性別・女
「目覚めたか」
「あなたは……へっ!?」
口を開いた瞬間、俺は自分の体の違和感をはっきり自覚した。なんだか顎が小さくなった気がして、声も異様に高い。
そして、胸の前に柔らかいボールが2個付いていた。
「な、なん……なんなん!?」
「落ち着くのだ山田一郎。おまえの肉体は損傷が激しかったので、比較的マシな状態だった雪野萌の体に精神を移し変えたのだよ」
「いやそういうの本当にやめてください凄く嫌なんで」
「うん? では表現を変えよう。おまえの肉体は元々キモい見た目なので修復する気分になれなかった」
「もう嫌だ生前も死後も!」
ウソダドンドコドーン! 体に慣れていないせいか、生前のチー牛ボディよりさらに滑舌が悪くなっている。
しかし銀髪美少女の声でアウトプットされるため、俺の声なのに無駄に可愛い。
くそっ。そう思って俯いた俺の視界に、自身の銀髪と全裸の肢体が映り込み、慌てて眼を閉じる。
「まあ、慣れるまで時間は必要だろう。そこはおまえ次第だ」
「……やっぱり雪野も、ダメだったんですか」
「そういうことだ。しかし、それを救おうとしたおまえの意志は立派なものであった。よって転生が認められたのだ」
「いや、そういうのいいです。だから……俺はもう終わりでいいんで、雪野の命を戻してあげてください」
「なんと? うむ……では山田一郎、我の眼を見てみよ」
この声の主は「神」というか、うまく表現出来ないけどそういうアレなんだろうか。俺はおそるおそる、その声のほうに顔を向け、閉じていた眼を開いた。
後光が差して全身の装飾がキラキラ輝いている、巨乳のスタイル抜群美女だった。やっぱり巨乳じゃないか!
「なるほど。『俺はもう終わりでいい』という言葉は、嘘ではないようだな。何故、おまえはそのように自身の命を捨てられるのか?」
「俺が自分に、生きている価値を感じないからです。元々の世界でも、おかしくなった世界でも……この次に用意された世界でも」
「なかなか面白いことを言うではないか。おまえには無くて、雪野萌には『それ』があると?」
「わかりません。人と比べるようなものでもないと思います。でも、多分……あいつは生きていたかったんじゃないかなと」
「それが、おまえの考えなのだな」
神のお姉さん(仮)はゆっくりと視線を落とし、タバコというかキセル? みたいなものをどこからともなく取り出して咥え、虹色の煙を吹き出し始めた。
「よし。ではその体に、雪野萌の命を戻そう」
「そうですか。良かった。じゃあ俺はこれで」
「しかしな。実はその精神を、もう別の世界線へと放ってしまっているのだ」
「え」
「だから、おまえを同じところへ送ろう。既に雪野萌は他の何かに転生しているはず。山田一郎、おまえはそれを探し、再び出会うのだ」
こいつ、また面倒なことを言い出したぞ。
「探してみろ。雪野萌のすべてを、そこへ置いてきた」
「いや絶対それ言」
ザン……!!
何かが落下したような音と共に、俺の意識は途切れる。
いや絶対それ言いたかっただけですよね。
世は、大捜索時代を迎える──!!