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183綾香、面接落ちたってよ

 イヴがメイドカフェでアルバイトをしだした。

アルバイトをすること自体は良い事だと、綾香は思う。

社会経験にもなるし、社会人になる前に少しであるが業界のことを知れる。

そして高校生ながらにお小遣い程度の賃金は稼げるからだ。


「悪いことではない。悪いことではないんだ……」


 しかし。

綾香は心配が釣り針のように心にひっかかって取れなかった。

釣り針は抜き取れず、ぐいぐいと意識ばかりがそちらへと引っ張られていく。


 凛とともにメイドカフェにいった。

そこには学校とは違うイヴの姿があった。

友達であるはずなのに、友達として接することがなかった。


 思い返す。

可愛らしいメイド服。ミニスカートから覗く絶対領域。

ただでさえ可愛いものが、可愛いを身にまとったらそんなもの可愛いに決まってる。

 何故、あのときチェキを頼まなかったのかと、綾香は過去の自分をぶん殴りたくなる。


 考えることは多々ある。

だが、それらはイヴが自ら決めたこと。

綾香がどうのこうの言えることではないと分かっている。


だから。


「イヴが違う世界に行ってしまった。あなたはもし好きな人が違う世界に行ってしまったらどうしますか?」


 誰に問いかけるわけでもなく呟く。

強いて言うならば、それは自身への問いかけ。


 綾香は行動に出ていた。

そして、今はその結果を待っている。


「私ならば……追いかける。例え火の中、水の中、森の中、土の中、雲の中、あの子のスカートの中。

果ては――私ならば異世界にだって追いかけていける」


 ピロンと音がして、綾香のスマホにメールが入る。

そこに書かれていたのは、イヴが勤務しはじめたメイドカフェからの通知である。


「きたか!!!!」


 即、メールを開く。

そう――イヴのためなら。好きな人のためならば、綾香はどこまでだって追いかける。

綾香はメイドカフェにアルバイトの応募をしていたのだ。


「け、結果は……!?」



『この度は転生メイド領域へのご応募誠にありがとうございました』



 どきどき。



『残念ながら、今回は期待にそえない結果となりました』



「どぉしてだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」


 藤原〇也のような声をあげながら、綾香は何故か腕を抑えながら床を転げまわった。


「お姉ちゃん五月蠅い!」


 転げまわる綾香の絶叫に、たまらず隣室のユリカがクレームを入れる。


「イヴは受かっただろう!!!! そりゃぁイヴなら受かるさ!!!!!

だから……私だって!!! 私だって!!! ちくしょう!!!!! 私だって現役JKだぞ!!!!

なんでこんなことになるんだよおおおおおおおお!!!!」


「ねぇー、本当五月蠅い! 少しは黙って!」


「このみっともねぇ妹がああああああ!!!」


「みっともないのはお姉ちゃんでしょ!!!!!」


 苛立ったユリカは近くに置いてあったペットボトル飲料を姉の腹向かって投げつける。

う゛っといううめき声をあげると姉はようやく大人しくなり、妹はやっと平穏な日常に戻すことに成功した。


 妹であるユリカが去り、腹に投げられたペットボトルを抱き寄せる。


「キンキンに冷えてやがるっっっ……このペットボトルも、世間の風もよぉ!!!」


 流れる涙をそのままに、綾香はただただ悔しさに唇を噛んだ。



どおしてだよおおおおお!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新感謝です。 小林姉妹の掛け合いほんと好き。 応援してます。
[一言] どいつもこいつも狂ってやがる!!
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