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89 突入

 帝国の最重要機関である帝城。

 それ故にいかなる時であろうと守りは固くしてあり、常に兵士が城壁の上や外に配置されている。


 また、その敷地内にも数は少なくなるものの人員は配置されており、帝城内は言うまでもない。


 革命軍からの暗殺を仕掛けられた事もあり、かなりの人員が割かれている。

 帝城に入るにも厳しいチェックを受けなければならず、物々しい雰囲気の場所だ。


 だが、今日はどこか閑散とした雰囲気が漂っていた。


 目に見えて少ない兵士達。常にどこからか聞こえてくる鎧がすれる事で鳴る金属音もなく、物静かな空間となっている。


 それはそうだろう、警備を強化していた原因である革命軍。

 その主軸たるメンバーが罠にかかったのだから。


 地下通路の事はとある方法により革命軍副リーダーであるニナから聞き出していた。

 であれば地下通路に戦力を向けて一網打尽にしようと考えるのは当然だろう。


 結果、今帝城には最低限の人員だけ残してほとんどの兵士達が地下通路へと向かっていた。

 今日をもって長きに渡る反乱分子との決着を着けると皇帝も力を入れている。


 そうなれば帝城に残った兵士達も気が緩むのを抑えられない。

 悩みの種だった敵対組織を一掃出来ると浮かれているのだ。


 そんな常よりも緩んだ雰囲気に紛れるように3つの影が城壁の人気がない一角に居た。


「でかい城壁だなー」

「そうだな!」

「ちょっと2人とも、もうちょっと隠れて下さい」


 ロイド、グラン、シエルである。

 彼らは地下通路で騒ぎを起こした混乱に乗じて救出に向かうべく城壁沿いに身を潜めていた。


 ド派手に暴れるからすぐ気付くはずだぞ、とギランが言っていたので、ならばとその時をのんびり待っているつもりだった。


 だが、いざ潜めて観察していると様子がおかしい。

 兵士の数は明らかに少なく、しかも私語なども聞こえたりと事前に聞いていたより明らかに警備が薄いのだ。


 それを疑問に思いつつも、まずは様子を伺うという事になり待機していたのだ。


「いやこれバレなくないですか?」

「…ま、まぁそうですね。どうしたのかしらね?」

「だよなぁ。兵士も見回りっていうより散歩だぜあれ」


 そう、たまに見回りをしている兵士達も警戒して周囲を見る事すらほとんどなく、ペアで歩いているもう一人と話しながら散歩しているようにしか見えない。


 いっそ罠を疑うレベルの状態に、シエルは慎重な対応を考えていたが、ここまでくると警戒しているのもバカらしくなってきてしまう。


「つーかそろそろ親父達が暴れても良い頃なんだけどな」

「そうなんですよね。ギランさん達、何かあったのかしら?」


 まさか道に迷ったりしてないわよね、と続けるシエル。

 心配なのはそっちかい、と脳内で呟くロイド。


「もう突撃していんじゃねぇ?」

「それなー。よし行くかー」

「ちょっと待って2人とも!」


 せっかちなグランに如月を助ける事に気がはやっているロイドはすぐにでも突撃したそうだ。

 とは言えギラン達が動きだしてからでないと兵士達がこちらに殺到する可能性もある。


「もう少し待ちましょう。ギランさんの事だし必ず分かりやすい合図がーー」


――ドクン


 シエルの言葉を遮るように鳴り響く音。


 いや、耳で音を聞いた訳ではない。

 しかし明確に、そしてなんとも言えない悪寒を感じさせる鼓動。


「……今のは…」

「地下から…?」


 3人は数瞬の沈黙の後に音の出所を察する。とてつもなく嫌な予感がする。


「っ!突入するぞ!」

「ちょ?!待って!」


 もし如月に何かあったら、そう脳裏によぎった瞬間にロイドは駆け出していた。

 シエルとグランも慌てて後を追う。


「城壁を頼む!」

「っ、わ、分かった!」


 叫ぶロイドにグランが応える。


 子供といえど革命軍カイセン支部の幹部だ。素早く魔力を高めて魔法を発動させた。


「『岩崩し』!」


 グランは詠唱もせず魔法を発動する。

 ちなみに、実はこれは詠唱破棄などではない。


 グランは子供ながらにその戦闘能力を買われて幹部へとなった。その1番の理由はこれにある。


 土魔法に関してのみだが、魔力を消費して現象を顕現する魔法な加え、実際に存在する物質にも少なからず干渉出来るという能力。


 これを作戦会議で聞いたロイドはおそらく土"魔術"ではないかと考えた。

 レオンもそうだと考えていたので間違いないだろう。


 そして今グランが放った魔力。

 それがぶつかった部分の城壁がまるで風化したかのように砂へと変わっていく。

 

 一瞬でぽっかりと開いた穴。

 そこにロイドは躊躇いもなく突っ込んでいった。


(待っとけよ如月!)


 ロイドの普段の飄々とした雰囲気は鳴りを潜め、鋭い眼光で帝城を見据えていた。


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