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ロイドのスキル

 スキルとは。

 ごく稀に生まれ持ち、中には通常ではあり得ない程の恩恵を授けてくれるものもあるが。だが、様々なスキルが存在し、なかには持ち主に必ずしも良い恩恵を与えるものばかりではない。

過去には呪いのような恩恵をもたらすスキルを発現し、国を脅かした存在にまでなる者もいたという。


 そしてルーガスはロイドにスキルによって魔法適性に異常が発生しているのではないかと考えたのだ。


「……なるほどね。まぁそう言うことなら何が何でも起動させてやる」


ロイドは自分の為に国宝まで借りてきてくれた父に感謝の言葉を告げようとして、辞めた。起動させる事が感謝を伝えるに相応しいと考えたからだ。


 気合いを入れ直して鑑定石に向き合うロイド。そこには普段飄々としており力の抜けた表情はなく、真剣な表情を浮かべている。


「すー……はぁー……よし!」


 鋭い目つきで右手を鑑定石にかざし、体内の魔力に意識を向けて高め、それを右手に集める。そして、一気にそれを鑑定石に流し込む!


「っうぇえ?!」


 直後、なんとも腑抜けた声がロイドから漏れ出した。垣間見せた真剣な表情はらどこへやら、狼狽を隠しきれない様子だ。

フィンク、エミリーも声もなく目を丸くしている。


「すげぇあっさり出てきたんすけど…壊れちゃったとかないよね…?」


 そう、魔力を叩き込んだ瞬間、これまでのようにゆっくりと文字が浮かび上がる過程すら飛び越えて一気に文字が浮かび上がったのだ。


「あ、あわわわわ…」

「ふぅ…」

「ロイド……今まで楽しかったよ…」


 これ、国宝だよね?壊れたらやばいよね?弁償?…無理だろやばいどーしよ!と慌てふためくロイド。

 額を右手で押さえて天を仰ぐように諦めの感情を体現するエミリー。

 ロイドに向ける微笑みがまるで死期間近の老人のそれであるフィンク。


 そんな兄弟達を脇目に、ルーガスとシルビアは息を呑んで固まっていた。

 その目線はロイドではなく鑑定石の文字に向けられている。


「あなた、これは…」

「うむ、色々と想像以上の結果だな…しかしこれでロイドの魔法が使えない理由が分かったな」


え?とフィンクやエミリーとは違い冷たい汗をかきまくるロイドはルーガス達に目を向ける。そして、つられるように鑑定石に目を向けた。

フィンク達も我に帰って鑑定石を覗き込む。


==========

魔力量 3750/4500

魔法適性 火0 風0 水0 土0 身0

スキル 魔術適性

==========


それを見て固まる兄弟達。数秒の後、


「は、はぁぁああっ??!」


エミリーの特大の叫び声がウィンディア家に響き渡ったのであった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 その後、エミリーの声で昼寝していたローゼが起きて泣き喚き、それをシルビアとエミリーが必死に宥め、それでも余程驚いたのか泣き止まないローゼに女性陣2人が困り果てたり、エミリーが何を思ったかルーガスとフィンクに泣き止まさせようとローゼを手渡すがやはりどうにも出来ず普段見せない困惑を露わにしつつも頑張ってあやしたり、自分の鑑定結果を飲み込め切れず呆然とするロイドが放置されたり、ルーガスとフィンクがロイドを巻き込もうとしてローゼをロイドに押し付けたり、それを冷ややかな目線で女性陣が見たり、ロイドの腕の中に収まった瞬間にローゼが泣きやんだりした。


「ほんと…なんでロイドってそんなにローゼに好かれちゃってるの?」

「ロイド…今度ゆっくり話をしようじゃないか」


暴れたローゼにやられたのか髪や衣服に乱れがあるエミリーと、シスコンの目をしたフィンクの目線がロイドに刺さる。


「いや待て待て、それより俺の結果について何かないのかお前ら」

「そうだな。とは言ってもシンプルな内容ではあるが」


 ローゼによる嵐で忘れ去られた自分の結果だが、ロイド1人では飲み込めないので手伝って欲しかった。

 そこに、ルーガスがいつもの落ち着いた雰囲気を言葉に乗せて返してきた。


 尊敬出来る父の声に少し冷静になってルーガスを見る。そこには普段通り冷静な表情を浮かべるルーガスがーー冷や汗をかいていた。

 そのルーガスの奥には冷たい視線を送り続けるシルビアが。


「あなた?ローゼをロイドに押し付けるだなんて…」

「……すまない…」


 大柄なルーガスが小さく見えた。滅多に見れない父の姿だが、そんなに見たい姿ではなかった。


 なんかもう色々疲れてきたロイドは自分1人でこの結果を飲み込もうと鑑定石に目をやる。

 まず、魔力量がおかしい。フィンクの3倍以上ある。意味が分からない。

 次に魔法適性は全て0。そうかそうか、だからかー、と投げやりな気持ちで天を仰ぎたくなる。

ぐっとこらえてスキル。魔術適性?なにそれ?魔法適性0じゃ意味ないやん。と思ったところで、ふと5年前に会った神様を思い出す。


――魔法と魔術は効果は酷似してますが、全く違う技術ですーー


 おぉ、すっかり忘れていた。でも赤ちゃん生活や魔法が当たり前、魔術なんて名前すら聞かない生活をしていた為、忘れてしまうのも無理はない。

 てかあの女神様の名前なんだっけ?と自分でフォロー?するロイド。アリアが知ったら拗ねてしまうだろう。


(そういえば、女神さんも俺の魔力は比較的多いとか言ってたような気もするしな)


 色々思い出してきたロイドは、やっと飲み込めたようだ。そして、それを踏まえて考える。


(魔力は多い。これは良いが、魔法が使えない。代わりといってはなんだが魔術は使える。んでもって魔術は古代の技術。つまり…)


 そう、習得方法がない。


 いきなりどん詰まりのロイドは、改めて天を仰ぐのであった。


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