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173新しい人生

 綾香の一撃に顔を伏せる舞依。


「や、やった……?」


「綾香ちゃん、それやってないフラグ」


 立てたフラグを回収するように、伏せられた顔に生気が漲ると舞依は再びフルパワーで立ち上がった。

立ち上がると同時抑えつけていた三人全員に即座に愛撫の連撃を浴びせる。


「わ!」


「あっ!」


「にゃっ!」


 舞依の底知れぬパワーとテクニックに再び形成が逆転する。

立っているのは舞依、地に腰をつけてしまったのは綾香たちである。


「いいお友達がたくさんいるんだね。あなた」


 綾香向かって指をさす。


「あなたはあの子、金髪の子のために命を張れるの?」


「もちろん!」


「あなたは?」


 次に指さしたのは凛。


「イーちゃんのためなら命だって惜しくないよ」


「あなたは?」


 次いでマリア。


「六道様は桃子様のご友人。ご友人様のためなら私にできることはするつもりです」


「愛されてんなぁ。フフ、何回生まれ変わったって、あたなはあなたなんだね」


「舞依……」


 名前を呼ぶ声は、昔と違って。

 舞依を見つめる瞳は、あの頃と違って。

 いつか抱きしめてくれた腕は、身体は、匂いは、体温は。


「竜司じゃない」


「……!」


 タバコに火をつけた。

深く煙を吸い込むと、雲一つない空に浮かぶ月へと煙を吐き出す。


「このタバコの匂いだけは……そこの金髪の子」


「?」


「あなたお名前は?」


 何故、名を聞くのか。

知ったはずの名。過去も現在も、舞依は知っている。

知っていたのに。


「六道、イヴ。なんだよ、舞依、あらたまって」


「六道イヴちゃんか。あなた――私の恋人に似てた」


「似てたってそりゃぁ……」


「イヴちゃん、あたしは前を向いたつもりでいた。でもやっぱり本当は過去の影を振り返っていた。

でも、今やっと――ちゃんと前を向けると思う」


「どうしたんだよ」


「私は――私たちの物語はもう終わったの。私の物語はもう終わったの。

あなたの物語に、私はいられないの」


「……」


「わかったんだ。イヴちゃんにはもう、イヴちゃんの仲間がいる。友達がいる。

命を張れる子たちがいる、あなたのために何だってしようって思える子たちがいる」


「……」


 イヴも、もう名を呼ぼうとはしなかった。


「ただ、最期に言わせて」


「うん」


「わ、わたしは……私は……り、竜司が」


 涙に声が震える。

もうこれで終わり。

もうこれ以上イヴの人生には関わってはいけない。

もうこれ以上過去に囚われ、過去で相手を縛り付けてはいけない。

だから。


「ひっく……竜司、大好きだよ。あなたはもういないけど、ずっとずっと。

竜司が――」


 涙を拭う。

 吸い終えたタバコを仕舞う。


「ありがとう。バイバイ、竜司」


 その言葉に答えられるのは、きっと竜司だけ。

だから、イヴは何も言わなかった。

涙を拭い、背を向けて歩き出した彼女をイヴはただ見つめていた。


 車に乗りこみ、走り去っていく舞依。


「ごめん、ありがとう」


 誰かがそういう。

その場に残ったタバコの香りは、煙たくてむせ返りそうだ。

きっと流れる涙も、タバコの煙が目に染みたせい。

イヴは自分にそう言い聞かせた。


「よーし」


 両手で顔をはたく。

いつまでもくよくよしてはいられない。いつまでも過去に囚われているわけにはいかない。

今の自分は、だって。


「六道イヴだからな。おい、綾香、凛」


「はい!」


「イーちゃん!」


「お前らありがとな。さ、帰ろうぜ」





舞依編おわり。

次回からは日常編に戻ります。

俺自身、物語をリスタートさせるため、イヴ、綾香、凛主軸の物語になっていくと思います。


ポイント、感想おなしゃす!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新感謝です。 陰ながら応援してます。 追いついてみたらなんと…。 舞依さん…。 刺さるキャラクター過ぎて辛い…。 悲しいですが、これからも作者様の思い描くお話が見れたら嬉しいで…
[気になる点] 舞衣....... 戻ってきてくれ.....
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