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85Revalation of 百合kind

 壁一面に張られたイヴの写真。

 天井一面を埋め尽くすイヴの写真。


 暗い部屋、まだ幼い顔がモニターに笑いかける。

笑った口元、その目は狂気を孕んだ無表情。


 愛情。


 そして、狂気。


 画面に映るカップルの写真の顔の部分を切り取る。

首から上のないカップルの写真をみながら、ユリカは口元をニヤけさせた。


 姉から勝手に頂いたイヴの写真の顔を切り取り、男の首元へとつける。

違和感がないように邪魔な部分を消して合わせる。

 次に切り取ったのは自分の写真だ。同じように顔だけを切り取り、女の首へと張り付ける。


「ほら、カップルだよ。お似合いのカップルでしょ。イヴさん格好いいよ……」


 頭の中には妄想の世界が広がる。

イヴとユリカは付き合っていて、でも、それは誰にも秘密。

誰もいない日曜日に二人だけで逢って、二人だけの時間を過ごす。


 イヴは年上で、格好よくて、だけど凄く綺麗で。

たまに甘えん坊さんで、でも、いつもは甘やかしてくれて。

アイスを買ってくれて、一緒にお散歩してくれて。手を繋いでくれて。

一緒にお風呂に入ってくれて。腕枕をして寝てくれる。


 くれる。

 くれる。

 

 くれ、る。


 く。



 ガ――……



 プリンターが作動して出来上がったイヴとのカップル写真が印刷されていく。

印刷された写真を手に取ると、ユリカは嬉しそうに壁の中に加える。


「イヴさん可愛い、イヴさん格好いい、イヴさん綺麗だよ、イヴさん好きだよ。

イヴさんもユリカのこと好きでしょ。ユリカのこと可愛いっていってくれるもんね。ユリカのこと……」


 階段をあがってくる音がして、ユリカは即座に壁と天井にダミーのポスターを張り付ける。


「ユリカ―、お荷物届いてるわよ」


「はーい、今行く」


 母からの言葉に、ユリカは部屋に鍵を閉めて一階へと降りていく。

大きな段ボールに入ったもの。品物名は『カメラ』と書いてある。

これまでコツコツ貯めたお小遣いやお年玉で買った、一眼レフカメラである。


「うわ、ユリカカメラなんて買ったの?」


 リビングで開封の儀を行っていると、お風呂からあがった姉綾香が声をかけてくる。

妹がそんな大層なものを買っていると、姉は興味津々で段ボールの中を見てくる。


「うん。いいでしょ。これでこれからいっぱい写真撮るの」


「ユリカ、写真なんて趣味だったっけ?」


「趣味になったの」


「へー、今度貸してよ。私も撮ってみたい」


「殺すぞ」


 妹の尋常ではない殺気が瞬時に空間を支配する。

本能的に察知した綾香はその場から飛びのくと両手足で壁に張り付いている。


「い、いいじゃん少しくらい……」


「ダメ。これはユリカのだから。おねーちゃんは触らないで」


「あらあら、ユリカ。そんな殺気出せるようになったなんて。やっぱり二人ともお母さんの血を引いているのねぇ……」


 ニタリ笑う母。

ユリカは殺気を収めると段ボールを抱えて部屋へと戻っていく。


「あ、そうだ。おねーちゃんもママもこれからは勝手に部屋に入っちゃだめだからね」


「はいはい」


 段ボールを抱えて去っていく妹。

綾香は冷や汗を拭いながらテーブル席へと腰を下ろす。


「最近ユリカ変じゃない?」


「そう? お年頃なんでしょ。中学校にあがって色々興味出てるんでしょう」


 妹も年相応に成長しているのだろうと言う母だったが、綾香は妙な胸騒ぎがしてならない。


 何か――。


 何か自分の知らぬところで恐ろしい邪な手が伸びている気がする。



 部屋に戻ると、ユリカはさっそくカメラを起動してみる。

操作方法はあらかじめ調べてあったので、もうすでにほとんどの機能は分かっている。

フォーカスを合わせて、試しにシャッターを切る。


「うん……大丈夫そうだな……」


 うまく撮れているのを確認すると、ユリカはすぐに試し撮りした一枚を消す。

 このカメラに映すものは一つだけだと、ユリカは決めていたのだ。


(イヴさん……あんなおねーちゃんのクソみたいな写真じゃなくて)


