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38嫉妬神

 女子高生の――綾香や凛の年頃の、そう16歳程度の少女の握力。

世代別平均値でみれば、その握力は


 26kg前後。


 同じ年ごろの男子生徒を見れば、その握力は


 41kg前後。


 である。


 見たことがあるだろうか?

プロレスラー、関取、格闘家などが、こう


 グシャッ。


 とリンゴを握りつぶす場面を。

特別――中をくり抜くなどの細工をしなければ、リンゴを潰すのに必要な握力は


 70kg以上。


 比べるまでもなく、実践するまでもなく――

女子高生にリンゴなど潰せるはずもなく。


 しかし。


 緊急時、もしくはその手のひらの感覚が、脳のリミットが外れていたとしたならばどうだろう。

例えばそう。


 愛しい人が、自分の愛する人が、恋に狂って頭のおかしくなってしまった人ならば。


 小林綾香(16)の場合。

これまでこれといったスポーツに秀でたことはなく。

これといったトレーニングに励んだこともなく。

これといった格闘で拳を交えてきたこともなく。

彼女の握力は平均的な女子高生の握力――26kgよりも低い数値である。



 ピシ――。


 電信柱に隠れ、イヴと千鶴の様子を見ていた綾香の握力は。

計測器であるならば破損。

リンゴであるならば瞬時に弾け。

手を繋いだならば握りつぶせるほどに。



 ピシ――。



 電信柱に、綾香の手の痕が残っている。


「あ、新しい雌豚が……新しい雌豚がイヴと一緒デート……」


「別にデートってわけでもないような。イーちゃん、誰にでも優しいから」


 綾香の後ろからフードを被ったにゃんこ凛が顔を出す。

二人の視線の先にはラフな格好の千鶴と、おめかししたイヴの姿がある。


「野郎……どこに行くつもりだ……」


 電信柱を、綾香の手がえぐる。


「あっちって映画館とかあるほうじゃない?」


「映画館だと!? 暗闇、密室、隣りあわせ……そんなのもうラ〇ホみたいなもんだろ!!!!!!」


「おばかな綾香ちゃんにはそう見えるんだね♡」


「赦せない……赦せない……あの雌豚ぁ……」


「とりあえず、あたしたちも行ってみよ♡」


 綾香ほどの過激さはなくても、凛も同じ気持ちである。

嫉妬が胸の中に渦を巻く。

まだ誰のものでもないイヴを手中にしたいという願いは同じ。


 これからどうなるのかは分からないが、もし、千鶴に綾香や凛と同じような気持ちがあったなら。


(抜け駆けは赦さないよ♡)


 バレないように、綾香と凛は二人のあとを追った。



◇ ◇ ◇


 タダ券とチケットを引き換えるとイヴと千鶴は上映時間までを館内で過ごした。

鑑賞中に食べようと手には大きなポップコーンのバケットと、大きなドリンク。


「私の分までありがとう」


「いいんだ。付き合ってもらってんだから」


「つ、付き合ってなんかないから! 私たちそういう関係じゃ!!!」


「いや、スイーツも映画も付き合ってもらってるじゃん」


 千鶴勘違い。

 両手で顔を隠すと、指の隙間から蒸気をあげている。


「お前すぐ顔赤くなるな」


「もう少し黙ってる……」


「黙ってたほうが可愛いもんな」


 だから。

すぐ可愛いというな、と言いたいけれど千鶴は口を開かなかった。

口を開けばまた変な勘違いした言葉を口に出してしまいそうである。

映画のタイトルのこともそうだし、今の『付き合って』ということもそうだ。


(あーもう何考えてるんだろう私は!!! 女の子同士で付き合うわけないじゃない! もうなんなの!!!)


