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119夕海とカレー

 ひぐらしのなく声が切なげだ。

夕日が落ちそうな空は橙色に染まっていて、昼間コバルトブルーだった海は今は橙をしている。

もともと昼間ですら人の少なかったビーチには、もうほとんど人がいない。

海岸の端のほうを見れば遠くのホテルに明りが灯っている。


 昼間着ていた水着が、今はベランダで干物になっている。

明日の朝には乾いて、また昼間には着替えて海に出るのかなとイヴは思う。

ベランダから海を眺めていたイヴは頬杖を突きながら、今は静かな波を聞いていた。


 背後からはイツメンたちの声が聞こえてくる。

こうやってプライベートの時間に友人たちと過ごせるのに、心はどうしてか切ない。

海の景色がそうさせるのか、それとも楽しすぎてこの時間が終わって欲しくないからなのか。


(ああああああ、イヴさん、いいです。最高です。あああああああああああ、しゅきいいいいいいいいい!!!)



 うつ伏せになって一眼を構えるユリカがシャッターを切る。

イヴの背後からパシャリ。そのきゅっとした足首が、潮風に揺れるスカートが、橙に染まる金髪が。


(最高に綺麗です。もう何枚だって写真が撮れるッッッ!!!)


「ちょっとユリカ、きったねぇ布見せないで」


 姉の綾香が声をかける。

何故ならユリカは上にTシャツしか羽織っておらず、うつ伏せ状態になるとおぱんつが全開状態だからである。

大人になれない布パンツ。そこから伸びた子供あんよが機嫌よさそうにバタ足している。


「うるさいなぁ。撮影の邪魔しないで」


「おぉん?」


 わざとらしく綾香がレンズの前に居座る。

ユリカはむっとしてファインダーから顔をあげると立ち上がって他の角度からイヴを撮影しようとする。

撮影しようとすると、また姉が前に立つ。


「マジで邪魔」


「イヴばっか撮ってんじゃねーよ」


「私イヴさん撮るために来たんだけど???」


「おねーちゃんのことも撮っていいんだが? おら、実姉の色気を映せオラ」


 わざとらしく肩をだし、Tシャツをめくっておへそを見せる綾香。

だが、そんな姉の姿を撮るはずもなく。ユリカはレンズに蓋をするとカメラバッグに一眼を仕舞う。


「バカ姉のことなんてシャッター切るどころかレンズにすら映したくないんだが???」


「おねーちゃんのことも撮れよオラ!」


「おかーさぁん! おねーちゃんがウザい!」


「すぐそうやってママに頼る!!! ユリカはママがいないと何も出来ねーのか?」


「はぁ? 一番手っ取り早く姉を黙らせよとしてるだけですが?」


 またバチバチしだす小林姉妹。

声をかけられたはずの母からの返答はなく、代わりに一階からは大人組の笑い声だけが響いてくる。


「綾香ちゃん姉妹は仲いいねぇ♡」


「そ、そうなの、かな……?」


 美里の膝の上でダレていたいた凛が呟く。

凛もここは女子だけだからと薄手のパーカーに下はおぱんつ丸出しの格好である。

女子だけだとどうもだらけてしまう。

ただ凛のパンツはユリカのとは違い、ちゃんと大人セクシーな黒のレースではある。


「て、てか……凛ちゃん……おぱんつ……見えてるけど、は、はじゅかしくないの?」


「別に女だけだしねぇ♡ 気遣うこともなくね?♡」


「そ、そうかなぁ」


 美里にその感覚は分からない。

さすがに気の知れた友人たちといるといても、さすがに上も下もちゃんと履いている。

大胆な格好のユリカと凛がちょっとだけえっちに見えて、美里の目はあちらこちらと泳いでしまう。


「みんなーはやいけどご飯食べる? カレー出来たよ」


 下からあがってきたのは千鶴だ。

旅行とあってもその正統派美少女メインヒロイン感は薄れてはいない。

Tシャツに短パンという格好だが、その上にはエプロンという鎧を身にまとっている。

のんだくれた大人組に代わり、千鶴は率先して夕食の準備に取り掛かっていたわけだ。


「ちーちゃんがいると助かるねぇ♡」


「メイドさんたちも皆さん酔っぱらってらっしゃるから。それに私に出来ることがあるならしたいしね」


「凛もちーちゃんみたいに料理出来るようになりてぇな♡ みーちゃんは料理出来る?」


「か、カップラーメンなら」


「それ料理じゃねーよ♡」


「へへへ……」


 一階のリビングへと行くといくつもの空いた缶や瓶が山を築いている。

とりあえずテレビ前のテーブルだけは手付かずだったので、そちらへと盛り付けたカレーを運んでいく。

室内には大人組の笑い声が絶えず響き、波の音はない。


「そこで俺はいってやったのさ。お前の銃はマグナムじゃなくてコルトだろってな」


