ひとつ
「雪野?」
「さっき、私がこの神様……創造主を『ラスボス』って呼んだの覚えてる?」
「セーブポイントはない、とか言ってた時のやつか」
「そう」
雪野はさらに温度を上げる。熱された俺の肉体は蒸発と修復を繰り返し、泡立つような音を発している。
「全てを思い出した時、私も死のうと思った。山田くんと同じように。だから私という剣で、この世界を終わらせてほしかった」
「その場合、終わらせたのは俺か雪野か、どっちなんだろうな」
「そうだね。どっちだろう」
雪野の声、感情は何時の間にか、直接に俺の精神へと流れ込んできていた。
その刀身が熱くなりすぎて溶け、物理的な意味で俺の体組織と一体になりつつあったのだ。
「神を斬れば、物語は終わる」
その言葉を最後に、俺はもう喋るのをやめた。必要がなくなったから。
俺は雪野を理解した。私は山田くんを理解した。
俺は、私は、ひとつになった。
そうか、雪野は「チー牛の俺」に憧れてたのか。そうだよ! 言ったじゃない、ちょっとクールな第一印象だけど、やる時はバッチリ決める人だって。あれは本当に、俺のことだったんだな。うん、本当にカッコ良く見えたんだよ。たとえ鼻の頭テカテカしてたってね。うるせえな。えへへ、ごめん。きっかけって何かあったかな? 消しゴム貸してくれた。それ……いつの話だよ?
「宇宙の理……スキルシステムが壊れた今の状況で『ひとつになった』のだな。雪野萌、そして山田一郎。もう雪野萌でもチー牛でもない」
だから神のくせにパクリ発言やめろって言ってんだろ。あ、でも、これって? そうみたいだね、神様も私の……私たちの記憶の何処かにあったもので構成されてるんだよ。この宇宙全体。テンプレって言ってうんざりしてたけどさ、そもそもテンプレという概念も、俺たちの持ち物なんだよな。それで思い出した、あのさ、雪野って広島東洋カープのファン? お母さんが熱狂的なの。あー、それでか。
「おまえ……いや、アルフォン・カパデミアも含めた『おまえたち』よ。ひとつになった上で、この世界を終わらせるつもりなのか?」
乳神の顔だけでなく、声にも表情は無かった。その乳神っていうのやめない? やっぱり男の人ってそういうとこばっかり見てるよね。いや、ごめん。でも雪野もアルの顔めっちゃイケメンって思ってるやん。それはそれじゃん事実なんだし! はいはい。こういう時は男の負け。うるさい私は悪くないもん。はーい。
「……なるほど、我も『同じこと』か」
俺たち、まだ何も考えてないのに察してるよこの神様? んーん、考えなくても結論は出てるから。ああそういうことね。うん。
さて、ぼくは歯車に過ぎないって確信も、言葉も、これから覆るってことか。そうだよ、アル、あの時の俺は何も出来なかったけど。ただアルの死をそばで見ているだけだったけど。今は、これからは違う。
俺たちの体温は、体感で一兆度に達しかけていた。宇宙の理が壊れても残ったスキル「不死」は、無限に化学反応を繰り返していく。際限なく、熱くなる。
文章読みづれえッッ!!!!




