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199六道イヴ

 凛が気持ちを伝えてきた。

綾香が気持ちを伝えてきた。


 震えながら、涙を堪えながら。

硬く拳を握り、精一杯の勇気を出して。


 ベッドに横になり、イヴは目を細める。

 楽しかった日々。

いつも二人が傍にいた。

何をするにも二人がいた。

その二人が、それぞれにイヴに対し同じ気持ちを抱いていた。

そしてその二人が同時に想いを伝えてきた。


 きっと――。

大変な勇気が必要だっただろう。

それなりの覚悟を持って臨んできたのだろう。

二人の目を見れば分かる。

覚悟を持った少女たちのなんと可憐で儚げなことだっただろうか。


「……」


 なんていえばいいのだろう。

なにを思えばいいのだろう。

なんて答えを出せばいいのだろう。


 どちらにイエスと言えばいいのだろう。

どちらにノーと言えばいいのだろう。

両方にイエスというのか。それはない。

両方にノーというのか。それはない。


「俺は……」


 二人は正面からぶつかってきた。

精一杯の勇気と愛をこめて。

どちらもあんなに乙女に感じたことはない。

今までで最高に女の子で、どちらもその場で抱きしめたい気持ちになれた。

だが、両方に対してイエスとはいえない。

そんなことは赦されない。

天国へ導くのも、地獄に導くのも己次第。


「……はぁ――」


 前世の記憶が戻ったときから、いろんなことがあった。

綾香に出会い、凛に出会い。

三人でいろんな所へ遊びにいった。いろんな事をしてきた。

どれも大事な想い出になっていて、それらはイヴにとって永遠の宝物になっている。


 凛も綾香も、六道イヴに恋をしている。

もう目を背けられない事実。

突き付けらた愛に、自分も愛をもって答えねばならないと思う。


 二人の気持ちを考える。

きっと今頃二人はイヴの答えを待っている。

二人そろって告白するとは思わなかった。

それぞれに想いを伝えてきたことを、二人は知っているのだろう。

凛は綾香が告白したことを。

綾香は凛が告白したことを。


「かぁー! らしくねぇ! しっかりしろ六道イヴ!」


 両手で頬を叩く。

ぶつかってきた気持ちに、正面から答えるだけ。

頭では分かっているが、どうして単純なことがここまで頭を悩ませるのか。


 想い出たちを振り返る。

笑っていた。

凛も。

綾香も。

そしてイヴ自身も。


 青春は残酷で、甘酸っぱくて、切ない。


「……よし」


 答えは出た。

イヴはスマホを手にするとラインを開いて文字を打ち込んだ。


『明日、放課後屋上にて待つ』


 まるで果たし状のような文句であるが、しばらくして既読がつくとスタンプで返事が返ってきた。

 明日、イヴは答えを出す。



次回最終話。

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