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87 魔法師団長ルビィ

 帝国軍魔法師団団長ルビィ。

 彼女はギランが引退する少し前、魔法師団の強化に帝国が取り組んだ際に登用された。

 新人として軍に入り、その才能と努力をもって瞬く前に団長へと成り上がったのである。


 高い魔力を保有し、火魔法に特に高い適正を示した彼女は圧倒的な火力という他の追随を許さない攻撃力を持っていた。


 さらに彼女はスキルを保有していた。

 一度発動した魔法陣を次の魔法陣を組むまでではあるが連続して使用出来るというものである。

 “連射”と名付けられたそのスキルは、彼女の火力と相性がよく、まさに鬼に金棒と言えるものであった。


 魔法を発動して再び発動するまでのタイムロスは魔法師にとって課題である。これは弱点と言ってもいい。

 それを補いつつ威力や攻撃力を高めるスキルを使いこなす彼女は、これまでジルバ王子を除く誰にも負けたことはない。


 彼女の功績で魔法師団という組織の株は急上昇しており、魔法師団にも団員が増えてきている。

 だが、人数が増えようとも変わらず彼女は魔法師のトップを守り続けていた。


 そんな彼女は、ひとつ野望があった。

 それは、ギランとの勝負、そして勝利である。


 彼女の登用はギランを倒す為のもの。しかし彼はルビィが戦場に送り出される前に引退してしまった。

 今は革命軍と呼ばれる反帝国組織も戦闘能力としては歯牙にもかけないレベルであり、彼女にとっては正直物足りないというのが本音だったりする。


 だが、何の因果か今日念願のギランとの対面を果たした。

 

 先兵として送り出したサファイはどうやら攻めあぐねているようだ。

 作戦会議にて自信がある様子だったし、実際有用な案だった為採用された案。


 だが、ギランはそれさえも上回ったようだ。


 ルビィはいけないと分かっていても喜びに口角が上がる事を止められない。


「なんだぁ?嬉しそうだなおい」

「む…すまない、失礼であった」


 その緩んだ口元にギランが眉をひそめて声をかけた。

 ルビィは口元を隠すように手を当てつつ謝罪を述べーー魔力を高めていく。


「ここであなたを討てると思うと、つい」

「そうかいそうかい、今の内にしっかり笑っとけ。すぐ笑えなくなるぞぉ」


 それに競うようにギランも魔力を高めていく。

 魔力感知の技術があるなしに関わらず感じさせる暴力的な圧力に、先程まで果敢に戦っていたサファイも顔を強張らせた。


「だが、それより先に……」

「あん?」


 魔力は高めつつ、ルビィは話を切って周囲に目を向ける。


「革命軍の面々が邪魔だな」

「はっ、そっちのやつらは結構リタイアしちまってるからなぁ。あとはあんたを倒せば終わりみたいなもんだぞぉ」

「そのようだ。……革命軍リーダーのキースか。上手く立ち回っているようだ」


 帝国軍は先程のギランの攻撃をきっかけに大きく崩れていた。

 反対に革命軍はほとんど人員を減らすことなく暴れており、帝国軍を圧倒している。

 

 その中心にあるのはキース。

 全体の状況を把握して的確な指示を出し、さらに自分自身も状況に合わせた動きをする事で、帝国軍を圧倒しつつ革命軍の被害を最小限に抑えているのだ。


「頭のキレるやつだな」

「だろぉ?俺みたいなバカとは違ってリーダーってのを上手くやってくれてるよ」


 こんな状況なのに孫の自慢でもするように嬉しそうにふんぞり返るギラン。

 ルビィは高まった魔力を溢れさせつつ言う。


「そのようだ。だが、戦闘能力としてはどうかな?」

 

 ルビィは高めた魔力をそのまま魔法陣を構築していく。


「あぁん?」

「ふっ、彼が倒れれば少しは帝国軍も盛り返すと思うんだ」

「はぁ?まぁそうかも知んねぇな」

「だろう?だからまずは…」


 構築された魔法陣に魔力を流した。

 その瞬間、顔を灼くような熱気を放ち、ギランも思わず顔をしかめる。


「彼から消す!」


 放たれたのは『炎砲』だ。

 巨大な炎が光線のように真っ直ぐにキースに向かう。

 

 完全な不意打ちのそれは、革命軍や帝国軍を諸共巻き込みつつ突き進んでいった。


「おわっ、てめぇなんて事を!」

「ふっ、ふふっ、はははっ!良い表情じゃないかギラン!でも卑怯なんて言わないよね?これは戦いなんだから!」


 ルビィは目をむくギランに高らかに言い放った。

 その笑顔は彼女の整った顔を歪に歪めており、それを見た味方の帝国軍でさえも息を呑む。


「いや卑怯とは言わねぇけどよぉ!そうじゃなくてだなぁ…ったく、面倒なタイプの姉ちゃんだなおい」


 ギランは頭をボリボリと掻きつつ吐き捨てるように言う。

 そして、続けて言い放った。


「仕方ねぇな。おーい!向こうはしばらく置いといても保つだろぉ?!2人で一気に叩くから手ぇ貸してくれ!」

「ん?何を言ってるんだい?」

「了解です」

「っ?!っがっ!」


 首を傾げていたルビィの背後からいきなり聞こえてきた声に、慌てて振り返ろうとする。

 だが振り向くのに合わせたような拳がルビィの頬を捉えて吹き飛ばした。


「なっ?!ば、バカな!なんで…?!」

「よーし、サクっと終わらせるぜぇ」

「ですね。味方もろとも撃つなんて非道な真似をするやつですし……早めに排除しましょう」


 尻餅をついて狼狽するルビィを見下すように、炎に呑まれたはずのキースが立っていた。


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