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美少女って、こういうこと

 ふと、俺は青先生が倒れていた跡を見た。大量の金貨や宝石のようなものが落ちている。


 俺がそれに触れると、≪100ゴルド≫≪500ゴルド≫などと表示されては消えていく。おそらく俺のものとしてどこかに貯蔵されているようだ。


≪所持金65500ゴルド≫

≪魔石280S≫


 ……所持金はわかったが、この「魔石」ってのは何なんだろう。っていうかお金の概念がある世界なのに、母は娘を一文無しで送り出したのか?


 何にしても、ここは所謂(いわゆる)ゲームの世界ってことだな。もしそうであれば、転生した雪野(ゆきの)がどこかに存在していても見つけられそうだ。


 だってここは「そのために創られた世界」ってことなんだから。


 あの虹色タバコの神様、俺の命に猶予(ゆうよ)を与えることで、死ぬことを考え直せっていう意味なのかな?




「……とりあえず、村か街を探そう」


 俺は何気なく呟いた。


 自分の体が発する声を心地よく感じるなんて、チー牛時代には考えられなかったことだ。当時は自分の声を聞くだけで死にたくなれた。


「どっちの方角へ歩けば……」


 あれ? わかるぞ。


 俺は自分の確信に、違和感を覚えた。頭に人やモンスターと(おぼ)しきものの座標が浮かんでいるのだ。


 さっき≪スキル習得≫とかいってたやつか? 東西南北も知らないのに、進むべき方角はわかってしまう。


 俺は歩き始めた。丸一日あの巨人と戦っていたはずなのに、何の疲労も感じない。それどころか、体がやけに軽い。あの巨体も、俺の傷も、全部あいつが見せる幻だった……なんてことはないよね?


「ちょっと走ってみるか」


 俺は軽く地面を蹴った。


 ギュザザザザザザッッ!!


「うわ、速っ!」


 自分の走る速さに驚いている。森の中、木々を分け入っているにも関わらず、まるで銃弾にでもなったような気分で、俺の体は風を切り裂いて進む。


 途中モンスターを何匹か見かけたが、俺はそいつらが反応するより早く通過してしまった。




「ふぅ、街が見えたぞ」


 城壁に囲まれた街の、大きな門の前に着いた。


 どうやら城下町らしい。さっき山から見下ろした感じだとかなり栄えているようだったからな。ここなら何らかの情報があるかもしれない。


「おまえ、何者だ。どこから来た。通行許可はあるか」


 鎧を着けた大男4人の門番のひとりが、淡々と厳しい口調で俺に問う。


 さて、どこから説明したものか?


「えー……あの、すいません。あのえー俺、いやわワタシ、村に住んでて、あのーそのあっちの川に流されて……あ、あそこの川で」


 あ、ダメだ。


 俺、コミュ障なんだった。


「あ、青い巨人に襲われて、戦って、その……きたんでしゅ……けど……あっ、入れていただけない……ですね、あっ、すいません」


 強面(こわもて)の兵士4人に囲まれた俺は話してる途中で顔が熱くなり、異様な汗をかきながらパニックになって場を逃れようとしてしまった。


「きみ、待ちたまえ!」

「ひどく怯えているようだ。きっとモンスターに襲われたのだろう」

「こんな美しい娘だ。悪い商人に(さら)われて、逃げてきたのかもしれないぞ」

「街に当てはあるのか? 力になってくれそうな人を案内しよう」


「え」


 その優しい声たちを背中越しに受けた俺は、思わず立ち止まる。


 おそるおそる振り返ると、4人は(かぶと)を脱いで(ひざ)をつき、精一杯と思われる穏やかな笑顔で優しく接してくれた。


「大丈夫。通行許可がなくても、難民として届け出ればいいさ」


 そう言った兵士は揃わない歯を見せ、パチッと片眼をつぶった。


 えっ? なんで皆、こんなに……あ。そうか。


 美少女って、こういうことなんだな。




 可愛い女の子でよかったね! 山田一郎!!

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