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115 またね

 どうしよう、すごく言い出し辛い。


 涙と笑顔を浮かべる国民達を帝城最上階から眺めながら、新皇帝であるブロズは言葉に詰まって固まっていた。


 足元にある庭園にあたる場所にはお披露目と挨拶を兼ねてと帝城で働いてくれるメンツと革命軍のメンバーがいる。

 

 その革命軍達と民達は涙とそれに負けないような笑顔を溢れさせ、喜びを噛みしめ合っている。

 

 実に感慨深い光景だ。

 軟禁生活の合間に見ていた国民達とはかけ離れた表情は、ブロズとしてもこの上ない喜びである。


 だがしかしだ。この後の話を切り出すにあたっては実に困る雰囲気でもある。


 やっぱり後日発表にして今日は解散としよう。

 そう思って後ろにいる3人に目線をやる。


 そこには立つのは嬉しそうな表情を浮かべるロイド、涙を流して嗚咽をこぼすクレア、そしていつもの無表情に見えるもどこか喜んでいるようにも見えるレオンだった。


「あの、やっぱり今度にしないか?こう、聞こえるか聞こえないかの声て解散を告げて退散したいなぁと」


 その中でも一際親しくなった少年ロイドにブロズは問う。その声は先程までの威厳やらは欠片もなかった。


「まぁでも挨拶くらいはしときたいしなー」

「いやだから、もう少し滞在してもいいんじゃないかとーー」


 仲良くなるにつれて分かった事だが、この少年は飄々とした話し方の割に結構頑固なところがある。

 とは言え柔軟な考えはむしろ目を引く程なのだが、こと一度口にした言葉は基本実行しようとするのだ。


 しかしここでこの空気に割って入るのはすごく躊躇われる。

 そう思って食い下がろうとするブロズだが、しかしロイドの行動は早かった。


「宴もたけなわではございますが、俺達はお先におうちに帰りますね。また来ますんでそれまでお元気で!ではまたいつか!」


 いつの間にかマイクーー拡声魔法具を奪い取り、ロイドは短く挨拶すると、風の魔術を発動する。


 そして最上階から飛び出し、そのまま重力に逆らうように宙へと飛び立っていく。


「「「えええぇぇぇええ!!?」」」


 大合唱のようなハモリを見せる帝国民。この団結力さえあれば帝国も安泰だな、とロイドは満足そうに鼻の下なんかこすって見せる。


「おまっ、ウソぉ?!」


 新皇帝は完全に素が出る。


「がはははっ!ありがとなぁロイドくん!」


 ギランはゲラゲラと笑いながら送り出した。思わずこっちもつられ笑いしたので、笑顔で手を振っておく。


「ちょっと待てぇ!まだ色々お礼がしたいんだけど?!おーいロイドくんん?!」


 戦いが終わってからブロズに負けないほどの仕事量で忙殺されていたキースは本気で慌てたように叫んでいる。なんかごめんと思いつつとりあえず手を振っておく。


「また遊びに来てくださいね!」


 シエルは可笑しそうに笑いながら手を振ってくれていた。手を振っておく。


「待ってくれぇ!うちの娘とのお見合いは?!」

「うちだってそうだぞ!どこに行くんだ?!」

「その前にうちの私兵のスカウトの返事ももらっとらんぞ!」


 裏でロイドに届かないようブロズに止められていたロイドへのアプローチ、それを知らない貴族達やらが必死に叫ぶ。

 ちょっと貴族ぽく優雅に手を振っておく。


「『国崩し』様!またぜひおいでなすって下さい!」

「お供物も毎日捧げてお待ちしておりますぅ!」

「いや自分で食えやーい」


 どこぞの隔離された村人のようなセリフにロイドは反射的に返していた。


「ロイド!君には感謝してもしきれない!また会おう!」

「おーよ!立派なこーてーさまになれよ!」

「次会うまでには発音を正しておけ!」


 なんか立て直したブロズがかっこいい感じに叫ぶ。ので、つい軽く返してしまった。

 結局いつものツッコミで締めてくれるブロズに、ロイドは可笑しくなって笑ってしまう。


「ロイドぉ!次会った時はお前に負けねぇくらい強くなってるからな!」

「ん?おー!俺だって負けねーからなー!」


 ロイドに向かって拳を突き出して叫ぶグランにロイドも同じく拳を突き出した。

 交錯する視線に、ロイドは思えば久しく居なかった友という存在を彼に感じている事に気付く。


「グラン!次会うまでに『壁抜け』って呼ばれるといいな!」

「だぁー!それはやっぱナシだ!てか大声で叫ぶなバカヤロォ!」

「はっはっは!」


 けらけらと笑うロイドに、後ろから相変わらず無愛想な声が聞こえる。


「挨拶が済んだら帰るぞ」

「今帰ってんだろーがじじい」

「あ?のんびりしてるから別れを惜しんでるかと思えば…単にトロいだけか」

「んだとこら」


 呆れたように肩をすくめているレオンにロイドは青筋を浮かべる。

 そんなロイドに構わずレオンはのんびりした動きでクレアを担ぎ上げて言う。


「クレア。今からあのノロマより早く帰るから、しっかり掴まってろ」

「はーい」


 誰がノロマだ、と言おうとする前に、レオンは地面を蹴って飛び出した。

 まるで弾丸のように凄まじい速度でロイドの真横を通過してそのまま飛び去るレオンに、ロイドは出かけていた言葉を失う。


「…ってちょっと待てやじじいー!!」


 恐らく届かないであろう悪態を吐きつつ、ロイドは必死に魔力を練り上げて加速する。


 そんな置いていかれた『国崩し』を帝国の面々は笑って見送っていた。


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