表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/27

初授業・体育

 俺達は高校敷地内の離れにある、だだっ広い道場で正座させられていた。


 ホームルーム後がいきなり柔道の授業、というスケジュールなのだ。


 ごわごわの真新しい道着。帯の結び方もイマイチしっくりこない。あれ? 着物は左が前でよかったんだっけ?


「俺がァ! 体育の授業と! 生徒指導を担当するゥ! 鬼岩鉄(きがんてつ)厳象(ごんぞう)だァッッ!!」


 モヒカンに(ひげ)に身長190センチメートル超、体重は……想像もつかないが150キロくらいか? とんでもない怪物がこの授業の先生らしい。本当に帰りたい。


「よォし! 早速だがウサギ跳びだァ!! 全員、道場を30周ゥゥ!!」


「えーっ!?」


 俺たち生徒の悲鳴が響く。


 このモヒカン髭、いつの時代の人類だよ。たしかウサギ跳びって(ひざ)によくないとか言われてるんじゃないのか?


「先生! ウサギ跳びは非科学的です! そのような指導は間違っています!」


「なんだとぉ貴様ァ!? 名乗れェい!!」


「私は指野見(さしのみ)! 指野見茶池子(さちこ)ッ!!」


 二人ともどんな名字だよ。そう思いつつ、俺はモヒカン髭の後ろに位置する道場の窓から、高校の敷地に広がる緑を眺めていた。4月はこんなテーマパークみたいな学校じゃなかったぞ絶対。


「ほう? 俺様に逆らうというんだなァッ!? では貴様らの中から代表を選ぶがいい。俺様に柔道で勝てたら、ウサギ跳びは免除してやるゥ!! ついでに単位もくれてやろう!!」


 あー。じゃあ誰か、頑張ってね。あと教員が「俺様」とか「貴様」って言うのダメでしょ。知らんけど。


「やってやろうじゃねえか! 俺は中学時代、柔道で県代表! 馬流戸(ばると)角竜(かくりゅう)ッ!!」


「ホウ! 少しは楽しませてくれよォッ!!」


 突然叫びながら前に出た馬流戸って、こいつさっき俺に足を引っ掛けてきたモヒカンじゃないか。その性格で、その名前で、その髪型で、柔道の県代表なのか。


 畳に引かれた四角いラインの中央で、モヒカン二人が対峙。先生には及ばないものの、馬流戸もかなりデカい。


「先生、開始の合図はいいのかいッ?」


「そんなもの要らぬわァッ!! ヨーイドンでしか闘えぬ者は! 武道家とは呼べぬ!!」


「へッ、そうかい」


 そう呟いたかと思うと、仁王立ちの先生に馬流戸がいきなりタックルを仕掛けた。速い。レスリングのような動きだ。


 ドッ。


「な……何だとォ」


 かなりの勢いで激突されたにも関わらず、微動だにしないモヒカン髭先生。


「どうした? それで意表を突いたつもりかァ? では見せてやろう、これが『()(セン)』だ」


 そう言い放つと、先生は脚に張り付いていた馬流戸の頭部を掴み、引き剥がし、野球のピッチャーみたいにブン投げた。


 ズォァッ──ドゴォッッ。


 水平に飛んでいき、道場の壁に突き刺さった馬流戸。そのままピクリとも動かなくなった。


 いや柔道でそんな投げ方したらダメだろ。


「がははははッ勝負アリィィィィッ!!」


「あら先生、ヨーイドンですわよ?」


「何ィ!?」


 驚いたのは、その場に居合わせた全員だったろう。


 声のほうに視線を向けると、先生のバカげた巨体がするりと持ち上がり、今まさに叩き付けられようとしていたのだから。


 それも小柄な美少女、指野見茶池子の手によって。




 いきなり濃い奴らが出てきましたァッッ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