 ファインダーに目を当て、狙いを定める。


(ユリカがちゃんと綺麗なイヴさんを残してあげるからね)


 壁に貼られたカップルの写真にフォーカスを合わせる。


(私だけのイヴさん……)




◇ ◇ ◇



 学校帰り、見慣れない制服姿がバス停に立っていた。


 紺のセーラー服。

顔つきは幼くまだ中学にあがったくらいだろうか。

天使の輪輝く栗毛のツインテール。吸い込まれそうな大きな瞳をした可愛らしい少女。


「あれ、ユリカちゃん?」


「イヴさん、こんにちは」


「どうしたの、こんなところで」


「実はイヴさんにお願いがあってきました」


(ていうか、なんで俺が降りるバス停知ってるんだ……? 綾香に聞いたのかな?)


 とりあえずユリカと共に自宅のほうへ向かって歩き出すイヴ。

乙女らしく両手でバッグを持つとニコやかに隣を歩くユリカ。


「で、お願いってなに?」


「実は私新聞部なんですけど、今度写真のコンテストがあるんです。それでイヴさんにモデルをお願いできないかなって」


「へー、そんなのやってるんだ? 別に構わないよ」


「本当ですか? 嬉しいです。それで、さっそくなんですけど、もうカメラ持ってきてるんです」


 バッグから取り出されたのは一眼レフカメラだ。ストラップを首にかけると、ユリカはにこり笑っている。


「うわ、上等そうなカメラ。え、もう撮る?」


「はい、出来ればイヴさんの日常的な風景を撮りたいんです。いいですか?」


「まー、構わないよ」


「えへへ、ありがとうございます」


 しかし、ユリカはいきなりカメラを構えようとはしなかった。

撮りたいのは日常的なイヴである。

カメラを向ければ、きっとカメラ用の顔を作ってしまう。

だからユリカは、カメラを起動させつつその瞬間瞬間を切り取ろうとイヴを見つめた。


「あ、そのまま歩いててもらっていいですか?」


「ん、あぁ?」


 後ろ姿のイヴをパチリ。


「あ、イヴさん」


「ん?」


 振り向いた顔をパチリ。

撮った写真を見れば、そこにはイヴの自然体な顔が切り取られている。


 撮られた写真をイヴも確認すれば、そこにはスマホでは考えられない美しい写真が収められている。

イヴだけにフォーカスがあたり、ぼやけた背景に美少女が振り返っている。


「へー、ユリカちゃん写真上手だね」


「えへへ、色々勉強したんです」


「凄いなーユリカちゃんは」


「イヴさんに褒められると嬉しいです。凄く嬉しいです」


「フフ、私も妹が出来たみたいで嬉しいよ」


「本当に……イヴさんがお姉ちゃんなら良かったのにな……」


 顔が、笑っていなかった。

漂う空気は暗黒に染まっていて、どうしてかキリキリと耳鳴りのような響く。

小さな口が唇を噛むと血の味が広がる。


(ユリカちゃんどうしたんだろう、綾香と何かあったのかな)


(あんな馬鹿がどうして私のおねーちゃんなんだろう。イヴさんがお姉ちゃんだったら、イヴさんがお姉ちゃんだったら――)



