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18寄らば斬る

 右腕に凛、左腕に綾香。

周りの目など気にすることは、もうなかった。


 凛がイヴと腕を組めば、綾香も腕を組む。

凛がボディタッチをすれば、綾香もボディタッチをしはじめる。


「お前らくっつきすぎて邪魔」


「やん、だってこれはデートだもん♡」


「前園さん、邪魔だって。退きなよ」


「綾香ちゃんが退けばいいんだよ♡」


 歩きながら綾香と凛の視線が火花を散らす。

されど今のところ凛のほうが一枚上手。

凛の動作はごくごく自然、そしてそのキャラクターを活かし甘えん坊さんになるとイヴに甘える。

綾香といえば、それは自然的に発生しているボディタッチや腕組ではない。

凛がそうするから、綾香もする。つまり常に凛に先を行かれ、それを模倣しているだけだ。


(くそくそくそ、このロリータ……私のイヴに!!!!!!!!)


 おかっぱ頭が逆立つ。怒りの眼差しが凛を見る。

それでも凛は微動だにしなかった。それどころかそんな綾香にも笑顔で見つめ返す。

だが、その視線は勝ち誇っている。


(綾香ちゃん可愛いなぁ。きっと知識も経験もないんだろうなぁ。かわいいー)


 知識と経験。その二つに圧倒的な差があると、凛は自負していた。

 もとより凛はこの日のために遊園地内の遊戯施設、ルート、休憩所、トイレに至るまでを徹底的に調べ上げている。

そうすることで何かあった際にすぐに動けるようにしてある。

勿論、それを口に出すことはない。会話の中で自然にイヴが求める場所にいけるように促していくのだ。


 そして経験。

凛も決して恋愛経験が多いというわけではない。

しかし、友達に甘えたりするということなら常日頃からしている。

どうすれば相手はいい顔をするのか、どうすれば相手は甘えさせてくれるのか。

それらを友人とのじゃれあいから自然と学んでいた。


 それは最早答えをしったテストに挑んでいるようなもの。

イヴの男勝りな性格なども踏まえ、仮定を踏み、そうして行動に移す。

お化け屋敷の出来事で、凛は答え合わせをし、求めていた答え通りの結末となった。


(どうしたら、どうしたらこのクソロリを出し抜ける……!)


 考える綾香。

自分にあって凛にないもの。

凛がしようとしても、出来ないもの。


 何か、何か、何か凛にマウントの取れるものッッッ!


 脳内に電撃が走る。


 存在る。


 切り札的カードになるかもしれないが、存在る。

そう、綾香にはイヴとお泊りをしたという経験がある。

一晩一つのベッドで寄り添ったという経験がある。

さすがに凛もそういった経験はないだろう。それに凛とイヴが交友を始めたのは最近のことである。


「そういえばさ、イーちゃんは綾香ちゃんといつから仲いいの?」


 願ったり叶ったり。

凛は笑顔のままそんな質問をする。


「最近かな」


「へぇ、そうなんだー」


 勝者の笑みが綾香を見る、しかし、ここぞとばかりに綾香もニタリ笑うと勝ち誇った笑みで返した。


「そう――私も年月は長くないね……フフ、でもね」


(なんだこのおかっぱ……)


「最近、そう最近の話なのですが……先日、つい先日、わたくしイヴさんと一晩を共にしましてね」


(!?)


 一晩を共にというワードは、凛にも衝撃を与える。

勝者の笑みが、消えていた。

綾香はこれならばマウントを取れると察すると、さらに言葉を続けた。


「二人で一晩過ごしましてね――パジャマパーティー、とでもいいましょうか」


(パジャマパーティーだと!? このおかっぱ、いつの間にそんなことを!)


 勝ち誇っていたはずの凛の顔が、焦る。

たたみ駆ける綾香も、真顔でしかし目をガン開きで凛へと顔を向ける。


「二人で、フフ、話すことじゃないかもしれないけれど……フフ」


(こんのおかっぱああああああああああ、何を溜めて話してやがる! 畜生があああああああ)


「私のうちにイヴが泊まった。ただ、それだけのこと」


(……!)


「一緒のベッドで……あいにく枕が一つしかなかったもので……ねぇ?」


 チラリ綾香はイヴを見る。


「この前綾香んち泊まったんだよ。楽しかったなー、またお泊り会したいな!」


 笑うイヴ、絶望する凛。


(!!!!!!!!!!)


「フフ、ただそれだけ、お泊り会をしただけなんですがね、フフ……」


(テメェ……)


(前園ォ……テメェにはさすがにお泊りの経験はねぇだろぉ???)


