異形
「せっかくオオトカゲまで追加して用意したのに・・・この数を2匹でよく捌けましたね」
魔物の死体が散乱する中に黒いローブを着た男が、ポツンと呟いた。だが顔は人間ではなく山羊の顔であった。まるで悪魔のようである。
「資源はリサイクルしないとダメですからねー勿体ない勿体ない」
男が懐から赤黒い液体が入っている瓶を、取り出して死骸に振りかけた。赤黒い液体は死骸に染み込んでいきビクンと痙攣したと思ったら死骸が立ち上がった。
「ギャシャァァ!」
「ギィィ!」
「ギャギャァ!」
「ふむ・・・主から渡されたから使ってみましたが・・・恐ろしいですね本当に恐ろしい。最古の死者の呪塊・・・欠片でこれ程のアンデットを作るとは・・・さあ行きなさいアンデット共よ!奴らを捕らえるのです!」
「ギャシャァァ!」
アンデット達はその崩れた体を引き摺りながら森へまた歩き出した。
『何とカ撒けタカ・・・?』
ああ、何とかな・・・今日は此処で休もう。それに嫌な予感がする。
『俺モダ。確カに嫌な予感がする』
俺もギューリーも何とか逃げ切れたが、さっき何か悍ましい気配が解き放たれたのを感知した。此処も危なくなるだろうし早めに移動しないとな。
俺は近くに有った倒木に腰を掛けた瞬間、倒木から脚が生えてきた。
「グォォ!?」
『何だコイツ!?』
「フゴォォン!」
俺は倒木を蹴って距離を取ったがコイツは倒木ではなかった。倒木に擬態してたナナフシ?だ。
(ジャイアントナナフシ F−)
巨大化したナナフシ。倒木等に擬態して獲物を待ち伏せて襲う。肉はアッサリとした味であるため食用としても出回ってる。だが脆いので同格と戦うと肉の味の様にアッサリと負けてしまう。
同格と戦うと味の様にアッサリと負ける・・・てか朝から何も食べてないし・・・こいつ食べるか。
『美味ソウダ!』
コラコラ涎垂らすな。バッチいな。
俺とギューリーは、距離を取って振り下ろされるナナフシの脚を華麗に避ける。そして少しずつだがギューリーの剣がナナフシの体に傷を付けていくのが見て分かる。
「ギィィ!」
「グォォ!」
奴がギューリーの攻撃で体勢を崩した隙に脚にタックルすると面白いように逆方向に折れた。そのまま喉元に食らいついて仕留める事に成功した。
(経験値148入手しました)
その後、周りを警戒しながらナナフシを焼いて食べたんだが大きさの割には身がかなり少なくてギューリーと俺はショックを受けた。でもギューリーは、味は美味しかったから次も狩ると言っていた。まあ確かに白身魚と似た味だったな。塩があったら完璧だった。
もうそろそろ日も暮れる。洞窟か身を隠せる場所を見つけたいところだ。
俺とギューリーは、森の中を歩いてると何かが溶けて引き摺りながら移動した跡を見つけた。これは何だ?スライムか何かが通ったのかな?
突如、さっき感じだ嫌な予感と同じ感覚が、俺とギューリーを襲った。
この先にヤバイのが居る・・・気配察知がビンビンに引っかかってる。早くここから離れないと!
だがそう思った時にはもう手遅れだった。俺達の背後からネットリとした視線を感じた。俺とギューリーは咄嗟に振り返るとそこには下顎が、ドロドロに溶けて骨が剥き出しのタイホウトカゲが居た。
『死ンだ筈ジャ!』
確かにあの時殺した・・・経験値も入手した。なのに何故生きてるんだ!?
「ギャシャァ!」
タイホウトカゲが大口を開けて突っ込んで来た。取り敢えず倒さないとな!
『ソウダな!』
俺とギューリーは突っ込んで来たオオトカゲ?の攻撃を避けて魔法を放つ。ボロボロと肉が崩れていくのが見える。だが奴は痛みなど感じてない様でこっちにまた大口を開けて突っ込んで来た。
『ウォーターランス!』
「ギャシャ!」
水の槍が突き刺さるがビクともしない。それに茂みからタイホウトカゲと同じような姿になったゴブリンが数匹、現れた。
数でも不利だし魔法も効かない・・・かなりヤバい状況だ。ギューリーどうす・・・る?
『逃ゲろ・・・オメガ!』
ギューリー!?どうした!?
そこにはボロボロの姿になったギューリーが倒れていた。
嘘だろ!タイホウトカゲとゴブリンは何もしてないぞ!何が起きた!?
「ゴァァァ!」
「ギャォァ!?」
突如、空間が歪み4本指の人の腕が俺の腹を掠めた。何事だ!?空間が突如歪んで腕が出てきたぞ!
「ゴァァァ!」
またあの声と同時にまた空間が、歪み何かが現れた。のっぺらぼうの人の顔だが顎は裂けて体は獣のようで背中からさっき殴ってきたあの腕が生えている。
なんだこいつ!キメラかよ!ギューリーは置いていけない!俺の仲間だ!ならこいつを倒して生き残るしかねぇ!