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118 何しよっかな

 帰宅直後のまさかの宴会騒ぎ。

 ロイドは騒がしい領民の横でレオンやクレアを簡単に家族に紹介。

 適当に部屋を用意して、疲れ切った体を引きずるようにして自室へと戻ってベッドへと身を預けた。

 

 そして翌朝。

 久しぶりに自分のベッドで寝たからかそれとも疲れからか、いつもより遅い時間に目が覚めたロイド。


 眠気が残る頭でぼんやりと目だけを開けて天井を眺める。

 久しぶりながらも馴染んだ布団の温かさについ二度寝を検討してしまう。


「んん…」


 でも帰ったら行かなくてはならない場所がいくつかあった事を思い出す。

 確か最初に行かなくてはならない場所が数カ所あったはずだ。無理を言うやつらめ。


 そこは夜遅くの帰宅という事を言い訳にしようとは思うが、しかし翌日になっても行かなければ怒られるのは目に見えている。

 仕方ない、起きなくては。だがしかしこの布団の温かさたるや。くそ、手強い。


「んぅ…」


 あーもういいや、やっぱ寝よ、とロイドは誘惑に負けて目を閉じて寝返りをうつ。

 すると、何やら心地よくもくすぐったい物が顔に当たった。


「ん?」


 さすがに気になって重たいまぶたを上げるロイド。

 すると目の前にはよく見知った顔が。


「……姉さん?」


 エミリーである。

 1年前よりも伸ばした黒髪をベッドに広げるように預け、ちなみにロイドの顔に当たっていたのとそれである。

 身内ながらも綺麗と思う寝顔に、数秒ほど眺めてしまうロイド。


 そう言えば寝言みたいなのがさっきからしてたな、とぼんやりした頭で思い出す。

 むしろこの布団の温かさも彼女の体温あってのものかと気付く。


 まぁいいや、と再び仰向けになって目を閉じるロイド。

 ロイドの中でもトップ3に入ろうかという至福の時――二度寝。その誘惑にロイドは身を預けようとして、


「先輩っ、おはようございます!」


 幸福の時間を侵す元後輩が乱入してきた。


「って誰ですかこの人っ?!」


 うるさい。そう思いつつも昔から元気を体現したような彼女だ、仕方ないのだろう。

 だがやはり寝起き1発目にはさすがにしんどく、対抗するかのように目を閉じたままでいるロイド。


「ん…あら、おはようクレア…早起きなのね」

「ってエミリーさんですか、そんなに早くもないですけど、おはようございます。……ってなんで一緒に寝てるんですか?!うらやま……じゃなくて、せこいですよ!」


 あまり言い直した意味のないクレアの言葉。

 だが姉弟ともに寝起きで回らない頭ではツッコミはおろかほとんど聞き流してしまう。


「ん…?久しぶりの弟が、寂しくないか心配で一緒に寝てあげたの」

「むぅ…でも血は繋がってないじゃないですか…」


 眠そうに返すエミリーにクレアは聞こえないくらいの小声で呟く。

 クレアにはロイドが転生により身寄りがおらず、ウィンディア家にて育ててもらった事は話していた。


 それを知っているがゆえにむくれるクレアだが、当人達は気にもしていないようで、密着するような距離で寝たまま起き上がろうともしない。


「あーもうっ!とにかく起きて下さい!ご飯出来てますよ!」

「んお…?」

「さむ…」


 痺れを切らしたクレアは布団を引っ剥がすと、2人はのそのそと起き上がる。

 あくびなんかもかましつつ体を伸ばす2人は、打ち合わせでもしたのかと言いたくなるくらい動きがリンクしていた。


「もうそんな時間か…よし、朝飯食うか」

「そうね。あんた今日は忙しいんじゃない?起こしてくれたクレアに感謝しなさいよ?」

「だなー。ありがとなクレア」

「えへへ、いいですよぅ」


 寝ぼけた頭のロイドはその目に優しく光を反射する綺麗な銀髪を見て特に考えず撫でる。

 するとさっきまでの膨らませた頬を緩ませて朱に染めるクレア。ちょろい。


 そんなこんなで3人でリビングへと向かうと、そこにはルーガス、シルビア、フィンク、レオン、ローゼが居た。ちなみにローゼは食べ終わって眠くなったのかソファに寝ている。

 やっと回ってきた頭で、一番寝坊したの俺かと思いつつ席につく。


 おはよう、とすでに食事を始めている家族達に挨拶をしつつ置かれていた朝食に手を伸ばす。

 最近では皇帝と同じ食事という豪華な料理を食べていたにも関わらず、それでもやはり美味しいと思うシルビアの料理に舌鼓を打つ。


「ところでロイド、今日はどうするんだい?」


 ロイドが完食したのを見計らって話しかけるフィンク。

 ロイドもそれは食事をしつつ考えていた。


「どーしよーかな。先生に道場、ベルさんに本屋、ラピスにギルドに来るよう約束してたんだよ。この3つは行かないといけんとは思ってるけど」

「ふーん、とりあえずラルフさんのとこに行った方がいいんじゃないかい?」

「あー、やっぱそうかな?」

「うん、あれだけお世話になった先生だしね」


 だよなぁ、とロイドは返しつつ今日の予定を考える。

 そうなれば地理的に道場から本屋が近い。だったら道場、本屋、ギルドの準備に回ろうと決めた。


「おっけ。そうするわ」

「そうかい。それで、予定が終わってからでいいから…久しぶりに遊びがてら手合わせでもしないかい?」


 さりげなく告げられた用件、それを話す声音にん?と思わずロイドはフィンクを見る。

 

「……」


 そこにはいつもの柔らかな笑顔。だが、その眼に浮かぶ好奇心のようなものがありありと伝わってくる。

 久しぶりで忘れかけていたが、兄フィンクは結構戦闘狂なとこがあった事を思い出す。


「ん、いいよ」


 だが、血は繋がらずとも兄弟なのか、自分も試してみたいと思っていた。


 1年前まで”恥さらし”として過ごしてきた頃、一番身近に感じていた「強者」である兄。

 そのフィンクにどこまで近付けたのか、それを知りたくないかと言われればやはり首を横に降るというものだ。


「ふふ、そうこなくちゃね。それまで僕は父上の手伝いをしてるから、時間が空いたら声をかけてよ」

「りょーかい」


 笑い合う兄弟。

 それを見てエミリーは呆れたような表情だ。


「ロイドあんたね、帰って早々ボロボロになりたいわけ?」

「そーじゃないけど…まぁ久しぶりだし、なんとなくね。最悪明日ルナさんとこ行くわ」

「そうね。もう道場行くついでに予約しときなさいよ」

「なるほど、そーしよっかな」


 そう言ってへらへらと笑うロイドに、エミリーはより呆れたように溜息をついた。


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