山羊頭の男
「ゴァァァ!」
まずは情報が欲しい。何でもいいから!
(最古の死者の眷属 D−)
最古の死者の呪塊によって変わり果てた者の末路。光属性に弱く闇属性に強い。呪塊により生への執着と憎しみで動いてる。深淵にアクセスして深淵が存在する場所なら移動したり攻撃できる。
光属性の攻撃なんて持ってねぇ!それに深淵って何だよ!こんなの敵うわけねえじゃねぇか!
俺は死角から飛んでくる腕を避けながら考える。どうやったらギューリーを助けれる?どうやったら生き残れる?考えるんだ。こいつを倒す方法を!
「ゴァ!」
「ギャシャァァ!」
「グォォ!」
タイホウトカゲまで起き上がりやがった!もう寝とけよ!もう胴体が半分に割れかけてるぞ!
俺はタイホウトカゲの爪を避けてカウンターを入れる。だがその隙を突かれて背中に激痛が走った。
「グァァァ!」
「ゴァァ」
目はないが奴が、ニヤリと笑ってるように見えた。背中を思いっきり抉らてしまった。ヤバい意識が飛ぶ・・・いや馬鹿野郎!こんなところで死ぬかぁぁ!
俺は再生を一気に使い背中の傷を回復する。背中の激痛を上回る痛みが、俺の体に走る。痛みのお陰で気絶しそうだったが、何とか持ち直した。
「グラァァ!」
「ゴギャァ!?」
俺はキメラ野郎に向かって爪を振り下ろした。奴も反撃されるとは思っていなかったらしく回避の体勢に入った。だが俺は片手で奴の背中に生えている腕を握りしめてへし折ってもぎ取った。
「ゴォァァァ!」
キメラ野郎の悲鳴を聞きながらもう1つの腕を爪で切り裂いた。だが奴も反撃してきやがった。残っている腕で俺を思いっきりぶん殴ってきた。
「グァ!」
数メートル吹き飛ばされたがさっきの攻撃よりマシだ。だが奴は背中の腕2本を無くした。これでかなり楽になるだろう。まあ2本奪えるとは思わなかった。1本あれば充分だ!
俺はもぎ取った腕に食らいついた。ハッキリ言うと食べたくない。見た目は人の腕だし・・・でも勝てるかもしれない最後のチャンスだ。
(スキル、深淵干渉level1を入手しました。称号、深淵を喰らう者を入手しました。スキル、深淵喰らいlevel1を入手しました。深淵にアクセス中・・・アクセス完了。黒竜種から深黒竜種へ変異しました)
いつから殺してから食わないとスキルを入手できないと言った?最悪、四肢をもいで食べても構わないのだよ。この異能喰らいの力は意識して食らった物のスキルを、入手出来ることだ。まあ鱗とか皮膚を食らうだけじゃ無理だけどな。
体の構造が変わって行くのが分かる。進化みたいに眠くはならない。さっきアナウンスで黒竜種から深黒竜種に変異したって言ってたし・・・その影響か?
感覚は研ぎ澄まされて視界に影とは違う黒いモヤが、見えるようになった。深黒竜の本能なのだろう。これが深淵か・・・あのキメラ野郎の足元にも見える。
「ゴォォォォ!」
奴が地面の深淵に潜り込んだ。だが深淵干渉を入手した今の俺なら何処から出てくるか・・・分かる!
「グォォ!」
「ゴホォォ!?」
奴が出てくるだろう深淵に俺は拳を振りかざした。思っていた通り奴の顔面に拳が、めり込んだ。それに向こうだけが深淵に干渉出来るわけじゃない。
俺は奴が下がろうとした深淵に腕を突っ込んで引き抜いた。こうなればこっちの勝ちだこの野郎!深淵からの攻撃が強いだけでこいつ自体の戦闘能力は低い!
「ゴォァァァ!」
「グォォ!」
引き抜いた奴の腕を押し退けて一気に接近した。流石に体格差のお陰で抑え込むのに成功した。だが油断してはいけない。まだこいつがどんな隠し玉を持ってるか分からないからな。
「ゴォォォォ!」
深淵から腕が飛んでくるが、逆に口を開けて噛みちぎってやった。奴もまた食われるとは、思っていなかったらしく俺の腕の中でのたうち回っている。これでも喰らいやがれ!
俺は奴の口を、無理矢理開けてブレスを流し込んだ。
「!!?!?!!!!」
声にもならない悲鳴と共に奴の体が炭になっていくのが分かる。
(経験値680入手しました。levelが9に上がりました。称号、深淵殺しを入手しました)
ギューリーは・・・大丈夫か?生きてるよな?
『馬鹿野郎・・・俺ガあんナノに負けル訳ナイだろ』
よかった・・・生きてた・・・でもお前一撃でダウンしてたじゃんか。
『ウルセェ!』
辺りに強い気配もない。タイホウトカゲも倒れている。これで終わった・・・のか?キメラ野郎も倒した。ゴブリンはドロドロになって消えた。やはりキメラ野郎が原因だったのか?
「おやおや・・・眷属まで倒せる程力を得ていたとはね」
『何者ダ!?貴様は!?』
急に目の前に山羊の顔の男が現れた。本能的にこの男はヤバい。絶対に勝てない。キメラ野郎が赤子に思える程の気配を纏っている。隣に居るギューリーも分かっているのか剣を抜こうとしている。
「まあ計画に問題はないですね。取り敢えず・・・君達には寝てもらいます」
瞬きをした瞬間だった。次の瞬間、俺とギューリーは地面に倒れていた。体に声にもならない激痛が走り俺の意識は途絶えた。