神の決め事
俺はアルに全てを話した。
元の世界でチー牛だったこと。突然その世界がバグったこと。その日のうちにトラックに撥ねられて死んだこと。とっさに庇った雪野萌の体に転生したこと。
エルドレッド号とかいうママチャリごと川に流され、青いモヒカンと戦って一日かけて倒したこと。森を走り抜けてカパデミアに辿り着いたこと。
アルがどのくらい理解してくれたのかはわからないが、時折頷きつつ、じっと耳を傾けてくれていた。決して聞き流したり、バカにしたりといった態度ではなかった。
「じゃあチーギュ、きみは『神様』に会ったんだね!?」
「あー、そうですね。たぶんですけど」
「神様はこの今『ここにある』世界……カパデミアが存在する世界と、きみが15年の間生きていた世界は『別のもの』だって言った。ということかな?」
「そのはずです」
「すごい! こんなことがあるんだな!!」
アルは声をあげて笑った。どこまでも俺を信じてくれる笑顔だった。
「疑わないんですか?」
「本当のことを言おうとしてるっていうのは、わかるさ。それに、こんな面白い話なんだよ。信じるほうが楽しいだろ?」
壊れた屋根から見える空は、少しずつオレンジ色に染まりつつあった。流れていく雲の影が空に奥行きをもたせている。
「チーギュ。くだらない話だと思うかもしれないけど、聞いてくれる?」
「は、はいっ」
「……ぼくはね。いつからだったか、この世界をどこか『作りもの』のように感じていたんだ。ぼくの思考、行動、悩みも、全てが『神の決め事』なんじゃないかと思うようになっていた」
アルの紅い瞳は冷たく、刺すように空を見つめていた。
「それが、初めてきみの姿を見たとき、また少し頭をよぎった。そして話を聞いた今、確信めいたものに変わったんだ」
「確信って?」
アルが、視線を俺に向ける。
「ぼくも世界の『歯車』のひとつに過ぎないんだろう? きみはそのことに気付いているはずだよ」
作りものの世界。それに気付いてしまった登場人物。
俺はアルに何を話せばいい? 俺はアルとは違うのか? それとも同じ?
「アル、あの……俺は」
「いいんだ。それでもぼくは『意志を持って生きてる』んだから。ふふっ、ああそうだった! こっちも、きみには本当の名前を言っておかなきゃね。ぼくは……我は、アルフォン・カパデミア」
ドグンッ!!
「え? カパデミア……え、今の、音?」
一瞬、体が揺れたような気がしたアルは、茫然とこちらを見ている。俺は少し視線を落とした。
アルの胴体が、くり貫かれていた。
≪アルフォン・カパデミア死亡≫
「アル!?」
俺はアルの手に触れた。その体がスッと砂のように崩れていくのを感じた。
≪アバター獲得≫
≪スキル継承≫
「やっと名乗ったなァ! おかげで見付けられたぜ、アルフォン王子!! まあ、もう聞こえねェだろうがなッ!!! ギィァハハハハァッッ!!!!」
ドロリと床から這い出るように姿を現した「何ものか」。それは禍々しい外見をしていた。
超展開ッッ! 何が起きているのかッッ!?




