パーティ編入試験
「な、なんだってー!?」
「嘘だ! こんなひ弱な子供が『巨人殺し』だなんて」
「強いとか別にしてさぁ、あの子ちょーかわいくなーい!?」
ギルド中の人々やヒトじゃない奴らが、俺の噂を始めている。この居心地の悪さよ。
「ブルージャイアントを討伐したらしいあなた! その力を試してあげるわ!!」
よく通る声に振り返ると、指野見茶池子が華やかな鎧を着て、腕組みをしながら立っていた。後ろに屈強な男たちもいる。知り合いらしい。
「あ、指野見さん?」
「サシノミ? あら申し遅れましたわね。私の名は! マイコ・ラス!!」
なんで名前が巨人寄りなんだ。
「あ、じゃあラスさん、『転生』については何かご存知ですか?」
「転生? ふっ、それは貴方が使い物になるか次第ねぇ。私のパーティ編入試験に合格できたなら、話してさしあげても宜しくてよ?」
相変わらず挑発的だな。っていうか、なんで前の世界からキャラクター使い回してるんだここ? モヒカン髭先生なんてモンスター扱いだったぞ。
「わかりました。俺は、どうすればいいですか」
「このギルドの敷地内に『修練場』があるわ。そこで貴方は、私と戦って力を示す」
「俺が勝ったら?」
「カパデミア兵A級の、上位よりさらに上ってことになるわね。もし勝ったらの話だけど!」
その青髪の美少女は高らかに笑った。つられて、周囲の人々や獣みたいな奴らも笑う。
「またマイコの奴が新人いびりか! こいつは楽しいぜ」
「ラスさんに勝つなんて百年早いんだよ!」
「せいぜい善戦してみろよ、1分も耐えればB級程度の実力はあるってことだからなァ!」
不思議な心持ちだ。俺のなかにアルの感覚が残っているからか、こういう騒ぎも悪くない……そう思えるようになってしまっている。
世界は「神の決め事」。自分も、この世界の歯車にすぎない。そうだとしても、アルはそれを受け入れた上で、希望を抱いて生きた。
「では試験を。未熟者ではありますが、手合わせお願いいたします」
俺はカパデミア式の一礼を、自身の巨乳を腕で支えるようなポーズをとってふんぞり返るマイコ・ラスへと向けた。
「うふふっ、ではそちらの扉より『修練場』へ出ましょう。心の準備はいいかしら?」
「はい」
ギルド内は野次馬で盛り上がっている。
「おい! 今から面白いもんが見れそうだ!」
「大恥かくのはどっちだろうな?」
「お、てめえマイコが負けるほうに賭けるのか!?」
「まあそれは無いだろうけどな、あの高慢ちきな女が無様を晒すとこに期待したっていいじゃあねえか」
「確かにな! このままじゃ国の男共があんまり情けねえよ」
ゴドッ。
脇に「修練場」と大きく書かれた扉が、マイコ・ラスの取り巻き連中によって開かれた。
あ、そう言えば字も読めるようになったんだな俺。
いざ勝負! また無双してしまうのか山田!!




