121冷戦
薄暗い部屋。月明り刺す部屋には5人の目が光っていた。
最初に動いたのは綾香だった。
ゆっくりと布団から抜け出すと、這いずってイヴの布団へと向かう。
ガッ――……
足を掴まれた。
(抜け駆けはさせないんだから♡)
細い足首を掴んでいたのは凛である。
(くっ……ロリビッチ!)
なんとか腕を振りほどこうとするが、凛は両手で足首を掴むと綾香の身体を逆に布団のほうへと引きずりこむ。
闇に光る凛の目。それは女子高生ではなく闇に蠢く化物の目をしている。
(フフ、お姉ちゃんは凛さんに捕まってるわね……そのまま二人でじゃれあってるといいわ!)
隙を見てユリカも動き出す。
姉と同じように自分の布団から這いずりだすと、そのままゴキブリのような動きでイヴの布団へ――。
何かが頭に当たり、行く手を阻まれる。
何か硬い石のようなものにあたると、ユリカはその場にのたうち回りだす。
「ご、ごめんなさい……」
当たったのは千鶴の頭である。
寝返りを打った千鶴の頭が高速で移動していたユリカの頭と正面衝突をすると、二人の頭にたんこぶを作っている。
「あ、わ、私こそ……」
気まずい空気だった。
千鶴もユリカもあまり話したこともなく、互いに気が知れた仲ではない。
ユリカは愛想笑いを浮かべているし、千鶴も申し訳なさそうにしている。
「いい加減離せロリビッチィ!」
「離したら綾香ちゃんはイーちゃんの布団に行くでしょう♡ させないわ、そんなこと♡」
ひそひそ話でぶつかりあう二人。
綾香はまだイヴのほうへと行こうとしているし、凛もそれを阻止せんと綾香を引きずりこんでいる。
「うーん……」
一瞬ビクリとする四人、イヴは何かうなされたように声をあげると寝返りを打っている。
バレてしまったかと焦るが、少し沈黙が訪れればイヴはまた寝息を立て始める。
(オホホホホ♡ 六道はわたくしが頂きましてよ)
イヴの隣に眠っていた桃子が寝返りをうちイヴと距離を詰める。
そのまま少しずつ身体を寄せるとイヴの背中へと張り付く。
(あぁ……この香り、六道の香りですわ。少し潮の香りがまじって……とってもスウィーティーですわ)
しかし当然、そんな抜け駆けが許されるはずもない。
接近していた綾香が桃子の首根っこを掴む。
「凛さん引きずりこんで」
「あいよー♡」
「ああああああああ」
凛が綾香の身体ごと桃子をイヴの布団から引き抜く。
綾香と凛の力に勝てるはずもなく、縦ロール先輩はすぐにでも凛の布団へと押し込まれる。
「ももちゃん先輩はちょっとここで良い子しててね♡」
「縦ロール先輩、はい、縄」
「な、何をなさるの!」
桃子の身体を綾香が素早くしばりあげ、凛がその口に猿轡をする。
あまりに素早く連携のとれた動きに、桃子はなすすべもなくあっという間にグルグル巻きにされると部屋の隅へと投げ出されてしまう。
「んんー! んー!」
「ももちゃん先輩静かにね♡」
「はい、一人脱落ね。さて、次は……」
残るは綾香、凛、千鶴、ユリカである。
綾香と凛が自然とタッグを組んでいるのを知ると、千鶴とユリカも顔を見合わせて頷く。
そう、別に残るのは一人でなくともいい。
二人残ってもイヴの右と左と分け合うことが出来る。
一人がイヴの右側へ、一人がイヴの左側へ寝ればいいだけである。
元々イヴの両隣は桃子と美里が眠っていた。
桃子は脱落したので、あとは美里が残っているが、美里も眠っているし勝負が終わった後に移動させればいい。
綾香&凛VS千鶴&ユリカのタッグが組まれる。
「凛さん、私がユリカを抑えるから、千鶴さんをお願い」
「あいよ♡」
「はっ、ばか姉が何か変なこと言ってる。かかってこいよバカ姉」
「わ、私は別に……」
「ちーちゃん、これは戦争なんだよ♡ 慈悲もくそもいらないんだよ♡」
這いずっていた四人が立ち上がる。
部屋の隅へと追いやられた桃子が四人を睨みながら唸り声をあげる。
「んん……トイレ……」
イヴの声だった。
起き上がったイヴに、四人はすぐさま横になると眠ったフリをしはじめる。
不自然すぎる寝姿の四人であったが、寝ぼけ眼のイヴはあくびをしながら寝室を出ていく。
廊下のほうから扉を閉める音が聞こえると、再びイヴが戻ってくる。
「んん……あれ、俺の布団……まぁいいや」
といってイヴは美里の布団へと入っていく。
(な、なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?!?!???!!!??)
(イーちゃんそこはみーちゃんの布団!!!!)
(い、イヴったら寝ぼけてんのかしら)
(なんで私の布団に入ってこねーんだ? お?)
しかも寝ぼけているからなのか、イヴは美里のことを後ろから抱きしめるとそのまま寝息を立てている。
これで、イヴの隣に眠れるのはあと一人だけになってしまう。
「もうこうなったらさ、戦いは止めにしましょう」
口を開いたのは綾香だ。
「戦っても仕方ない。睡眠時間が減るだけ。ここはじゃんけんで決めましょう」
「それもそうだね♡ じゃ、さっさと決めよう」
「はいいくよー、じゃーんけーん」
♡
「んんっ」
後ろから抱きしめられていた美里が色っぽい声を出す。
どうしてか。
後ろから抱きしめていたイヴが乳を鷲掴みにしたからである。
どんな夢を見ているのか、イヴは悩ましく苦しそうな顔をしながら美里の乳も揉みしだく。
「あっ……んっ……ゃぁ……」
眠ったままに美里も声をあげる。
「ん~……あ、あと少し……かならず出しますから……」
わけのわからない寝言がイヴから漏れる。
イヴの力は強くなると美里の乳を一生懸命こねくりまわす。
「あっ……ゃ、ゃあ……」
美里も美里で目を覚まさずにいる。
ただその顔は徐々に色っぽくなると身体をもじもじと動かしている。
「早く……んん……」
「ぁ……み、右がいいです……」
お互い通じない言葉がやりとりされる。
交わらぬ言葉は互いの見ている夢のせいだろう。
最後に一度ビクンと身体を仰け反らすと、美里はそのまま安らかな寝息を立てる。
イヴも夢が終わったのか、手はそのままだが力が抜ける。
もうそろそろ海の向こうには日が昇りそうで、空は徐々に青さを広げていた。
ポイントおなしゃす!!!!!!!!!!!!
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