリーは器用に大剣の鍔に手を掛けて飛んで避けた。ガキンと何かが割れる音と共にゴーレムの絶叫が聞こえた。
「ギュラァァァ!」
(経験値720入手しました)
勝てた。だが今回はギューリーのお陰だ。もしギューリーが核の場所を教えてくれなかったら負けていた。もしギューリーが隙を作ってくれなかったら負けていた。感謝しても感謝しきれない。
『ふう・・・よしこれで俺は進化できる』
進化できるのか?
『ああ、感謝してるよありがとうな。2人で絶対に生きて帰ろうぜ?』
勿論だ。もう進化するのか?
『そうだ。少し目を瞑っていてくれ』
俺はギューリーに言われた通りに目を瞑る。
『いいぞ』
目を開けるとそこには一回りデカくなったギューリーが居た。鱗にオレンジ色も混ざっていて綺麗だ。そして驚くことに翼が生えている。
(リザードマン・ドラゴンニュート D)
リザードマンの中でも戦闘に秀で龍を目指した強力な個体が、進化する種族。剣や盾は並大抵の騎士より上手く扱える。ブレスを吐いたり翼で飛び敵を蹂躙する。だが個体数も少なく近縁種の竜人と歪みあっている。
ギューリーはリザードマンドラゴンニュートに進化したらしい。かなり強くなったな。俺も負けていられないな。
『オメガ!やったぞ!ドラゴンニュートになれた!』
ギューリーは子供みたいに飛んで喜んでる。いいな・・・俺も早く飛びたい。
喜んでるとカツカツと何かが歩いて来る音が聞こえた。そして俺とギューリーは音が鳴る方を睨んだ。
「おやおや・・・まだ倒れていなかったのですか」
山羊頭野郎!
『よくそんな姿で現れたな!勝てる算段でもあるのか?』
ギューリーの言う通りいきなり現れた悪魔は片方の角が折れて服はボロボロで左腕は折れている。はっきり言うと俺たちでも勝てそうだ。
「私はただの時間稼ぎですよ。貴方達を彼等に渡す訳にはいかないのですよ」
そう言うと悪魔は無事な右腕で短剣を構えた。
プロローグの次に用語集を投稿する予定です