116 我が家
ロイドを借りるのは1年。
その約束を守る為にレオンは帝国に居る間に早く出るようロイドを急かしていた。
だが、ロイドとしても区切りの良い所までは見届けたく、結果として帝国に居る間にも訓練をしつつ帝城の完成までは腰を据える事にしたのだ。
そしてギリギリの日程で帝国が完成。
それを見届けて大急ぎで帝国を後にしたのである。
その帝国での訓練にてロイドは風の魔術の精度を高め、空を飛ぶ事も出来るようになっていた。
が、いまだ速度という面では物足りず、結果遅いと痺れを切らしたレオンに担がれて帰国する事になる。
そして気分が悪くなる程アホみたいな速度で流れる景色にロイドは酔い、クレアは楽しそうにする事半日弱。
「うわ、なんか久しぶりだわ」
「お〜!ここが先輩の地元なんですね!」
「地元て。まぁそうだけど」
「いいから早く行け。今日で1年経つ。顔を見せて来い」
「はいはい。つかじじいも来いよ」
「そうですよ!行きましょうレオンさん!」
エイルリア王国ウィンディア領にロイドは帰ってきていた。
何故かあまりウィンディアに近寄りたがらないレオンをロイドとクレアが引っ張っていき、正門に向かう。
流通が少ない事もあり基本的に門は閉まっているウィンディア領。
今日も例に漏れず閉まっており、脇に控えるーーというより寝ている門番に声をかける。
「すみません、開けてもらっていいすか?」
「ん?あ、おお、すまん、すぐに開けてーー」
ロイドに声を掛けられて目を覚ました門番だが、ロイドの顔を見ると言葉を切って凝視してきた。
「あぁっ!ロイドくんか!見違えたぞ!」
「あ、お久しぶりです」
ほとんど外に出なかったロイドは誰か知らなかったものの、前世で鍛えられた社交辞令ですぐに頭を下げる。
「ってぇ事はこの人が『死神』さんかぁ…おぉ、たしかにおっかねえ気配だな」
「『死神』?」
「あー、『国斬り』の王国版みたいな感じ」
ごくりと息を呑む門番の横で首を傾げるラピスにロイドが雑な説明をする。
「とりあえず父さん達に挨拶に行きたいんで、入っていいですか?」
「おっとすまん、すぐ開けるから待ってな」
そう言って門の脇へ向かう門番は、顔だけこちらに向ける。
「しかしロイドくんが彼女を連れてくるたぁな。こりゃ荒れるぞー」
「違いますから、さっさと開けてください」
ニヤニヤとからかう門番にロイドは溜息混じりに返した。
横に立つクレアが顔を赤くし俯くが、それをロイドに見られる前に門が開いていき、そちらに目を向ける。
「さて、ウィンディア領におかえり!」
その門の間から見える久しぶりだが変わらぬ景色に、ロイドはつい見入ってしまっていた。
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それからロイドは久しぶりのウィンディア領へと足を踏み入れ、まっすぐに自宅へと向かった。
夜中に近いという事もあってか人はほとんどおらず、捕まる事もなくスムーズに帰宅したロイド。
そして、懐かしの我が家へと足を踏み入れる。
「ん?あれ?」
「おかえりなさい」
「やぁ、久しぶり。元気にしてたかい?」
「ギリギリじゃない、遅れてたらぶん殴ってやろうと思ったわ」
そこには来るのがわかっていたかのように庭に集まっていた家族が居た。
シルビア、フィンク、エミリーが驚いて固まるロイドに話しかける。
その輪からとてとてと飛び出してロイドにしがみつく女の子。
「おかえりなさい、お兄ちゃん」
「……」
誰?と思うこと数秒。
しかし自分を兄と言う存在はこの世に1人しかいない。
だが、記憶との差に驚きが勝ち、やはり声が出ないロイド。驚きを上乗せされた気分である。
「ふむ、挨拶くらいしてやらんか。……おかえり、ロイド」
そして、暖かい声音で叱る父ルーガス。
その言葉に、ロイドは一気に胸に広がる感覚に理由も分からず涙が出そうになる。
「っ…ただいま!」
「「おかえりなさい」」
それを隠すように自分でも驚くほど大声になった返事。
それを家族は笑顔で迎えた。




