181パイセン
「ご注文をお伺いします! お嬢様!」
元気いっぱいに注文を伺いにきたイヴに、綾香と凛は眉を潜めた。
先ほどまでは慣れない雰囲気を感じていたはずなのに――今のイヴは活き活きとしている。
それどころか、あの男勝りなイヴが完全にメイドさんになり切っている。
「イ、イヴさん……?」
恐る恐る尋ねる綾香。
「なんでしょう、お嬢様!」
「え、あ、えーと、本当にイヴさんですよね?」
「えぇ、イヴです! 本日より転生して皆さまにご奉仕させていただいておりやす!
初日ゆえ至らねぇところもあるとは思いますが、この六道、精進してまいりますので、夜露死苦お願いいたしやす!」
「り、凛さん……」
なにがどうなっていると凛に助けを求めるが、凛はにこにことして微動だにしない。
「綾香ちゃん頼まないの? じゃー凛先に頼むよ♡」
「へぇ、なんなりと!」
「プイプイパフェ一つと、またたびコーヒーを1つ♡」
「プイプイパフェとまたたびコーヒーですね! かしこまりました!
そちらのお嬢様は!?」
「え、えと、じゃぁ同じものを!」
「かしこまりました!」
メニューを受けたイヴは豪快に大股で歩くと、短いスカートがぶるんぶるんと揺れている。
普段だったらそんなスカートに興奮する二人であるが、綾香は驚いたまま、凛はにこにこしたままである。
「ま、まさか……」
「?♡」
「すでにイヴは調教されてしまったのか……」
「ちげーだろ♡ 仕事してるんでしょ、仕事♡」
「くっ……確かにイヴは真面目な部分がある……その真面目さがこんなところで出てしまうとは……」
「ふふ♡」
*
平日というのもあり、その日の集客は数人に終わった。
はやめに閉店すると、イヴはレジの締め作業をしているあいすを待った。
「先に帰っててもいいんだよ?」
「いえ、先輩一人置いて帰れません」
「ふふ、なんだか彼氏かわんこみたいだね」
「それに夜道を女性一人で歩かせたくないですから」
「彼氏ムーブじゃん♪」
「とにかく先輩に仕事預けて先に帰るなんてできません」
「そ。イヴちゃんはいい後輩だね♪」
締め作業を終え、二人して事務所へと歩いた。
仕事の話やたわいもない雑談をしているとすぐにでも事務所へと着く。
事務所についてからも着替えながら会話が弾んでいた。
「イヴちゃんこのあと暇?」
「はい、大丈夫です」
「一緒にご飯食べていかない? お姉さんがご馳走してあげるからさ」
「私も行きたい!!!!!!!!!」
二人の間にまだ事務作業をしていた谷間が割って入ったが、あいすに軽く首根っこを掴まれると再び椅子へと座らされている。
「本当ですか。じゃぁお言葉に甘えて」
「よし、じゃー決まり! 何か食べたいものある?」
「先輩何か美味しいお店しらないですか?」
「そうだなぁ……ラーメンでもいい?」
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