 ぶつかる視線が、互いの気持ちもぶつける。


(戦争だな、戦争がしたいんだなおかっぱあああああああああああ)


(叩き潰してやるよゴミクソビッチがあああああああああ)


「それでさ! 今度はうちに泊まりに来いよ! 凛もきていいぞ!」


 イヴの一言に、二人に衝撃が走った。

同時にイヴの顔を見上げる。

綾香は何故そんなことを言ってしまうのかという衝撃と驚きの顔。

悔しがりすぎて血反吐を吐きそうだった凛は目にハートを浮かべると、最高級の笑顔を作っている。


「何故っっっ!?!?!??!!?!??」


「行く! イーちゃんちイキたい!!!!!!!!!!!」


 マウントを取るつもりが、イヴの話であらぬ方向へと予定が変わってしまう。

まさかこのようなことになるとは思わず、綾香は親指の爪を噛むと爪を食いちぎった。


「ほら、この前綾香んち行ったとき楽しかったからさ。今度は俺んち来いよ。

三人もいれば絶対楽しくなるだろ!」


「うん、間違いなく楽しい♡ えー、いつにする!? いつにする!?」


 反撃は今しかないと凛は必要以上に抱きつくとぴょんぴょん跳ねている。

綾香といえば地獄に落ちた罪人のような顔をすると、口から泡を吹く。


「俺はいつでもいいからさ。次の休みにでも来るか?」


「イキます♡♡♡」


 口から溢れる泡を拭い、綾香は切り替える。

ここで負けてはいけない。これはせっかく訪れたチャンスであることには違いない。


「行く! 私も行く!」


「よし、じゃー次の土曜日にうちこいよ。もうお袋たちには言ってあるからさ。

わー、凄く楽しみになってきた!」


 二人の肩を抱くとイヴは上機嫌だ。

綾香とお泊りしたときもなんやかんや楽しかった記憶が残っている。

同じ学年の女子高生が一人増えれば、それはさらに楽しいものになるだろう。

イヴはそう確信していた。


 嬉しそうなイヴをよそに、綾香と凛の戦争開始の合図がなる。

 二人は今にも斬りかからんと笑顔に隠した殺気をぶつけあうと、互いに視線に思いを込めた。


(ロリータよぉ、いつまでも調子のってんじゃねぇぞコラあああああああああ)


(イキってマウントなんてとるからこうなるんだよおかっぱぁ。お泊りしたらテメェに忘れられないトラウマ刻んでやんよ)


 すでに抜き身の刀を構えている。

踏み込んだ方が斬られる。もしくは斬る。


(次こそは一緒にお風呂はいってテメェが近づけないゾーンにいってやるよ)


(お泊りってことは夜遊びコース……フフフ、綾香ちゃん、私寝ないことには定評があるのよ。夜中にイーちゃんは私のものにするから)


「そうだ、せっかくだし三人で写真とろーぜ」


「はい♡」


「はい!」


 スマホを構えると内部カメラを向ける。


(チャンス!)


 イヴに抱き着くと頬をくっつける凛。

すかさず綾香も抱き着くと、イヴの頬に自分の頬をくっつける。


 カシャリ。


「女子高生って感じするなー! ラインに画像送っとくわ」


「わ♡ ありがとう♡ ツイッター載せていい?♡」


「おう、私も載せるわ」


(ここだ!)


「イヴツイッターやってるんだ? 私にもアカウント教えてよ。フォローするから。あ、それと私も写真載せてもいい?」


 超絶早口綾香。


(これで私もイヴと相互フォローに!)


 今更ながらイヴのアカウントと相互をすると、綾香は満足そうにしてる。

そうして、さらにこれで凛のアカウントを監視することも出来る。

凛のアカウントをフォローするつもりはさらさらないが、怪しげな行動をとったら即反撃に出ることは出来るだろう。


「綾香ちゃん、イーちゃんの知らなかったんだ?」


 勝者の笑み。


「うん。ほら、イヴあんまりSNSやらない人だしさ(マウントとってくんなクソロリータ)」


「そっかぁーへぇー。まぁ私は前から知ってたけどね」


「いやぁ、今日はいい日だ。最高に楽しい日だな」


 一人、イヴだけが朗らか。


 もうそろそろオリエンテーションも終わる。

しかし、イヴの頭には次の休みはどう二人をもてなそうと、妄想が広がっている。



下より感想とポイント評価が送れます!!!!!!!


あともう少しで月間ランクインも出来そうです!!!!!!!


是非お願いいたします!!!!!!!!!!!!!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。綾香好きです。TS百合にあまり期待しない事が多いんですけどなんか思ってたのと良い意味で違いました(笑)作者様更新感謝。
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