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カパデミア王国

 兵士のおじさんに手紙と「案内所」への簡単な地図を書いてもらって、くぐった城門。まあ横から跳んで入ればよかったんだけど。


「ここはカパデミア王国だよ! お嬢さん、田舎から出てきたのかい?」


 RPG特有の「入口付近に立って街を紹介するモブキャラ」に曖昧(あいまい)会釈(えしゃく)を返して、俺は地図に書かれた案内所へと向かった。


 大きな城壁のおかげなのか、街は平和そのものに見える。


 さっきは跳んで入ればよかったなんて思ったけど、冷静に考えると魔法みたいな何らかの「防衛システム」があるのかも。でなければ、空からモンスターや敵国兵が侵入し放題だろう。


 異国情緒にあふれた街並み。遠くには高々とそびえ立つお城が見えている。権力の象徴だな。


 とは言え、さっき兵士のおじさんに「狭い通りや人の少ない場所は危ないから近付かないように」とクギを刺されたんだった。気をつけよう。




 案内所に着いた。あまり高速で移動するのもイキリオタク扱いされそうで嫌だったし、普通に歩いてきたら時間かかった。


 人の出入りが多く、活気ある大きな建物。さっきパニクってしまった恥ずかしい記憶が頭をよぎり、扉に向かう俺の足が止まる。


「……やっぱ俺、ダメだな。今日はやめとこうか」


 しかし、ここで諦めても何にもならないよなぁ。入ってイベントを進めるしかないのか。


「どうしたのッ? 美しいお嬢さん!!」


「うわぁ!?」


 急に肩を叩かれ、背筋がぞわっとなった。俺が慌てて振り向くと、そこには長身イケメンのチャラ男。長い剣に鎧にマント、持ち物の全てが豪華な野郎だった。


「おっと、我輩(わがはい)の魅力にビックリさせちゃったかな? ごめんよ! 君の名前は?」


「あ、あっ!? いやあの」


「慌てた表情も可愛いじゃあないか! いいね!! 我輩の妻にしてあげよう」


 両腕を掴まれ、引き寄せられる。いきなりヤバい奴が来たぞ。


 そうか、これは美少女の弊害。光と闇を立て続けに味わうのか俺は。


「いや、す、すいませ」


「何してんだてめえ! その娘が嫌がってるだろうが」


 不意に横から怒声。見ると、大剣を担いだオラオラ系筋肉イケメンだった。(ひたい)に傷痕がある。


「何だね君は。乱暴な物言いだな」

「乱暴なのはてめえのほうだろうが。さっさとその娘を離してやれ!」

「ふっ、このお嬢さんは我輩の妻となる人だ」

「人の運命を勝手に決めるなよ!!」


「ちょっと待ったぁ! 僕もその少女に興味が湧いたぞ」


 また今度は丸眼鏡のスラッとした細身イケメンが集まって来た。魔法使いっぽい見た目だ。


「てめえは何者だ!?」

「おいおい、この娘は既に我輩のものなんだよ」

「それはまだ早い。その美しい少女は、魔法使いの僕にこそ相性が良いとみたね」


「なぁ、あそこで何やってんだろ?」

「すげえ可愛い娘を取り合ってるみたいだぜ!」

「なんだって? 俺も参加しよっと」

「じゃあ拙者も!」

「なんの、小生も!!」




 えらいことになった。


 俺の回りをイケメンだったり全然イケメンじゃなかったり、とりあえず男20人くらいが取り囲んでワイワイ小競り合いを繰り広げている。突然の地獄絵図。


 当の俺は放ったらかしで、男だらけの戦闘が始まってしまいそうな雰囲気だ。


「美少女ってこんなに大変なのか……」


 俺の声が喧騒にかき消された時。気がつくと目の前には、深い赤の布を(まと)い全身を(おお)った何者かが立っていた。


「きみ、そろそろ逃げていいんじゃないかな?」


 その赤い布の奥から紅い瞳を光らせた男は、少年のような声で(ささや)く。


「は、はい?」


「まあとりあえず、いつまでもこの場にいる必要はないでしょ。ねっ」


 そう言い終えると同時に男は顔の布を少しめくって笑顔を少し見せ、その指先からこれまた赤い光を放ち、俺の体を包んだ。




 いきなり男性キャラが多数登場! そして最後の赤い少年は何者なのかッ!?

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