聖剣伝説
ゴッッ!!
突然、聖剣の柄が俺の口元を激しく殴打した。
「クゥア」
俺は思わず叫んでいた。激痛に目が覚める。しかし、その暴力はさらに激しさを増し、俺の顔面をぐちゃぐちゃにどつき続ける。
ゴッゴッゴゴゴゴゴッッ!!
「うばしゃあああ」
口から迸る鮮血。濃い味。マジで痛いです。やめてほしい。
あ、でもこれって「テンプレート」を破壊しようとしてくれてるのか。
「なっ、その剣は!? このクソチーギュ、剣を離しなさいィッ!!」
マイコ・ラスが叫んでいるけど、俺は何もしてないし動けない。聖剣リイグスターが意思を持ってるのか知らんけど勝手に暴れてるんだ。
「止まらないなら! テメエの腕ごと叩っ斬ってやるよォォー!!」
ズバグッ。
向かってきたマイコ・ラスを、聖剣は一刀両断にしてみせた。こいつマジでやりやがった。
「がッ……」
肩口から真二つにされたマイコ・ラスは崩れ落ち、絶命。
「きゃああああッ!!」
「ラスさんが!!?」
「チーギュ・エルドレッド……えげつねェ……」
ガキュッ。
返す刀で、俺の顎も吹っ飛ぶ。痺れるような感覚が走り、リイグスターは俺の顔面ごとテンプレートを取り出した。
ザギャギャッ!!
宙に浮いたテンプレートは、俺の歯茎ごと微塵切りにされた。えげつねェのはこの聖剣リイグスターのほうだ。
刹那、暗転。
出血で俺の意識が途切れたのか? いや「不死」のスキルがあるから、それは違うだろう。
≪宇宙の法則が乱れる!≫
また視界に出たよ謎字幕。と思った瞬間、俺は蒼い宇宙にいた。
調子が悪いPCに出てくる機械語のような、記号混じりの英単語が、俺の視界を駆け抜けていく。
「どうなってんだ……」
「私が『宇宙の理』を破壊したからです」
「えっ? 誰?」
謎の空間に突然、女性の声が響き、俺は狼狽した。
「私です。聖剣リイグスターです! テンプレが壊れたから、今は私も話せるみたいね」
「リイグスター? 剣が意思を持ってるのか」
「そう。チーギュ・エルドレッドさん、そしてアル様! この時をずっと待っていました。私の体に伝わってきます……懐かしい何かが」
懐かしい? どういう意味だ?
「すみません、話は後ですね。おそらくは今からラスボス戦に突入します」
「ちょ待てよ。ラスボスって何?」
「チーギュ……いえ、『山田一郎くん』。あなたにとっての敵は、『この世界そのもの』なんですよ」
≪スキル「次元斬」を使用します≫
ザンッ!!
紙を破るような音を聞いたかと思うと、リイグスターは目の前の空間を切り裂いてしまっていた。
「さあ、今やこの世界に『セーブポイント』はありません。覚悟はできていますか!?」
聖剣の声は、何故か少し笑っているように聞こえた。
「セーブが無いなら、覚悟もクソもないよ」
「仰る通りです。では、この空間の外へ!!」
俺は超音速で空間の裂け目へ突入。
超展開ッ!! 宇宙は、山田はどうなってしまうのかッ!!?