 でも、黙っていたら。

『可愛い』って言ってもらえるかな、なんて期待をしてしまう。

しかし、今日千鶴はただスイーツを食べようとしていただけで、誰かと会う用の服を着ているわけではない。

Tシャツとデニムといういたってラフな格好だし、ほんのりメイクはしているが、そこまで気合が入っているわけでもない。

そう思い始めると、恥ずかしくて恥ずかしくて仕方ない。


 チラリ隣を見れば、おめかしした綺麗な女性。

服装だってオシャレだし、メイクだって完璧だし、スタイルだっていい。


「どうした?」


 なんて聞く顔は可愛さの塊。


「な、なんでもない……」


「ちーちゃんさ、最初にあったときはあんなに勢い良かったのにな。どうしちまったんだ?」


「べ、別に……私だって……わかんない」


 恋。


「なんだか急に乙女らしくなったっていうか、可愛らしくなったていうか」


 恋。


「可愛くなんて……私本当にぶさいくだから」


 恋。


「自信なさすぎだろ。ちーちゃん可愛いよ」


 恋。


「あんまり可愛い可愛い言わないで」


 恋。


「照れてるちーちゃん、可愛い」


 恋。


「私、本当に」


 恋。



 遠くでそんなやりとりをしている二人。

物陰に隠れながら、綾香と凛はその耳を地獄耳にして話を聞いていた。


「……」


「……」


「凛さん」


「なぁに?」


「多分これから私」


「うん」


「警察のお世話になるというから、そのときは凛さんよろしくね」


「オイオイ♡ 何しようとしてんのクレイジー綾香ちゃん♡ 落ち着け♡」


「それがダメならせめて!!!!!! せめて私の耳を取って!!!!! 私の耳を引きちぎって鼓膜を破壊して!!!!!!

こんなやりとり聞かせられるなら刑務所に入ったほうがましイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!」


「気持ちはわからなくないけど♡ 落ち着け綾香ちゃん♡」


 少しでも頭を冷やしてやろうと、凛は飲んでいたドリンクを綾香の頭にぶちまける。

飲んでいたのがアイスティーで良かったと思う。きっと炭酸だったら頭が大変なことになっている。


「うぅ、少し頭冷えた……」


「よしよし♡ いい子だぞ、綾香ちゃん♡」


 綾香を抱きしめて頭を撫でる凛。


「どうせなら……どうせならイヴに抱きしめていいこいいこしてもらいたかった……」


「その気持ちも分かるぞ♡ じゃぁ、あたしは代わりにブン殴ってあげようか?♡」


「50発ほどお願いします……」


「かしこま♡」


 劇場内にアナウンスが響く。

はじめての恋が開園10分前のアナウンスである。

見に来ていたカップルやティーン層はアナウンスを聞くとぞろぞろと動き出す。


「あ、かいえ……」



 グシャぁ!!!1



 凛の拳が炸裂する。


「あと49発だね♡」


「あ、ごめん、さっきのやっぱ無し。とりあえず行こう……」


「映画終わったら続きの49発ね♡」


「凛さん……凛さんもわりとキレてるでしょ……」


「えーキレてない♡ 全然キレてないよ♡ あたしキレさせたら大したもんだよ♡」


 凛の手を見る。

おつりでもらっていた100円玉が、ぐしゃぐしゃに折れ曲がっている。


(49発殴られたら死ぬな……)


 入口のほうを見ると、イヴと千鶴が楽しそうに話しながらチケットを切ってもらっていた。



下から感想、ポイント、レビューが出来ます!!!!!!!!!!!!!!!




是非お願いいたします!!!!!!!!!!!!!!!!!!




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― 新着の感想 ―
[気になる点] コンクリート(電柱)を抉り取るって握力100後半は余裕で行ってるでしょそんなに力入ってて骨の方は大丈夫なのか?
[良い点] 最近、読ませて頂いています。 このまま長期連載を希望するほど面白いです。ですので、無理のない範囲で執筆の方を頑張って下さい。 兎に角、物語の勢いとキャラの個性が凄過ぎて笑いが止まりませんw…
[気になる点] 血ーちゃんにならないように・・・(T人T)
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