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最初のホームルーム

「では皆さん、少し時期は遅くなってしまいましたが! あらためまして、担任の魅香華(みかげ)流々(るる)です。これから一年間よろしくお願いしますねっ。うふふ」


 誰だよ。この乳と尻の化け物は。4月はヒョロヒョロのおばさんだったはずだろ。教師がそんなミニのタイトスカート履いちゃダメだろ。いや生徒も全員おかしいけどさ。


「初日なので、今から自己紹介の時間にしましょう! あいうえお順にお名前と、何か一言お願いね。それじゃっ、愛河さんから」


「はーい」


 早速、悪夢の時間が始まる。


 それぞれの生徒が前に出て自己紹介を始めるのだが、「キリンを飼ってます」「特技は暗殺術です」「愛されるより愛したい」など、ウケ狙いなのか本気なのか知らんがメチャクチャなことばかり言っては謎のポーズを決め、席へ帰っていく。


 まず、こういうの苦手なんだよ。俺の特徴なんて「毎週チーズ牛丼食ってます」くらいしかないぞ。


 ましてこんな化け物みたいな個性の連中に並んで、俺に何があると言うんだ。既に動悸(どうき)がして、腹が痛くなっている。


「じゃあ次……山田くん! 山田、一郎くん。前に出てきてね」


 ああ、嫌だ。


 俺はゆっくりと立ち上がり、とぼとぼ教壇のほうへ歩いていった。


 ガッ。


 俺は何かに(つまず)いて、盛大に前転した。その瞬間、なぜか世界はスローになる。


 俺は躓いた左足を見た。あ、横の席に座っていた悪人面のモヒカン筋肉野郎の仕業だったのか。雪駄(せった)を履いた足をこちらに滑らせ、俺に引っ掛けていたのだ。


 ゆっくりと回る自身の体が、ふわふわと浮くように軽く感じる。俺は手近な机に片手を突き立て、体勢を戻そうとして力を込めた。


 ギャルルルルッスタァァン。


 俺は机を押した勢いでほぼ真上に飛び出し、空中で2回転に4回ひねりを加え、綺麗に両足を揃えて先生の真横へと着地したのだった。


 何だ今の!?


「きゃーっ山田くんかっこいいーっ!!」

「山田くんすごーいっ!」

「ヒューヒュー!!」

「チッ、目立ちやがって」


 教室は大歓声に包まれた。


「ふふっ、山田くん第一印象からやってくれるじゃない。先生もちょっとドキドキしちゃったぞっ」


 まさか。


 俺まで「そっち側の人間」になってしまったのか?


「えー……やや山田一郎です。好きな食べ物はチーズ牛丼ですよろしくお願いします」


 俺は初っ端から噛んだ上に早口という恥ずかしい挨拶を済ませ、そそくさと席に戻った。


「きゃーチーズ牛丼! 私も一緒に食べたい」

「何よぉ! 山田くんと最初にチー牛デートするのは私よ!?」

「はいはい、皆さんお静かに! 次は雪野さんよ」


 俺は机に突っ伏して頭をガリガリ掻いた。狂ってるのは世界だけじゃなかった!


 俺もまた、既に狂っていたんだ。


 しかも恐ろしいことに、このおかしさに気付いているのは俺ひとり。たった独りなんだ。くそっ。


 ……いや待て。落ち着こう。まだ俺が孤独だと決まったわけじゃない。


 この世界に、俺と同じように違和感を覚えている人間が、まだ存在するかも知れない。




 どんな感想でもぜひください! ちなみに私もチーズ牛丼大好きです!!

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