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エピローグ

 その後俺たちはモルドールを捕縛し、サマルの衛兵たちに突き出した。彼らはこんな小都市にここまでの人物が潜んでいたことに驚愕していた。特に用もなかったので、衛兵に教団のアジトを教える俺たちはそのままロンドに戻ることにする。


「……ところで、今日はずっとにこにこしているが一体どうしたんだ?」


 俺は傍らのシオンに声をかける。俺が衛兵たちと真面目な話をしている時もずっとにこにこしているので気になって仕方がなかったが、面倒なので触れなかった。


「さっきの『愛してる』、すごく良かったです」

「お前まさかずっとそのことを考えていたのか?」


 俺は呆れるよりも先に感心してしまう。


「もちろんです。照れ屋のオーレンさんがはっきり言葉にしてくれるなんて珍しいですから。さっきからずっと脳内で思い返していますよ」

「まじかよ……だが、あれは演技に騙されただけで俺の本心では」

「今日は『愛してる』記念日ですね。来年も絶対お祝いしましょう」


 が、シオンは例によって俺の話を聞かずに一人で記念日を作って盛り上がっている。


「それはともかくとして、今後は一人でこういうことをするのはやめてくれよ? 心配するこっちの身が持たない」


 俺の言葉にシオンは一転して申し訳なさそうな表情に変わる。


「それは本当にすみません。オーレンさんがオルレア殿下といい雰囲気になっていて少し不安になってしまっていました」

「いや、全くいい雰囲気になどなっていないが」


 俺は慌てて周囲を見回すが幸いなことに周りには誰もいなかったのでほっと息を吐く。

 もし俺が皇女といい雰囲気になったなどという誤解が広まれば大変なことになる。


「そうですよね、ですから先ほどの『愛してる』を聞いて安心しました。あ、あとあとその前の『俺はこんなところでお前を失いたくない』もなかなか良かったです。私が言わせる形になった『愛してる』よりも本音っぽさが高かったのがポイント高いです」

「頼むからもうやめてくれ……」


 戦闘に必死でつい恥ずかしい台詞を言ってしまったがシオンは俺の言葉を覚えていたようだった。


 彼女は滅茶苦茶な性格だが、それでも俺にここまでの好意を抱いてくれている。全く相いれない性格の奴らとずっと一緒のパーティーだったこともあってそれは意外と悪くないことだと俺は思ってしまうのだった。


「これからは私が無茶しないように毎日『愛してる』を言ってください!」

「絶対嫌だ」


 もっとも、それは思っても口にしないようにしよう、と思うのだったが。


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