「ぎゃははははははははは!!!」


「いーひっひっひっひ!!!」


 何が面白いのか、マイクのアメリカンジョークに小林母とメイドたちの爆笑が起こる。

話が面白いというよりはもうその場の空気が面白くなってしまっているのだろう。


「えぇと、酔っ払いどもがいちにいさんしぃごぉ、ろく……」


 目に入った酔っ払いどもをユリカが数える。

とりあえず全員出来上がっていて、ユリカはこの日はじめてイヴ以外の人をカメラに収めた。

映されたのは酔っぱらった母と白人とメイド多数。


「お魚とかエビがいっぱい余ってたからシーフードカレーにしちゃった」


 ごろんとエビや切り身が入ったカレーから漂うスパイシーな香り。


「やっぱちーちゃんは料理うまいなぁ。絶対いい嫁になるよね。俺予約しとこうかな?」


「ば、ばか! 予約だなんて」


「えー、ダメなの?」


「だ、ダメじゃないけど」


「じゃー予約するわ」


「もうっ!」


 キャッキャするイヴと千鶴。

そんなやりとりに綾香はスプーンを片手でへし折る。


「ちっくしょう、私も料理出来るようにならねぇと……!」


「綾香ちゃん料理できるの?♡」


 カレーを一口頬張りながら凛が訪ねる。

綾香の顔を見れば悔しそうな顔をして俯いている。たぶん、料理は出来ないのだろう。


「り、凛さんは出来るの?」


「ちーちゃんほどじゃないけど♡ 一般家庭料理くらいなら♡」


「くそっ、どいつもこいつも」


「オホホホ、料理が出来ないならシェフを雇えばいいじゃない!」


「縦ロール先輩は黙ってて」


「だ、誰が縦ロール先輩よ!」


「ももちゃん先輩以外縦ロールいないけどな♡」


「この縦ロールは専属のスタイリストにいていただいた……!」


「おいちー。ち、千鶴しゃん、お料理……上手」


「まだあるからおかわりしてね」


「ちょっとわたくしの話まだ終わってなくてよ!!!」


「縦ロール先輩うるさい」


「ぐぬぬぬぬぬぬ」


 大人組ほどの笑い声は起きないが、それでも女子高生が複数集まればこちらも会話は絶えない。

いつの間にか縦ロール先輩こと桃子はいじられキャラになっているし、千鶴の作ったカレーからはじまった話題は葉を伸ばしてあちらこちらと話題が移る。


「そ、そうですわ! わたくし花火持ってきましたの! 暗くなったら皆さまで花火をしましょうよ!

オホホホホホホ! わたくしったら後輩思いでしょう!」


「おー、花火いいっすね。やりたい」


「凛もイーちゃんとヤリたい♡」


「おい、ロリビッチ違う意味になってんだろ」


「いやん♡」


「いやん♡ じゃねーよ。他人様の別荘で発情してんな」


「綾香ちゃんだって万年発情期だろ♡」


「ウサギか私は。私はここぞというときだけ発情するから」


「発情はすんのかよ♡」


「もーお食事中に発情だの言わないの」


「そーだそーだ。バカ姉の発情とかマジで吐くわ」


 千鶴がピシャリいうと話題が一つ終わる。

しかし、じゃぁ次はと花火がどうのこうのと話が始まる。


 カランと音を立ててスプーンが皿の上に置かれる。

空になった皿が数枚。千鶴がすぐにでも皿を回収するとキッチンへと運んでいく。

美里もあとをついていくと二人して皿洗いを始めている。


「ち、千鶴しゃんは……料理得意でいいなぁ……わ、私包丁も……握ったことないから」


「そうなの? じゃぁ明日一緒にお料理しましょうよ」


「ぃ、いいの?」


「せっかくだし。二人でお料理したほうが楽しいし、想い出になるでしょう?」


 微笑みかける顔が可愛らしい。

美里もへへへと笑いながら返す。


「ち、千鶴しゃんは可愛いし、お料理も出来るし……女子力高いよね……」


「そんなことないよ。それに女子力というなら……」


 視線がそのデカすぎる乳に刺さる。


「こ、これは遺伝だから! じょ、女子力じゃないし!」


「フフフ♪ そうやって慌てるところがまた美里さんは可愛いね♪」


「も、もう!」



一言でいいから感想ほちいです!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] しゅき!釈迦!
[良い点] アンニュイなイヴ。 尊み力53万。 [気になる点] そこはコルトじゃなくてデリンジャーだろマイクww [一言] 花火か。 女の子だから手投げロケット花火とか手打ち打ち上げ花火とか ガンキャ…
[一言] 縦ロール先輩こと桃子が、いじられキャラに定着した瞬間であったww。
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