 毎日一緒に入れるのに。


 凶悪すぎる顔が、嗤う。


「ユリカちゃん、綾香となにかあったの?」


「いえ……なにも、なにもないですよ」


 きゅっとイヴの手を握る。

何か悩み事でもあるのだろうかと、イヴも握られた手を握り返す。

その手は小さくて、赤ちゃんのような柔肌で、でも、しっかりと握っている。


 二人して歩いていると、いつの間にか家の前までついてしまった。

 さすがにこのまま返すわけにもいかないだろう。

夏とはいえ、帰る頃には暗くなっているだろうし、イヴたちよりも小さいユリカを一人で帰すなど、とてもイヴには出来ない。


「とりあえずあがってきなよ」


「ありがとうございます。お邪魔します」


「帰り遅くなりそうだし……どうしようか、タクシーでも呼ぶ?」


「あ、大丈夫です。多分、マイクさんが迎えに来てくれるので」


「マイクって誰?」


「お母さんの知り合いです。うちの執事さんみたいなものです」


(綾香んちの母ちゃん何やってんだ……?)



 六道家へあがりこんだユリカ。祖父に軽く挨拶をすると、イヴはユリカを自室へと案内した。

とても女子とは思えない部屋。

シンプルな部屋には本棚とベッド、あとはトレーニング用品のみが転がっている。


「わー、イヴさんのお部屋はじめてきました」


「女っ気ない部屋でしょ」


「うぅん、凄く素敵です。だってイヴさんの部屋だから。わーイヴさんの匂いがいっぱい」


(やっぱ妹だな……綾香にちょっと似てる)


「イヴさんがトレーニングしてるとこみたいです」


「おう、いいぜ」


 さっそくとイヴは制服からトレーニング着に着替え始める。


 パシャリ。


 パシャリ。


 パシャリ。


 パシャリ。


 脱がれていくシャツを、スカートを、リボンを。

逃すことなくシャッターを切る。


「こら、えっちな写真はだめだぞ」


「勿論です。えっちなことになんて使いませんよ……えっちなことになんて……」


 カメラを構えるユリカの目。

ファインダーを覗く目はイヴには見えないが、きっとそこにはマジな目があるのだろうと感じられる。


「あ、ちょっとそのまま!」


「え?」


 トレーニング着をきかけたところで、ユリカは制止をかける。

長い髪を留めようとヘアゴムを咥え、中途半端に着られた服。目線はユリカのほう。


 こんな滅多に見れない最高のイヴを、残さないわけがない。


「あぁ、綺麗。あぁ、美しい。あぁ、可愛い。あぁ、イヴさん。いいです。いいです。

すごくいいです。あぁ、あぁ! イヴさん、素敵です!」


(やっぱ綾香の妹だな……)


 床にあおむけになると、ユリカはシャッターを切り続ける。

ローすぎるアングル。太ももから頭まですべてが一枚に収まる。

着かけのトレーニング着の隙間から見えるブラジャー、ちょっとだけ見えるパンツ。


「こ、こら! ローアングルはダメ!」


「あ、あの、イヴさん」


「な、なに」


「良かったらそのまま踏んでもらえませんか……その生の御御足で」


(綾香以上にやべぇな……)


 躊躇いながら――。


 イヴはそっと裸足でユリカの頭を踏みつける。

本当はこんなことしたくはないのに、ユリカの狂気な目に見られていると、どうしても拒否できない。


「あぁ! もっと! もっと踏んでください! もっとユリカを踏んでください!」


 パシャリ。


 そのドン引きする顔でさえ、今のユリカには最高の絵画に見えていた。



ポイントを!!!!お願いします!!!!!


あと一言でもいいので!!!!


感想が!!!!


ほちいです!!!


↓↓↓↓↓↓↓↓

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― 新着の感想 ―
[一言] ユリカちゃんやべーなw
[良い点] イヴ”は”いつも通り可愛くて良かったです、が、どうしてこうなった…どうしてこうなった…。 やはり血を分けた妹でありましたか…。 [一言] 更新お疲れ様です。 いつも癒やされてます。 陰なが…
[一言] ヤバイ 一言でいいって言ったので
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