使命
ここは・・・どこだ?白い部屋だ。ただ白いだけの部屋に居る。世界の声、ここはどこなんだ?
いつも答えてくれる世界の声からの返答がない。どうしたんだ?何かがおかしい。ゆっくりと体を、見ると透明になっていた。向こうの白い壁まで透けて見える。俺は・・・死んだのか!?幽霊になっちゃったの!?
《よお驚いてる様だな》
俺が体が透けているのに困惑していると野太い声が、後ろから聞こえた。振り向くとそこには、のっぺらぼうの男が座っていた。お化けか!?俺死んだの!?
《落ちつけよ。お前は死んでない。それに俺は約束通り記憶を、渡しに来ただけだ》
確か世界の声が、進化すると記憶が戻るって言ってたな。てかその前にお前は誰だ!いきなりこんな場所に連れてきて一方的に喋るなよ!名を名乗れい!
《あーそうかそうだな悪かった。何も言わずに連れてきたことはすまなかった。さて自己紹介といこうか。俺の名前は、智恵の女神メティスだ。今は訳あって本体で話せないからこの姿で対応させてもらってる》
え!?お前男じゃないの!?てか女神?神様じゃん!すんませんでしたぁぁ!
俺は透明の体で全力で土下座した。まさか相手が神様だったとはな。俺消されるんじゃ・・・
《うむ分かればよろしい。さて本題の記憶についてだ。今からお前に見せる。今回は、お前の死ぬ瞬間だ》
し、死ぬ瞬間ってことは転生する原因になったことか。事故死か?他殺か?
《まあ見れば分かる。今映し出すぞ・・・ほれ》
眩しい!目の前が見えないぞ!
《ほれ目を開けてみろ》
う、うお・・・すげぇ。なんじゃこりゃ!
目を開けるとそこは、白い壁だけの部屋ではなく映画館の中になっていた。やっぱ神様って凄いな。
《お前の記憶から再現した。雰囲気も大切だろう?》
女神様から渡されたポップコーンを持ち俺は席に着いた。そしてスクリーンが光だし驚きの光景が、映し出された。
何だ・・・これは。本当に俺が居たのか?
スクリーンには怪獣映画みたいにビルが崩れて炎の海と黒煙が、立ち上っている。そして崩れたビルの周りに戦闘機やヘリが飛んでいるのが見える。地上には戦車や軍の人が走っているのが見れる。そして戦っている相手は人間ではなかった。
「ギィィィ!」
「グギャァァァ!」
あれは魔物・・・なのか?もしかしてここは・・・地球じゃない星なのか?だから魔物なんて居るんだ!そうに違いない!
《いや地球だよ。君が知っているあの地球だ》
なら何で魔物が居るんだよ!地球で魔物なんて俺の記憶じゃ見たことないぞ!
《まあ落ち着いて。これは君に託された使命に関係しているんだ》
使命?そもそも使命ってなんだ?託された・・・誰に?
女神様が焦りながら言った。
《まさか使命まで忘れてるとはね・・・あまり時間がないしな・・・済まないが記憶は次回に回すとしよう》
え!?こんな気になる場面でお預け!?
《すまないね使命の方が大切なんだよ。次回に記憶とサービスして色々あげるから許して?》
・・・まあ仕方ない女神様が焦る程のことだ。もしかしたら世界の命運が、掛かってるかもしれないからな。
《その通り!世界の命運が掛かってることだ!》
本当かよ!当たっちゃったよ!命運掛かっちゃってるよ!
女神様が少し震えた声で喋りだした。
《さて本題に移ろうか。まずさっき見た光景だが・・・あれは神々が引き起こした事件だ》
え?あの魔物達は、神様達が仕組んだ事件なのか?何故そんなことをしたんだ?
《そのことなのだが、単刀直入に言うとあれは神々の罪だ》
罪?神様の罪の代償があの魔物達なのか?
《そうだ。君の使命はあの魔物達の出現を防ぐこと・・・いや神々が、罪を犯す前に殺すことが使命だ》
神を殺すだって?出来るのかそんなこと。俺は、まだ幼体の竜だぞ?成長しても神なんて殺せる気がしない。
《そのことだが安心してくれ。君は他の魔物と違い祝炎の血が流れているんだよ。その祝炎の血が流れている魔物のことを人々は伝説の魔物や古龍、魔王と呼んでいる。どれも昔話やおとぎ話に出てくる怪物だ。祝炎の血が流れているならこの世界の枷を、解き放って力を振るえるんだよ》
なるほど。なら俺もいずれは魔王とかになれるのか?
《いや席が埋まっているから今は不可能だよ。それに君の器に魔王の席では入りきらないからね》
俺って・・・凄いんだな。魔王以上の存在になれるかもしれないんだし。
《ハッキリ言うとこのまま成長していけば神も殺せるよ。でも神々がそう易々と成長させると思うかい?今はまだ小さいから大丈夫だけど・・・いずれ勇者とかを使って君を殺しにくるだろうね》
勇者とかも居るんだ・・・てか神様達が犯したい罪って何なんだ?他の世界にまで影響を与える程のヤバいことなのか?
《罪の内容は、伝説の魔物との世代交代を恐れた神々が伝説の魔物を屠る為に異世界から人を呼び寄せたんだよ》
聞いたところ神様達が世代交代を、恐れたところ以外は普通の異世界転生だな。自分達の玉座を守ろうとして強い者に守らせ脅威を滅ぼす、至って普通のことだが何が問題なんだ?
《そう普通のことなんだ。でもね異世界からの人を呼び寄せる方法がダメだったんだよ。彼等は禁忌を犯したんだよ。自分らの世界が受けるダメージが、怖くて君達の世界に流し込んだんだ》
召喚の時に受けるダメージを俺が居た世界に肩代わりさせたってことか。
《その通り。異世界から人を呼び寄せるには代償が生じるんだ。強い光の者が、現れればそれに対抗して強い闇の者が現れる。両者の力の差を無くすためにね。だが神々は自分らの世界が傷つくことを恐れて君らの世界に少しずつ流していった。そのお陰で神々サイドは有利に戦いを進める事ができたんだよ。でも塵も積もればなんとやらだ。そのダメージが君達の世界に徐々に影響を及ぼした結果、向こうの世界にも魔物が現れたって事だ》
なるほど、だから魔物が現れてたってことか。早く止めないとな。じゃないと大変なことになりそうだ。
《まあ5年はあと持ってくれそうだけど出来るだけ早く頼むよ。そろそろ時間だ。取り敢えず次の進化でまた会おう》
ちょ俺まだ聞きたいことが―――
こうして俺と女神様の会話は終わった。