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理想の異性

いつの間にかブックマークが3000件を超えていました。

皆さんいつもありがとうございます。

「…長谷川君、少し日に焼けたわね。」


6月最初の土曜の夜。

目の前で肉じゃがをもきゅもきゅ食べていた冴木先生がそう言った。


「今週の午後はずっと体育祭の練習でしたからね。」


体育祭はちょうど1週間後の土曜に開催される。

ここのところ毎日、午後からは入退場の練習や各種目の練習、応援合戦の練習やらをしていた。

初夏の太陽が照らす中で数時間活動しているのだから、そりゃ肌も焼けるってもんだよ。


「先生は日焼けしてませんよね。やっぱ日焼け止めとか塗ってるんですか?」


先生の姿も度々グラウンドで見かけているのだが、肌は相変わらず真っ白だ。

クラスで女子達が日焼け止めを塗っていたし、先生もそういう事してるんだろうな。


「一応塗ってはいるわよ。でも私、昔からあまり日焼けしないの。」


「そ、そうなんですか。」


今の発言を聞いたら、教室で一生懸命日焼け対策をしていた女子達が怒り狂いそうだ。

この事は僕の胸の中に仕舞っておこう。




「ちなみに先生は、色白の男性と日に焼けた男性はどちらが好きですか?」


「うーん……あまり拘りはないけれど、しいていえば色白の人かしら。」


よし、来週から日焼け止め塗ろう。

特に深い意味はないけど、一応ね。


「でも、少し焼けてるくらいなら健康的な印象を受けるわ。スポーツマンって感じがするもの。」


「先生は体育会系の人が好みなんですか?」


「あまりガッチリしすぎても怖いけれど……なよなよした人よりは魅力的に見えるわね。」


僕、なよなよしてないよね。

結構鍛えてるし。

でも見た目細いし、何より身長が……。



「長谷川君はどんな女性が好みなの?やっぱり可愛くて自分より小さな娘かしら?」


「やっぱりって何ですか。」


「前に読んだ雑誌で"男は小さくて可愛い女性にそそられる"って書いてあったのだけど、違うのかしら?」


そそられるって。

どんな雑誌読んだんですか。


「勿論そういう人もいるでしょうけど…人それぞれじゃないですか?」


「なら、長谷川君は?」


「僕は……大人っぽくて綺麗な人がタイプです。」


色気のある人…と言いたかったけど、流石にやめておいた。

意味は大体一緒のはず。



「綺麗な人…女優さんで言うと、誰?」


女優……美人な女優、色気のある女優…か。


「浅田杏子とか南川桂子とか…ですかね。」


「浅キョンとみーたんか……確かに美人ね。でも、いわゆる可愛い系ではないのね。」


「まぁ、大人な女性に惹かれるので。」


色気のあるエロスな女性が好きなので。

身近なところで言うと貴女みたいな。

ほぼセクハラだから口が裂けても言えないけど。




「内面的にはどういう女性に惹かれるのかしら?」


「性格は…不器用な人ですかね。」


優しい人ってのは前提としてね。


「……何で?」


冴木先生が微妙そうな顔で首を傾げる。

特殊性癖だとでも思われたかな。


「不器用な人が一生懸命頑張ってるのを見ると応援したくなるというか、甘えさせたくなるんですよ。……あぁ、そういう意味で言えば、甘えさせたくなる人が好みなのかもしれないですね。」


「甘えさせたくなる人……甘えたがりの人ではなくて?」


「むしろ甘えないよう自制してる人を無理矢理甘えさせるのが好きです。」


前に野口に貸してもらった漫画で、無愛想で不器用だけど実は優しい女上司を部下である主人公があの手この手で甘えさせようとする漫画があったな。

あんな感じのがまさに僕の理想だと思った。

そういえば冴木先生が眼鏡をかけたら、あの女上司にかなり似そうだ。



「……なかなか難しい好みね。」


「そうですかね。」


「甘えたがらない人を甘えさせるって凄く難しそうじゃない?」


「確かにそうですね。まぁ、あくまでも理想ですから。」


漫画の主人公は胃袋掴んだりしてたけど。

漫画は漫画だからね。


「そういう冴木先生はどんな人が良いんですか?」


全学の憧れである冴木先生の好み、是非聞いておきたい。



「私は……私を好きになってくれる人、かしら。」


なにそれ、人類ほとんど当てはまるんじゃない。


「す、好きになってくれるなら誰でも良いんですか?」


「誰でもってわけじゃないわよ。……そうね、言い方が悪かったわ。正しくは、理想を押し付けない人ね。」


理想を押し付けない?

押し付ける前から既に理想みたいな人なんだけど。

……あ、こういうのが嫌なのか。


「うぅむ……」


「ちょっと曖昧すぎたかしら。」


難しい顔で唸る僕を見て先生が苦笑した。




「昔、色々あってね……こういう人だと思ってた、みたいに言われるのが好きじゃないのよ。」


「それって、高校の時の彼氏さんとか…?」


以前聞いたグルメ気取りの元カレの話。

あれもそういう類のものだったはずだ。


「そうね、それも影響しているわ。」


他にも色々あったのか。

先生は今話すつもりはないようなので、僕からも踏み入ったりはしない。


「なるほど…それで、理想を押し付けない人ですか。」


「えぇ、私をありのままに見てくれる人がいたら……って、これじゃまるで子どもみたいね。」


恥ずかしそうに笑う冴木先生は、やっぱり美人で綺麗で…だけど、とても可愛い人だと思った。




「あと、素直な人が良いわね。変にキャラを作る人はちょっと苦手だわ。」


よし、今日から素直に生きよう。

僕は心に深く刻み込んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 裸マスクで料理しているやつはどうだか(笑)
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