112 革命軍の想い
そんな2人を見ながら、レオンはキースに話しかける。
「いいのか?」
色々な意味にとれる問いに、しかしキースは頷いた。
「えぇ、大丈夫です」
「…そうか」
含みのない肯定。それに、レオンもそれだけ返した。
そんな会話を背にしていたロイドは、握った手を離して振り返り、戻ろうとして、
「先輩っ?!」
ぶっ倒れた。
それはもう綺麗に顔面から地面に突っ込み、クレアが慌てたように駆け寄る。
「まぁそうなるだろうなぁ」
「ったく、しゃしゃり出て今度は倒れるとはな。面倒なガキだ。おいそこの、こいつを寝かしときたいんだが」
こともなさげに言うギランに、面倒臭そうにロイドをつまみあげるレオン。
レオンはニューマンに向けて言うと、恭しく頭を下げる。
「はい、部屋をご用意しております。どうぞこちらへ」
歩き出すニューマンに追随するレオン。それに心配そうについていくクレア。
彼らを見送り、扉が閉まる。
すると自然と革命軍達の視線は再びブロズへと集まった。
その表情はやはり険しい。
後ろに立つ革命軍の面々からは殺意に近い気配さえ漂っている。
それを制するかのように、あるいは代表するかのようにキースが口を開いた。
「……第二王子」
「ブロズで結構ですよ」
「ならブロズ。ここにいる、いやここにいないやつらも含めて、俺達は皇族を殺す事を目標に生きてきた」
「……えぇ、存じております」
目を伏せるブロズに、キースは険しい表情そのままに言う。
「皆んなを虐げる皇族を殺して皆んなが笑って暮らせるようにと戦い、死んでいった仲間もたくさんいる」
「……はい」
ついには俯くブロズに、キースは言葉を続ける。
「……だが、俺達には統治なんて出来ない。皇族を殺す、それが結果的に民の為になるかは分からなかった」
そう、国の統治とは決して簡単なものではない。
ましてや知識も経験もない彼らには想像もつかない分野であった。
もちろんそれを壊す事を目標にしていたし、それに後悔も迷いもない。
だが、その後に国をどうまとめ上げるかは正直見通しが立っていなかったのだ。
「あんたが仲間や皆んなの為になる統治をするっていうなら、それが皆んなの為にもなる」
「そうだなぁ、最初はエイルリアに白旗ふって統治してもらうのも考えていたが、確実でもないしなぁ」
キース、ギランの言葉。その2人をブロズは力強く見つめる。
「私が出来る限りの力をもってあたります」
「……頼む」
頭を下げるブロズ。それに、キースも頭を下げて言う。
「リーダー!」
頭を下げたキースに革命軍達はどよめく。だが、それでも頭を上げないキース。
「俺からも頼む。皆んなの助けになってくれ」
「私からもお願いします」
さらにはギラン、シエルまで頭を下げる。
革命軍達のどよめきはより一層なものになるが、しかしそれも長くなかった。
「お、俺からも頼む!みんな毎日空腹なんだ!」
「俺もだ!家族がいるんだ!もうここんところくに食えてねえ!」
「友達が倒れてるんだ!俺からも頼む!」
口々に想いを言葉にして頭を下げる革命軍達。
その言葉の内容や込められた感情に、ブロズは悲痛に顔を歪める。
そして気づけば革命軍全員が頭を下げていた。
そんな中、顔を起こしたキースが絞り出すように言う。
「……ブロズ、あんたに任せる」
懇願も縋る気持ちもそこにはない。むしろ、押し殺した気持ちもあるだろう。
しかし、それ以上に追い求める物の為に、一縷の希望を諦めずにいられない、そんな渇望にも似た気持ちが伝わる。
ブロズはそれを受けて歯を食いしばる。一人一人、その彼らから出たひとつひとつの言葉を噛み締めるように。
堪える事さえ許さないと瞳からは涙が溢れるが、しかし目を逸らす事さえ許される事ではないとキースと彼らの目線を真っ直ぐに受け止める。
「……命に変えても、この国を変えます…!」
ブロズは膝をつき、そして手をついて頭を地面に押しつけ、絞り出したように言葉を紡ぐ。
強い決意を込めたその言葉に、キース達は再び頭を下げた。




